第151話 頂上へ向けて
ファミュもマゴイットもいい感じで酔いが回ってきているようだ。村でもらった日本酒を二本も空けてしまっている。
「紋次郎、あんたももっと飲んだらええんちゃうか」
うむ、どうも俺は飲みすぎると変になるようだから控えてるんだよね。
「ありがとう、でも俺もいっぱい飲むとすぐに無くなっちゃうよ。後三本しかないし、大事に飲んだ方がいいんじゃない」
「う・・・そやな、頂上に着いた時のお祝いに残しといた方がええか」
「そうだね、そうした方がいいと思うよ」
マゴイットはさっきまであれだけ豪快に飲んでいたのに、コップに残っている日本酒を、大事そうにチビチビと少しずつ飲み始めた。
「そういえばマゴイットってアルティと友達って言ってたよね、どんな関係だったの」
「アルティか、そやな高校の同級生で、まあ、親友やな」
「おっ親友てことはかなり仲が良かったんだね」
「まあな、あれはあんな性格やろ、うち以外友達おらんかったからな」
「え? アルティはそんなに変な性格じゃないよ、お酒さえ飲まなければ・・・」
「なんやあいつ、本性隠してんのか、あれはバリバリの腐女子で引きこもりやから友達なんかできへんで」
「まあ・・確かに最初に会った時はダンジョンに引きこもってたけど・・今はそんな感じじゃないよ」
それを聞くと、マゴイットは俺の顔をじっと見つめてニヤリと笑う。
「ははん、そう言うことか、あれもとうとう色気付きやがったか」
「どういう意味だよ」
「まあええわ、早よ会うて色々聞かんとな」
腑に落ちない反応だけどここは流そう。
「そういえばこっちには二人同時にやってきたの?」
「そやで、て言ってもアレやけどな、あれはうちが召喚されたのに巻き込まれた感じなんやけどな」
「そうなの?」
「そや、一緒にいる時に、なんかうちが渦に吸い込まれてな、それを助けようとして一緒に吸い込まれてもうたんや」
アルティらしいと言えばらしい話だな、友達を見捨てるような人間じゃないのは知っていたけど、やっぱり彼女はいい子だ。
「さて、そろそろ休もうか、明日には頂上に行けるかな・・」
「どうやろな、あんま変な敵がおらんかったら大丈夫ちゃうか」
「もう一踏ん張りです、頑張りましょう」
三人ともお酒も入り、だいぶ疲れていたのですぐに就寝する。アテナとゴンベーは周囲を警戒して三人を守っていた。
就寝してきっちり6時間、アテナの声で俺は起こされた。
「マスター、お時間です。起きてください」
「う・・あっ、ありがとうアテナ、問題なかった?」
「はい。戦闘生命体による襲撃が二回ありましたが撃退しております」
そう言うアテナの後ろには、強大なモンスターの死体が転がっていた。あれを音もなく片付けるアテナはやっぱりすごい。
「見張りなんか頼んじゃったけど、君は寝なくても大丈夫なの?」
「私も睡眠は必要です。しかし、年間5分ほどで大丈夫ですので、問題ありません」
「そ・・そうなんだ・・」
アンドロイドに睡眠が必要なことに驚けばいいのか、年間5分の睡眠でいいことを驚いた方がいいのか、まあ、答えが出なかったので深く考えないことにした。
すぐにファミュとマゴイットを起こす。二人は二日酔いなのか、少し体調が良くないよである。俺は近くの小川で顔を洗って歯を磨きをする。昨日のキャンプの残り火でお湯を沸かして、炭豆茶を三つ入れた。三つ目にお湯を注いでいる時に、アテナを見てハッと思い、念のために聞いてみた。
「アテナ、君は飲み物とか食べ物とか飲んだり食べたりできるの?」
「水分補給や食事をしなくても問題ありませんが、飲食ができる機能はございます」
それを聞いた俺は、カップをもう一つ用意して、そこに炭豆茶の粉末を入れてお湯を注いだ。
四人でゆっくり炭豆茶を飲んで英気を養うと、俺たちは出発の準備を始めた。あと5階層・・もう少しで頂上へ到達できる。俺は荷物を背負いながら、仲間の顔を思い出していた。
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