第10話


―数日後、お昼過ぎのロストの家。











「うむ、いい天気だ、こんないい天気の時は日光浴に限るな」


「そうですね、兄様」


昼食を終えたロストはレティと共に庭で日光浴をしていた。


「兄様、魔茶です」


「ありがとうな、…うむ! やはりレティの淹れてくれた茶は美味いな」


ロストがレティの頭を撫でた。


「えへへ…」


その後、しばらく日光浴をしていると、レティがロストに話しかけた。


「兄様、兄様のご家族ってどんな人達ですか?」


「ん? 急にどうしたんだレティ?」


「いえ、兄様の事を持っ知りたいなと思って…」


「家族か…俺を含めて4人家族だな」


「4人と言う事は兄様には兄弟か姉妹が?」


「うむ、弟がいるぞ」


「弟様が…どんな方ですか?」


「どんなか…弟は俺よりも頭が良く、そしていつも冷静沈着な奴だ、あいつにはいつも色々な事を教えてもらっていたな」


「凄い人なんですね」


「ああ、俺の自慢の弟だ、そう言えばあいつには黙って出ていってしまったな…ん?」


ロストが空を見上げると、ロストの家の上空に突然巨大な竜が現れた。


突然の事にレティがロストの腕に抱き着く。



「あ、兄様、あれって…」


「シロ? 何でここに?」


巨大な竜、シロが庭に降りてきた。


「クルルルルゥ」


その背中には一人の男が乗っていた。


男はレティを見ると、顔に青筋を立てて叫んだ。


「小娘ぇぇぇぇぇぇぇぇっ! 何兄上に抱き着いてやがるんだぁぁっ!! その手を離しやがれぇぇぇぇぇっ!!!」


突然の事にロストとレティは呆然とする。


「…兄様、ひょっとしてあの方が…」


「ああ、弟だ」


「あの、さっき聞いた話と違う気が…」


「うむ、俺も驚いている」


「ハッ!? いかん兄上に抱き着いている小娘を見てしまったせいで一瞬正気を失っていた…」


正気を取り戻した男は、シロから降りて、ロストの元に歩き、頭を下げた。


「兄上、お久しぶりです、お元気そうで何よりです」


「ああ、久しぶりだなゼノム、お前も元気そうで何よりだ」


「クルルルルゥ♪」


シロがロストの元に近づき、頬擦りをする。


「シロも元気そうで何よりだ」


「グルルゥ?」


音を聞きつけてクロがロスト達の元にやって来た。


「グル! グルルゥ♪」


シロに気付いたクロがシロの元に走る。


「クルルルゥ♪」


シロもクロに近づき、お互いに顔を舐めたり頬擦りをしあう。


「クロちゃん、あの竜とお友達だったんですね」


「ん? いや、クロとシロは双子の兄弟だぞ」


「そうなんですか⁉」


「ああ、クロの方が少しだけ早く生まれたからクロの方が兄と言う事になっている」


「そうだったんですね、シロちゃんはクロちゃんの弟なんですね」


「うむ、そう言えば紹介するのを忘れていたな、ゼノム、こいつはレティ、手紙に書いていた俺の妹にした人間だ」


「初めまして、レティです」


「…ふん、ゼノム・モナークだ」


「ところでゼノム、城の方はどうなっているんだ?」


「はい、兄上が突然魔王をお辞めになった後、少々揉めましたが私とロウズが迅速に纏め上げ、その後私が350代目魔王に就任しました」


「そうか、すまん…俺がその場の勢いで魔王を辞めたせいでお前とロウズに迷惑を掛けてしまって…」


「お気になさらないで下さい、兄上にあのような書類仕事ばかりさせていた愚か者共とここ数年攻め込んでこなかった愚かな人間どものせいです、兄上は何も悪くは御座いません、そもそも兄上はもっと自由な生活の方が似合っています、前に貰った手紙でも本当に楽しく暮らしているのだと感じられました、あとお菓子とても美味しかったです」


「それは良かった、後で蟻人達に直接そう言ってくれ」


「分かりました」


「ところでゼノム、何故お前がここにいるんだ? 城の方は大丈夫なのか?」


「それはご安心下さい、仕事は全部終わらせて来ましたし、城の方は全部ロウズに任せてきたので」


「そうか」


「それよりも兄上、私は聞きたいことがあってここに来ました」


「聞きたい事? 何だ?」


「…兄上、何故兄上は人間の小娘を妹にされたのですか?」


「レティの事か?」


「はい、何故ですか?」


「癒しだ」


「は?」


「レティと一緒に居て、レティの笑顔を見ているだけでとても癒されるんだ、だから俺はレティを妹にして、レティを愛でているんだ」


ロストがレティの頭を撫でる。


「兄様…えへへっ…」


ロストに撫でられたレティが笑顔になった。


「ほら、この笑顔を見ているととても癒されるんだ、だから…ゼノム?」


ロストがゼノムを見ると、ゼノムの身体がわなわなと震えていた。


「い、癒し…癒しが欲しかったから妹にした?」


「ぜ、ゼノム?」


「それなら何で私を側に置かれなかったんですかぁぁぁぁっ!!」


「ゼノム!?」


「兄上、私だって兄上のお側で兄上を癒せます! 兄上にプリンをあーんだってやれます! 兄上のために笑顔にだってなれます! それなのに何故、何故私ではなくその小娘何ですか!?」


「お、落ち着けゼノム、お前が何を言っているのか全然分からないのだが…」


「妹が欲しかったのならばいつでも女にもなるのに!」


「本当にどうしたんだゼノム!?」


「おい小娘っ!」


「は、はいっ!?」


「これからお前に試練を与える」


「えっ、えっ?」


「お前が兄上に相応しいかどうかこの私が見極めてやる! もし兄上に相応しくないと分かったら…お前には兄上の妹を辞めてもらう」


「あ、兄様の妹を辞める!? そんな…」


「ふん、怖気づいたか、やはり人間では兄上の妹など無理のようだな」


ゼノムの言葉を聞き、レティはムッとする。


「何ですかそれ! 分かりました、受けて立ちます! あなたに私が兄様の妹に相応しいって認めさせてあげます!」


「ふんっ、その威勢がいつまで続くか見物だな」


レティとゼノムの間に火花が散る。


「何がどうなっているのかさっぱり分からないのだが…」


「グルルゥ?」


「クルルゥ?」


一人だけこの流れについて行けないロストであった。

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