第16話
グレン達が帰ってから一週間が経過した。
ロストとレティは庭で日向ぼっこをして、のんびりと過ごしていた。
「今日も良い天気ですね、兄様」
「うむ、このような天気の時は日向ぼっこが一番だな…ずずっ…うむ、今日も茶が美味い」
「兄様、今日はお煎餅を作ってみました」
「これは美味そうだな、どれ…」
ロストはレティのお手製煎餅を食べる。
「…美味い! やはりレティの作る菓子は最高だな」
「ありがとうございます、兄様」
「こんな良い天気の中、魔茶を飲みながらレティが作ってくれた菓子を食べられる…俺は今とても幸せだ」
ロストがレティの頭に手を置き、優しく撫でた。
「私も、兄様と一緒に居られて…幸せです」
ロストに頭を撫でられたレティは、頬を赤らめ、幸せそうに微笑んだ。
その後、ロストとレティはお昼時までゆっくりとくつろいだ。
―お昼過ぎ、レティは蟻人達と一緒に森に木の実採りに来ていた。
「お、こんな所に魔木苺がたくさんあるぞ」
「ここにもあるぞ」
「こっちにもあるよー」
「どうやらこの場所は当たりだったようですね」
「とっても美味しそう…この魔木苺でジャムを作ったら兄様、喜んでくれるかな…ふふっ」
レティは喜ぶロストの姿を考えながら魔木苺を摘んでいた。
「これだけ摘めば十分ですね」
「レティ様、そろそろ家に戻りましょうか」
「はい、分かりました…きゃっ!」
レティは小石につまづいて転んでしまい、摘んだ魔木苺が籠から出て地面に散乱してしまった。
「レティ様、大丈夫ですか!?」
「怪我は無いー!?」
「だ、大丈夫です、ちょっと膝を擦りむいただけですから…」
「そこから菌が入ってしまうかもしれません、すぐに手当てしないと…」
「待てっ!!」
蟻人達がレティを起こそうと近づこうとしたその時、前の茂みから声が聞こえた。
レティと蟻人達が前の茂みを見ると、茂みから金髪の少年が飛び出してきた!
「うおおおおおおっ!」
金髪の少年が蟻人達を剣で攻撃してきた!
蟻人達は後ろに下がり、剣を回避した。
「君、大丈夫か?」
「え? あ、あの…」
レティは突然の事に戸惑っていると、茂みからさらに3人の少女が現れた。
「ちょっとラック、一人で突っ走らないでよ!」
「だけどリリィ、人が魔物に襲われているのを見過ごすわけにはいかないだろ!」
「で、でも、あの魔物達強そうですよ…」
「…あれは多分蟲人の一種、相当手強い魔物だよ…どうするラック?」
「ここは逃げるぞ! さぁこっちだ!」
「え? え? ちょっと待ってくださ…きゃっ!?」
戸惑うレティの手を引き、金髪の少年達は茂みの中に走る。
「レティ様!? お前達待てっ!」
「レティ様を攫おうとするとは!」
「とっちめてやるー!」
蟻人達が金髪の少年達を追いかけようとすると、黒髪の少女が懐から小さな玉を取り出し、地面に投げつけた。
すると煙が発生し、蟻人達の視界を遮った。
「ぬぅっ!?」
「前が見えないー!」
数十秒後、煙が完全に消えると、金髪の少年達とレティの姿が居なくなっていた。
「大変だ、レティ様が人間に攫われてしまった…」
「というか、何で人間がこの森にいるんだ? レティ様の事もあるし…ひょっとしてこの森に人間達が住み着き始めたのか?」
「そんな事を言っている場合じゃないぞ! レティ様を探さなければ…」
「じゃあ私はロスト様にこの事を伝えて来るー!」
「レティ様、無事でいてください…」
蟻人達はバラバラに分かれて、レティを探し始めた。
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