第11話

ロスト達は試練を行うためにロストの部屋に来ていた。


「良いか小娘、お前にはこれから3つの試練を与える、3つ全てをクリアできたならば、仕方は無いがお前の事を兄上の妹と認めてやろう…しかし1つでも失敗したらその時は分かっているな?」


「分かってます! 絶対に全部クリアしてみせます!」


「…ロスト様、何ですかこれ?」


「分からん」


「そうですか…というかゼノム様はいつの間にここに来たんですか?」


「木の実採りから戻ってきたら庭にシロがいて驚いたよなー」


「ついさっき突然来たのだが、何だかよく分からない内にこのような展開になってしまってな」


ロストと蟻人達が話している間に、ゼノムは試練の説明を続ける。


「まず第一の試練は掃除だ、兄上の妹である以上、兄上の部屋を何時でも綺麗にしておかなければならん、実際私も幼い頃は兄上の部屋を良く片付けていたからな!」


「ああー…そう言えばゼノム様昔は私達がロスト様の部屋を掃除しようとしたら自分がやると言って毎日のようにロスト様の部屋を隅々まで綺麗にしてたな…」


「そーそー、奥様がそれを知ってからゼノム様に掃除禁止令を出してからはしなくなったけどねー」


「ちょっと待て、俺はそんな話聞いたことが無いが?」


「魔王城では結構有名な話ですよー?」


「そうなのか?」


ロストが不思議そうに首を傾げる。


「…ロスト様って相変わらず妙な所で抜けてるよねー…」


「ああ…何故かロスト様だけはゼノム様がブラコンだと知らないしな…」


「お前達何をひそひそと話しているんだ? 少し気になるのだが…」


「いえいえ、たわいない話なので気にしないで下さい」


「? そうか?」


「それでは今から1時間で兄上の部屋を綺麗に掃除してみろ、勿論出来るのであろうな?」


「勿論です! やってやります!」


「ふんっ、では始めろ、兄上、私達はその間リビングに居ましょう」


「ん? 分かった」


ロスト達はゼノムに連れられてリビングに向かった。


「よし、頑張るぞっ!」


ロスト達が出ていって直ぐにレティは部屋の掃除を開始した。
















1時間後。


「兄上、この魔茶美味しいですね」


「そうだろう? この辺りは良い魔葉が取れる場所があるんだ」


「これは城に持って帰りたいですね」


ロストは久しぶりに再会したゼノムと共にリビングで魔茶を飲みながら世間話をしていた。


「ゼノム、父上と母上は元気にしているか?」


「はい、二人とも相変わらずラブラブですよ」


「そうか、しかしゼノムよ、よく分からないがこんなことをする必要があったのか?」


「勿論です、兄上の妹であればこれぐらい出来なければ、兄上の妹になる資格はないですよ」


「うーむ…資格、か」


「はい…おや、もう一時間経ったようですね」


ゼノムは自分が持つ魔時計を見た。


ちなみに魔時計とは持ち主の魔力によって動く時計で、魔力を持たない者が持っても動かない時計の事である。


「では見に行きましょうか、兄上」


「ああ」


ロスト達はレティの元に向かった。


「さて、どの程度出来ているか…まあきっと半分ぐらいしか終わらせてないでしょうね」


「多分レティ様なら大丈夫だと思いますよ」


「ん? それはどういう意味です?」


「レティ様なら掃除はもう終わらせていると思うので」














ゼノムが部屋に着き扉をを開けると、とても驚いていた。


「これは…」


ロストの部屋はすごく綺麗になっていた。


窓ガラスはピカピカになり、床は汚れ一つ無い、文句の言いようがないほど綺麗に掃除されている。


恐らく自分が掃除してもここまで綺麗には出来ないだろう。


ゼノムはそう思ってしまった。


レティがエッヘンと胸を張ってゼノムに言う。


「どうですか? 全部綺麗でしょう?」


蟻人達がレティに拍手する。


「レティ様、お見事です!」


「流石、私達の掃除テクニックを全部吸収しただけはあるよな」


「うんうん、数週間で私達と同じぐらい掃除が上手くなったもんねー」


「これはもう見事としか言えないよな」


「そ、そんなに褒めないで下さい、恥ずかしいですよ…兄様どうですか?」


「うむ、素晴らしいぞ、俺の部屋をこんなに綺麗にしてくれてありがとうな、レティ」


ロストがレティの頭を撫でる。


「えへへっ…」


「ほらゼノム様、私の言った通りでしたでしょ…っ!?」


蟻人がゼノムの顔を見て驚いた。


なぜなら、ゼノムの顔はまるで般若のようになっていたからだ。


何兄上に褒められ、撫でられていやがる! 羨ま破廉恥なぁぁぁぁぁ!!!


と心の中で叫ぶゼノムであった。

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