第153話 天使との戦い

紋次郎はマゴイットの落ちた場所へと駆け付けた。マゴイットは横向きに倒れていた。紋次郎は声をかけながら駆け寄る。

「マゴイット!」

「なんやうるさいな」

ひょっこり起き上がったマゴイットは紋次郎にそう返事した。

「大丈夫なの?」

「当たり前や、あんなんでやられるかいな、うちは勇者やで、まだ本調子ちゃうから目覚ましに一発くろただけや」

「あ・・はあ・・」


「まあ、任せとき、ここからが本番や」

マゴイットはそう言うと、空中に浮遊する大量の天使を睨みつける。そして口元で何かを唱えて高くジャンプした。


それは信じられない早さの跳躍であった。天使たちもその早さを捉えることができなかったようで、マゴイットの姿を見失っていた。


不意に天使の一体がバランスを崩して落ちてくる。よく見ると胸が貫かれていた。その天使を皮切りに、次々と天使が落ち始めた。


それはマゴイットの攻撃であった。超高速で空中を飛行して、次々と天使を斬り伏せていっていた。紋次郎はそれを見て感嘆の声を上げる。

「すごい・・・」


マゴイットは大丈夫そうなので、ファミュの援護に向かうことにした。ファミュは左腕を怪我したようで、腕がぶらりとたれ下がり、力が入ってないようであった。俺はすぐに近づき、ファミュに治癒の魔法を唱えた。


「ありがとう、紋次郎。さすがに天使は強いよ、一体で厄介なのにあの数じゃあ・・」

俺はファミュに何かできないかと魔法一覧を見る。支援魔法の項目に、丁度良いものを見つける。すぐにファミュにその魔法を唱えた。

ブースト・オブ・オーバーロード覇王強化!」


ファミュの体を赤いオーラが包み込む。それは規格外の支援魔法であった。術者の魔力キャパシティをベースに、すべてのステータスを上昇させる。しかもおまけに三つの波動オーラが付加される。聖波動、魔波動、次元波動の三種の波動は、万能の攻撃性能を引き出してくれる。

「これは・・・・」

ファミュは湧き上がる力に、手応えを感じていた。これだけでも天使に通用しそうであったが、ファミュはさらに奥義の舞を舞い始めた。圧倒的な力を得るために・・

「すまない紋次郎、少しだけ時間を稼いでください」


紋次郎は剣を構えて周りの天使を牽制する。しばらく時間を稼ぐと、ファミュの準備が整った。赤いオーラに、金色の舞のエネルギーが、ファミュの周りを渦巻く。

「任せてください」

そう言ってファミュは、その場所から消えた。そして一瞬で天使の集団の中へ現れた。ファミュは両手を広げて気を放出する。それは強烈な死の衝撃であった。それを受けた天使たちは散り散りに粉砕されて吹き飛ばされる。


ファミュのその姿に安心した紋次郎はアテナを見た。アテナはものすごい数の天使の集中攻撃を受けていた。しかし、展開しているバリアのおかげか、ダメージを受けているようには見えない。アテナはバリアを展開したまま、急に飛び立って俺のところまでやってきた。そしてこう話してきた。

「マスター。現状の戦闘力ではあの数を殲滅するのは難しいです。戦闘リミッターを一段階外して宜しいでしょうか」


「え・・あ・・よくわからないけど、外していいよ」

「マスターの承認を確認。戦闘リミッターを一段解除します」

そう呟いたアテナの瞳に不思議な文字が浮かび上がる。そして力強く跳躍する。空中に飛んだアテナは両手を広げて、糸のようなレーザーを無数に放出した。そのレーザーは次々に天使の胸を貫いていった。


アテナはやっぱり強いな・・確か戦闘リミッターを一段外していいかって聞いてたよな・・・戦闘リミッターって何段まであるんだろう・・・底の知れないアテナの性能に素直に驚き感心する。


みんなの活躍でかなり天使の数が減ってきた。最後の一押しの為に、俺も剣を握り、ターボを発動する。そして天使の群れに突撃した。


長いようで短い戦いが終わり、あれだけいた天使のすべてが、地面にひれ伏す。ゴンベーは壊されてしまったけど、なんとかこの戦いに勝利することができたみたいだ。残るはこのすぐ上の60階層だけである。そこには一体何が待ち構えているのだろうか・・俺たちはゆっくりと上層への階段を上り始めた。

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