第156話 驚愕の一撃
アズラヴィルは人間という存在を侮っていたと心から思っていた。彼女は抉られた右半身を見つめて、少し微笑みをもらしながら失った体を再生し始めた。
それは驚愕の一撃であった。あの男が放った天と地を貫く至高の一撃は、アズラヴィルの体を貫き、引裂き、抉り取った。一割の力しか出していないこの状態であっても、これだけの致命傷を受けるとは夢にも思っていなかった。正直、今の一撃だけでも彼らの勝利にしてもいいとすら思ってしまったが・・・もう少し彼らを見たいと好奇心が湧き上がってきていた。アズラヴィルはその力をもう少し解放することにした。それは最初の約束を反故にすることであるが、このまま戦う方が失礼にあたると判断したのである。
「あれだけの攻撃受けたのにまだ動けるんかい!」
「それどころかものすごいスピードで再生しています、追撃しましょう!」
マゴイットとファミュは高く跳躍して、傷ついたアズラヴィルに攻撃を開始する。しかし、彼女らがアズラヴィルに近づいた時には、彼女の傷はすでに跡形もなく再生されていた。二人はアズラヴィルに一瞬で間合いをつめ直される。その瞬間、真上からドラム缶サイズのハンマーで殴られたような衝撃が降ってきた。二人はその衝撃で地面に叩きつけられる。
アズラヴィルはすぐに手からエネルギー波を放ち、二人にとどめを刺そうとする。だが、その時、紋次郎が動いた。フライを唱えた紋次郎は地面を跳躍して、アズラヴィルに体当たりするような勢いで迫っていく。その気配を感じた大天使は、強力な防御シールドを展開して、紋次郎の攻撃を真正面から受け止めた。
紋次郎の剣撃とアズラヴィルのシールドが触れて、強烈な稲光が弾ける。紋次郎はその場でターボを発動した。そして強烈な斬撃を繰り出す。それは思いつきの剣法であったが、ターボで強化された驚異的なスピードとゴット級の超絶攻撃力で縦横無尽に斬りまくる、まさに千の斬撃、神速千撃斬の誕生の瞬間であった。
あまりの早さに一撃一撃の攻撃はもはや肉眼では見ることができないレベルに達していた。一瞬で数百手に及ぶ攻撃が繰り出され、アズラヴィルのシールドは数秒で弾け消えた。次のシールドの展開など間に合うわけもなく、アズラヴィルはまともにその剣撃を受ける。血がほとばしり、みるみるうちに彼女の体に傷ができていく。それを微笑みながら受けた大天使は緑色の光のオーラを放出する。
アズラヴィルのオーラの放出は、その見た目では信じられないほどの衝撃を紋次郎の体に与えていた。一瞬で息がつまり、気がついたら数十メートル先の壁に打ち付けられていた。
アズラヴィルは壁にめり込んだ紋次郎にゆっくり近づいた。そして両手を上げて魔力を集中する。大きな金色の魔力の塊を作り上げて、それを紋次郎に投げ放った。その魔力の塊が紋次郎に直撃する直前、一つの影がそれを阻止する。アズラヴィルの放った魔力の塊は紋次郎にあたる前に、飛び込んできたファミュに直撃した。稲妻のように金色の光が何度もスパークして、ファミュの体に何度も打ち付ける。小さな悲鳴をあげて、ファミュは地面に崩れ落ちた。
壁から這い出てきた紋次郎はその姿を見て声を上げる。
「ファミュ!」
すぐにファミュの元へと走り寄り、彼女を抱きかかえた。
「・・も・・紋次郎・・嬉しい・・・」
そう言うとファミュの力が抜けていく。紋次郎はすぐに治癒の魔法を唱えようとするが、アズラヴィルがそんな時間を与えてくれなかった。
アズラヴィルはすでに二発目の魔力の塊を用意していた。それを解き放とうとする。紋次郎はファミュを抱えて、その攻撃から逃げようとした。しかし、タイミング的にはもう間に合いそうになかった。だが、その瞬間、大天使の後方から声がする。
「隙だらけやで大天使! エピローグ・ジャスティス!」
アズラヴィルはすぐに後ろを振り向き、紋次郎の為に用意したその魔力の塊を、マゴイットに投げ放った。
マゴイットの斬撃と、アズラヴィルの魔力の塊が衝突する。強烈な爆風が周囲に広がる。そしてその爆風の中から、アズラヴィルの魔力の塊だけが現れる。大技を放ったばかりのマゴイットはそれを避けることができずに直撃する。
マゴイットは金色の稲妻の衝撃で、地面に叩きつけられる。あまりの衝撃に、硬い床が円形に陥没した。そのままマゴイットは動かなくなった。
「マゴイット!」
アズラヴィルは微笑みながら俺に近づいてくる。
「一対一の戦いもいいかもしれないね、紋次郎と言ったかな、僕ととことん遊ぼうじゃないか」
そう言ってアズラヴィルは右手に気を集中する。するとその手に光る剣が現れた。
紋次郎も剣を構えてアズラヴィルに対峙した。
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