第17話
「シキ、後ろから何か来ているか?」
「ううん、今の所何も来てはいないよ」
「ふぅ…ひとまずは安心だな…いったん休憩しよう」
金髪の少年は掴んでいたレティの手を離した。
「君、怪我は無いかい?」
「え? えっと、その…」
「ん? 膝から血が出てるじゃないか、ティア、頼む」
「任せて下さい」
紫髪の少女がレティに近づきレティの膝に手のひらをかざした。
「《ヒール》」
紫髪の少女の言葉と共に光がレティの膝の傷を包み込んだ。
数分経つと、レティの膝は綺麗に治っていた。
「はい、これでもう大丈夫です」
「あ、ありがとうございます…えっと、貴方達は…?」
「私はティア、魔法使いです」
紫髪の少女、ティアが名乗ると、他の3人も名乗り始めた。
「私はリリィ、弓矢使いよ」
「…シキ、忍者」
「俺はラック、ベルパニア王国の勇者だ!」
「…勇者?」
「…え? ひょっとして君、勇者を知らないの?」
「え? あの、私何か変な事を言いました?」
「いや、そう言うわけじゃ無いんだけど…勇者を知らない人に会ったのは初めてだから、ちょっと驚いたんだ」
「そんなに有名なんですか?」
レティの言葉にリリィとティアが答えた。
「ええ、今まで色々な場所を旅してきたけど、勇者を知らない人なんて居なかったわよ」
「勇者は世界中の人が知っている常識中の常識ですもんね…」
「そうなんですか…」
「…ところで、君の名前は?」
「私はレティと言います」
「レティさん、ここは魔物が数多く生息していて、人も寄り付かない危険な森だぞ? 君はこんな所で何をしていたんだ?」
「えっとですね、私は…」
「ラック、ちょっと待って」
レティがラックに話そうとした時、シキが間に入って話しを遮った。
「どうしたんだ? シキ」
「少し考えてみたんだけど、この子、怪しいよ」
「怪しい?」
「こんな危険な森に一人で来るなんて普通あり得ない…それにさっきの蟲人達、この子の事レティ様って呼んでた」
「そう言えばそうですね…」
「シキ、つまり貴女はレティさんが魔物の手先だって言いたいの?」
「…その可能性はある、ひょっとしたら魔族かも…」
「え? え?」
シキからの疑いの言葉にレティは戸惑っていると。
「そうか!」
ラックが突然大声を上げた。
「ど、どうしたのよラック、急に大声を上げて」
「リリィ、俺分かったんだ、レティさんが何者か…レティさん、貴女は…」
ラックはレティを指差して自信満々に言い放った。
「囚われのお姫様だな!!」
「…お姫、様…?」
ラックの突然の言葉にキョトンとするレティ。
「「「………」」」
そしてリリィ達は微妙な顔でラックを見ていた。
「そう、きっとレティさんは魔族に攫われたとある国のお姫様で、何とか魔族から逃げ出してきたが、追手が来て絶体絶命…そこに俺達がやって来たと言う事だよ!」
自身満々に喋っているラックにリリィが話しかけた。
「…あの、ラック? それ本気で言ってるの?」
「ああ! さっきの魔物達がレティさんを様付けしていたのも、きっと彼女がお姫様だからだ! そうに違いない!」
「はぁ…またラックが一人で突っ走り始めた…」
「ラックさん、前もこんな感じになってましたよね…」
「あの時は本当に面倒だった…」
「…えっと…」
何だかよく分からない感じの空気になっているそんな時、後ろの茂みがガサガサと動いた。
「っ!」
「何!?」
「レティさん、下がってくれ!」
ラック達は瞬時に武器を構えて、茂みを警戒していると、茂みから蟻人達が出てきた。
「見つけたぞ! レティ様を攫った悪党どもめ!」
「レティ様を返してもらうぞ!」
「レティ様、今お助けいたしますね!」
「悪党はどっちだ! レティさんはお前達には絶対に渡さないぞ! レティさん、貴女は隠れていてくれ」
「ま、待ってください皆さん、蟻人さん達は悪い人達じゃ…」
両者が戦いを始めようとしたその時。
「グルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」
上空から雄叫びが聞こえ、全員が上を向いた。
「り、竜!?」
「どうして竜がこんなところに…」
「しかもあれは黒竜…最上位の竜種…!」
「クロちゃん…」
クロが周りの木々を倒しながら、地面へと降りてきた。
「グルルルルルルルルルルルル…」
ラック達を睨みつけて威嚇するクロ。
そしてクロの背中の上に、漆黒のオーラを身に纏ったロストの姿が見えた。
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