第155話 塔のラスボス
俺たちは一度59階層へ戻ってきた。そこでラスボスのおねーさんと戦うのだが・・・
「あの・・とりあえず名前を聞いていいですか?」
俺がおねーさんにそう聞くと、ポカンとした彼女はハッとした顔で答えてくれた。
「あっ、僕の名前かい、そうだね一応人間からはアズラヴィルと呼ばれている」
そう言うとニヤリと笑い空中に浮かび上がる。そして背中から真っ白な翼が現れ、それを大きく広げた。さっきまで普通のか弱い女性だったのに、大きな翼を広げた彼女からは強烈な威圧感を感じる。まさにそれはラスボスの名にふさわしい威厳のある姿であった。
「だ・・・大天使アズラヴィルやて・・・嘘やろ・・」
「戦天使と戦うのですか私たち・・」
マゴイットとファミュはどうやらアズラヴィルの名を知っているようだ。俺は二人に聞いてみた。
「誰?、有名な人なの?」
「アホか! この世界に住んでる者なら誰でも知ってるような有名な天使や、戦天使の名を持っていて、一部では戦いの神として崇める部族もあるぐらいやで」
「え・・そんな人に勝てるのかな・・・」
俺が不安顔でいると、アズラヴィルがニコニコしながら話しかけてきた。
「もちろん本気で戦ったら僕が余裕で勝っちゃうからそこそこ手は抜くよ。そうだな、君たちは人間にしては相当強いみたいだから1割くらいの力で戦おうかな、それで10分間、誰か一人でも生きていたら君たちの勝ちってことでいいよ」
なんと甘い提案であろうか・・いや・・それでも勝つ自信があるってことか。
「そやな、それくらいのハンデがあるんやったらなんとかなるかもしれんな」
「そうですね、大天使様の慈悲に感謝します」
アズラヴィルは背伸びをしながら首をぐるりと回す。そして真剣な顔をして戦いの開始を告げた。
「さて、それじゃあ戦おうか、10秒あげるから心の準備をして。10、9、・・」
それを聞いて、俺はすぐに支援魔法の準備をした。仲間全てに効果のある防御魔法と攻撃強化魔法を唱える。ファミュは舞を踊り始め、マゴイットは何やら闘気を集中している。
「2、1、ゼロ・・・さて時間だよ」
アズラヴィルはそう言うと右手をかざす。
「マスター! 強力なエネルギー反応です」
アテナがそう言った瞬間、彼女の姿が白い光に包まれて搔き消える。アテナは後ろの壁まで吹き飛ばされていた。そしてその体はボロボロに破壊されていた。
「申し訳ありません・・シールドの展開が間に合いませんでした・・自己修復モードに移行する為、10分間、行動ができません」
10分かかるんじゃ戦いが終わる・・一番の戦力と期待していたアテナがいきなり離脱してしまうなんて・・
次にマゴイットが動いた。彼女は剣を横に構えて、攻撃の態勢になった。彼女は小さく長く息を吐き出し、闘気を練り始める。すると赤い闘気が彼女の周りを渦巻き始めた。そのタイミングで、口元では何かの呪文を唱え始めた。
マゴイットは全ての準備ができると呪文を解放した。そして渦巻く闘気を全て剣に集中すると、呪文の解放と同時にそれを振り抜いた。
「エピローグ・ジャスティス!」
それは、魔法と闘気の融合技であるマゴイットの必殺剣であった。闘気の剣撃の周りを聖なる魔法のエネルギーが干渉して、相乗効果で魔法と闘気の力が強化されていく。
その凶悪な攻撃力を持つ攻撃が、アズラヴィルに直撃する。強烈な光と、斬撃の衝撃が周囲の空間を震わす。さすがの大天使もこの攻撃には驚いたようでお褒めの言葉がマゴイットに遣わされた。
「すごいよ君、結構ダメージくらったよ。僕にこれだけのダメージ与えるなんて下級の闘神並の攻撃力だね」
という割にはそんなにダメージを食らっているようには見えない。マゴイットに意識がいっている隙に、ファミュがアズラヴィルの後ろに回り込んでいた。ファミュの体は黄金に輝き、流星のような蹴り技をアズラヴィルに食らわす。それはギガ・メテオストライクという技で、インパクトの衝撃だけで、周りの壁や床が崩れるほどの威力を秘めていた。それを受けたアズラヴィルは微笑みの表情ですごく嬉しそうである。
「すごいすごい、いい攻撃だよ。人間ってこんなに進化してるんだね」
ファミュとマゴイットの今の攻撃って、おそらく今まで俺が出会った敵とかだったら、一発で倒しちゃうような威力なんだろうな・・それを食らってニコニコしている大天使アズラヴィルはまさに次元が違う存在って感じであろうか、あれで十分の一の力だなんて・・・本気を出したらどれだけ強いんだろうか想像もできない。
二人があんなに頑張ってる。俺も全力でいかないと・・紋次郎は剣を構えて、天地崩壊斬を放つ準備を始めた。
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