第8話

とある日のお昼過ぎ。


ロストが森に散歩に行っている時、レティが蟻人達にあることを相談していた。


「え? ロスト様の好きな料理ですか?」


「はい、蟻人さん達は兄様のお世話をしていたって兄様から聞いたんです、だから兄様の好きな料理をしってるかなと思って」


「うーん…好きな食べ物ですか…」


「ロスト様基本何でも食べるんですよね…」


「そうそう、多分好き嫌い無いと思いますよー」


「そ、そうなんですか…」


「でもレティ様、何で急にロスト様の好物を聞いてきたんですか?」


「えっとですね…私、兄様にいつも何かしてもらっているから、そのお礼に兄様の好きな料理を作って喜んでもらおうと思って…」


「ああー…なるほどそう言う事ですか、でしたら、レティ様がロスト様に食べてもらいたいものを作ったらどうですか?」


「私が、兄様に食べてもらいたいもの…ですか?」


「そうです、何かないですか?」


「兄様に食べてもらいたいもの…ありました、プリンです!」


「プリン?」


「はい、兄様に助けられた日に初めて食べたプリン、あれを作って兄様に喜んでもらいたいです!」


「なるほど、分かりました! では我々があのプリンの作り方を教えましょう!」


「蟻人さん達、ありがとうございます! 私頑張ってプリンを作ります!」










蟻人達とレティは厨房に移動した。


「それではレティ様、今からプリンの作り方を教えますね」


「はい、お願いします」


「まず最初にプリンの材料です、コカトリスの卵4個、卵黄4個、魔砂糖100グラム、魔牛乳700グラム、バニラエッセンス少量、そして次にカラメルソースの材料です、魔砂糖100グラム、水大さじ2、お湯大さじ2です、今回はプリン12個分の材料を用意しました」


「これがあのプリンになるんですか? 不思議です…」


「まず卵と卵黄をボウルに入れて、泡立て器で溶きほぐしてください、このとき泡立て無いように気よ付けてください」


「はい」


「次に鍋に魔砂糖と魔牛乳を入れて、火にかけて魔砂糖を溶かします、溶かし終わったら卵の入ったボウルに魔牛乳を少しずつ加えながら混ぜていきます」


「こうですか?」


「その調子です、次にバニラエッセンスを加え、軽く混ぜてこし器でこしてください」


「こし器って…これのことですか?」


「そうです、では次にカラメルソースを作ります、魔砂糖と水を鍋に入れ火にかけます」


「はい」


「茶色くなったらお湯を加え火を止めて、鍋をゆすって良くなじませます」


「これでいいですか?」


「はい、次にバターを薄く塗ったプリンの型にカラメルソースを流し込み、プリン液を型に流し込みます、流し込んだ時、表面に泡が出来た時はスプーンで泡を取って下さい」


「分かりました」


「バットにお湯をはり、温度160℃のオーブンで20分ほど蒸し焼きにします」









―20分後。


「これでプリンの完成です!」


「わ~! 本当にプリンになってる! 凄いです!」


「さぁ、後はロスト様が帰ってくるまでの間、魔冷蔵庫で冷やしておきましょう」


「はい、兄様喜んでくれるかな…」


レティがプリンを魔冷蔵庫に入れる。


ちなみに魔冷蔵庫とは、北の大陸で採掘された氷のように冷気を帯びた石、魔氷石を鉄の箱に入れた、食べ物の鮮度を長く保つことが出来る箱の事である。


「きっとロスト様なら喜んでくれますよ」


「そうだ! レティ様、ある方法でロスト様にプリンを食べさせてあげたら喜んでもらえますよー」


「本当ですか!? 一体どんな方法なんですか?」


「それはですねー…」










3時間後、ロストが散歩から戻って来た。


「兄様、おかえりなさい!」


「レティ、ただいま、ん? 少し甘い匂いがするな?」


「えっと、兄様、実は兄様に食べてもらいたいものがあるんです、だからリビングにに来てもらえませんか?」


「それは楽しみだな、では行くか」


ロストとレティはリビングに向かった。


リビングに着いたロストは椅子に座った。


「それでレティ、俺に食べさせたいものとは何だ?」


「はい、今出しますのでちょっと待ってくださいね、確かこうやって…」


レティが魔冷蔵庫からプリンが入ったカップを取り出し、カップに皿をあてひっくり返して、両手で振ってプリンを出した。


「兄様、どうぞ」


「ふむ、プリンか」


「ロスト様、そのプリン、レティ様が作ったんですよ」


「何、レティがこのプリンを?」


「は、はい、兄様に喜んでもらいたくて…」


「それは嬉しいな、では早速食べるとするか…」


「あ、待ってください兄様、私が食べさせてあげます」


「ん?」


レティがロストの隣に座り、スプーンでプリンをすくい、ロストの口元に持って行った。


「兄様…あ、あーん…」


「レティ、これは?」


「蟻人さん達が、こうやって食べさせてあげたら兄様が喜ぶと聞いたんです」


「そうか、では食べさせてもらうか、あーん…」


ロストがプリンを食べる。


「うむ、美味い!」


「本当ですか!?」


「ああ、レティが作ったプリンは本当に絶品だ、ありがとうなレティ」


ロストがレティの頭を撫でる。


「えへへ…」


頭を撫でられたレティは嬉しそうに目を細めた。


「ではレティ、もっとお前のプリンを食べさせてくれるか?」


「はい兄様、あーん…」


レティが再びプリンをロストに食べさせてあげる。


「あむっ…うむ、美味い!」


「ふふ…」


ロストが美味いと言うたびに、レティは満面の笑みを浮かべた。















―数日後、魔王城執務室。


「ゼノム様、あの少女の観察記録が届きました」


ゼノムが紅茶を飲んでいる。


「そうですか、では観察記録を教えてください」


「はい、少女の名前はレティ、普段から家でロスト様の部下の手伝いをしたりしているそうです、あと、ロスト様にとても可愛がられているそうで、普段から頭を良く撫でられているみたいです」


ピシィッ!


「ヒィッ!?」


ロウズの報告を聞いた瞬間、ゼノムが持っていたティーカップにヒビが入った。


「どうしました? 報告を続けてください」


ゼノムが笑顔でロウズにそう言った。


「は、はい…それでつい数日前はロスト様のためにプリンを作ったそうです…そ、それで…」


「それで?」


「その手作りプリンをロスト様に、あ、あーんして食べさせてあげたそうです」


バキィッ!!


「ヒィィィッ!?」


ゼノムが持っていたティーカップが粉々に砕け散り床に落ちた。


ゼノムの身体が震え、身体からどす黒いオーラが発生している。


「…そうですか、では引き続きその少女の観察を続けるように伝えてください、分かりましたね?」


「は、はいっ! では失礼します!」


ロウズが逃げるように執務室から出ていった。


「…あ、兄上にあーん…だと…」


ゼノムのどす黒いオーラが強さを増す。


「なんと羨ま破廉恥な事をしてやがるんだその小娘ぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


ゼノムの叫びは魔王城全体に響いたという…

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