第152話 最後の難関

59階層・・俺たちは頂上手前までやってきていた。このフロアー、何もない空間であった。無機質な作りで、内装が何もされていないビルのようであった。


見晴らしがいいので、階段はすぐに見つかった。周りに敵もいないようで、何の障害ものなく頂上へ行けるとみんな思っていた・・しかし、アテナの警告によって事態は一変する。


「マスター! 高エネルギーの生命体が無数に空間移動してきます!」

「え、え、え、え? 何が移動してくるって?」


俺たちを囲むように、何もなかった空間に無数の円柱が出現する。円柱は観音開きでその扉が開き、中から翼を持った人型の生物が現れた。


「天使・・どうしてこんな所に・・・」

ファミュは驚きの表情を隠せない。

「やばいで、さすがにこんな数の天使を相手するのは無理ちゃうか」

マゴイットも額に汗を一筋垂らして、焦りの表情を見せる。


神獣と同格で、神族の一つである天使・・その戦闘力も並ではなかった。

「天使って・・悪人じゃないよね? なんとか話し合いで通してもらえないかな」

「紋次郎、この世界の天使はそんな甘いもんちゃうで、今このタイミングで出てくるってことは、この先には通さへんでって意味やと思うで」

「まあ、もしかした話がわかる天使かもしれないし、話してみようよ」

「ほな、無駄やと思うけどやってみいや」


俺は天使に向かって話しかけた。

「あの・・・天使さん、俺たち、この先にどうしても行かないといけなくてですね・・・」


そう話かけた天使の答えは、強烈な一斉攻撃であった。

「わ、わ、わ!」


俺に向かって放たれた無数の光の矢を、シールドを展開したアテナが守ってくれる。

「言わんこっちゃない。しゃあない、戦うで!」


天使たちは光の矢を問答無用で撃ち放ってくる。それを避けながらマゴイットは高くジャンプする。天使の一人をターゲットにしたマゴイットは、剣でその天使の胸を貫こうとする。しかし、その剣は天使にまで届かなかった。マゴイットの剣は見えない力に防がれて、天使の目の前で停止する。


「やっぱそんな簡単にはいかんか・・」


マゴイットは周りの天使から一斉に攻撃を受ける。全ての攻撃が直撃して、地面にフラフラと落ちていく。


「マゴイット!」

俺はすぐにマゴイットの方へと駆け寄ろうとしたが、三体の天使にそれを阻まれる。すぐに剣を構えて天使たちに対抗しようとした。


ファミュの蹴りは天使の一人を吹き飛ばした。だが、蹴られた天使は平然としている。後ろに気配を感じたファミュは振り向きざまに肘でその後ろの天使に攻撃する。硬い岩でも攻撃したような重い手応えで、ファミュは弾き飛ばされた。バランスを崩したファミュへ、天使たちの容赦ない一斉攻撃が放たれる。攻撃の弾幕に飲まれたファミュはそのまま崩れ落ちる。


ゴンベーは紋次郎に放たれた攻撃を胸で受け止める。途轍もない衝撃で、その岩の体はバラバラに分解された。


アテナは紋次郎を攻撃しようとした天使に向かって接近する。しかし、周りの天使から一斉に攻撃を受ける。だけどその攻撃は効いていないようで、平然とした顔で攻撃した天使の一人の首をつかんで捻り潰す。その隣にいた天使には、腕からレイザービームのような攻撃を放って、その胸を貫いた。


天使たちはアテナの存在を危険と感じたのか、数十の天使が集まり、アテナに向かって一斉に攻撃を開始した。アテナはそれを円形のバリアで防ぐ。しかし、天使の集団での一斉攻撃は凄まじく、そのバリアごと、壁に叩きつけられた。


紋次郎は目の前の天使三体に対して剣で斬りかかる。先読みで相手の動きを読んで慎重に攻撃する。天使は見えない力でそれを防ごうとするが、紋次郎の剣の波動に阻まれて、その力を無効化される。


紋次郎の剣に胸を貫かれた天使は、驚きの表情をしていた。人間の扱う剣ごときに自分が殺られるなんて微塵も考えてなかったのである。天使はそのままゆっくり崩れ落ちた。それを見ていた他の天使に、一瞬の隙が生まれていた。それを紋次郎は見逃さなかった。すぐに剣を躍らせて、続けて二体の天使を斬りつける。


自分を守るはずである力が無効化されて、天使にはその紋次郎の剣を防ぐすべがなかった。二人とも簡単に首をはねられる。三体の天使を倒した紋次郎は、すぐにマゴイットとファミュを助けに走った。

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