第4話 俺の責任ですか?


その声は、思いの他響き。ギルド内にいた人全員こちらに注目している。喧嘩している二人すら喧嘩を止めこちらを見た。


俺はズタズタになった図鑑を持ち上げ叫んだ為、図鑑の惨状を周囲が認識した瞬間。

喧嘩している二人は顔が真っ青になり、受付嬢は言葉を無くしている。

冒険者たちは、その図鑑にお世話になっているものが多いため。モンスター図鑑の貴重度は言うまでもなく知れ渡っている。


二人は我に返り片方はギルドから物凄いスピードで逃げて行き、もう一人は人生が終わってしまったかのように崩れ落ちている。


俺は受付嬢に無残な姿になった図鑑を見せながら聞いた。

「これって俺の責任じゃないですよね?」


「と、とりあえずそれをこちらに渡して下さい。幸いギルドマスターが居ますので聞いてきます。逃げないで待っててください。」

と受付嬢は急いで奥へ行った。



待っている間、俺はこれからどうなのか不安を抱えながら椅子に座っていた。

崩れ落ちた冒険者は逃げないように他の冒険者たちに縛られ鬼の形相で見張られていた。


するとギルドの奥から先ほどの受付嬢と共に眼鏡をかけた細身の男が来た。

受付嬢は説明するようにその男に話した。


「そこで縛られているのが喧嘩をして原因を作った人です。もう片方は逃げましたが【赤の剣】のパーティーの一人ですので、直ちに指名手配します。そして、その喧嘩に不運にも巻き込まれたのがあそこに座っている顔を青ざめた少年です。」


「なるほど、大体は分かりました。それではそこで縛られているキミ。」


「は、はい」


「ギルド内での喧嘩または暴力は禁止されているのは知っていますよね?なぜそんなことをしたんですか?」


男は先ほどの原因を話す。


「なるほど、わかりました。逃げた男の言い分も分かります。クエストは報告までが仕事です。ギルド内でも受け渡し前に依頼品を壊してしまうのは本人の責任です。ですので、クエストは失敗扱いにします。こんな大事にならなければ再度取りに行ってもらいましたが、こうなっては仕方ない。さらにそれに伴いギルドの重要な本を破損させたため罰金を払ってもらいます。」


「い、いくらぐらいでしょう。」


「そうですね。あの本は特別な方法で作成されており、植物図鑑ならまだしもモンスター図鑑は今では作れる人がいません。ですので白金貨1000枚というとこでしょうか。もしくは、モンスター図鑑作成者を見つけてくれば白金貨1枚にしましょう。まぁ図鑑作成スキルはかられこ100年は見てないので後者を選ぶのはギャンブルみたいなものですがね。因みに君のギルドランクはいくつですか?」


「一応Bランクです。」


「それでは、逃げずにいたことを免じてAランク依頼の受諾許可を出しましょう。頑張れば5年で借金を返せますよ。」


それを聞いた男は首をガックリ落とし分かりましたと答える。

それを聞いていた俺は白金貨っていくらだ?

屋台の串焼き一本銅貨2枚だから・・・串焼き50万本・・そんなにあっても食べられないよと訳の分からない事を考え現実逃避していた。


「では、不運にも巻き込まれた君」


と呼ばれ現実に戻された。

「は、はい!」


「君はギルド登録者ではないが、借りるときに破損時の罰金等の注意は聞いているね?」


「・・はい」


「原因はともかく周りの喧騒を聞いていればこのような事態は回避できたと思うんだけどどうだろうか?」


「・・・はい。できたと思いますが、僕は一つの事に集中してしまうタイプですので、そんな器用なことはできませんでした。」


「なるほど、だがそんな事は言い訳にもならないがギルドの関係者ではない。よって罰金として白金貨1枚払ってもらう。支払い期限は5年以内に半額を納入し10年で全額返済とする。また逃亡抑止の為この後ギルドに登録してもらう。」


「そ、そんな大金払えません!」


「では、奴隷に落ちてもらう。本を借りるときに破損時の対応を聞いているはずだ。

なに、ランクはEからだが、白金貨1枚くらい10年もあれば返せる。運が良ければ5年で返せるよ。頑張り給え。」


そんな無茶な・・と思いながら今まで培ってきた商人の力で借金を無くそうと試みる。

「・・じゃぁ僕がそのモンスター図鑑作成者を見つけたら借金を無くしてください。」


「そんな、無茶な話あるか?みつけたとしても減額だ。金貨100枚」


「では、期限を設けます。3年以内でどうでしょう」


「3年か。無理だと思うが、出来たとしても減額だ金貨1枚」


「では、一年でどうでしょう。さらに見つけられなければ罰金は白金貨10枚払います。できなければ奴隷にでもなんでもなります。」


周囲からは何をバカなこと・・なんて声が聞こえる。


「威勢がいいね。でも、出来ない事を言うもんじゃないしここは博打屋じゃない。はったりでレートを上げても君にしか損はないよ」


「できるかできないかを決めるのは自分です。それに俺は出来ない事は言わない主義です。」


その男は少し悩んでから

「面白い。ではその威勢の良さに免じてその条件を飲もうじゃないか。見つけたらこのギルドの私の部屋に来なさい。あぁ申し遅れたが私はこのギルドのギルドマスターでキルトという。なにかあったら受付で私を呼びなさい。」


周りでは、その話し合いを聞いて「あいつばかだなぁ」や「なかなかの威勢だ」とかいっている。


と踵を返して奥へ帰ろうとする。


が俺はそれを呼び止める。


「ギルドマスター!」


キルトは振り向き

「なんだい?」


「見つけました!」


周囲も巻き込みみんな頭に??を付けている。

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