第150話 未来からの援軍

アテナを見て、ファミュとマゴイットは呆然としている。召喚されるのは、巨大なドラゴンか、強力な魔神を期待していた二人だったけど、実際目の前にいるのは一人の女性であった。マゴイットは紋次郎とアテナの会話の内容から、彼女がアンドロイドだと理解したけど、ファミュには一体何者なのか想像もできていなかった。


ちょっと呆然としている二人を見て、紋次郎は、アテナに声をかける。

「アテナ、この二人は俺の仲間で、ファミュとマゴイットだよ」


「ファミュ様、マゴイット様を友軍として登録いたしました」


そんな紋次郎にマゴイットは小声で話しかける。

「おい、紋次郎・・何をどうやったらロボットなんか召喚できるんや」

「知らないよ・・無差別だからそんなもんじゃないの」

「アホ、ものには限度があるわ、空間どころか時空超えてきとるやないか、無差別召喚で他次元から召喚するなんて聞いたことないわ」


その会話を聞いていたアテナがマゴイットに訂正する。

「マゴイット様、私はアンドロイドです。ロボットではありません」

それを聞いたマゴイットはそっと紋次郎に声をかける。

「何が違うんや?」

「俺に聞くなよ・・」


そんなやり取りをしていると、アテナが魔獣ケルベロスの方を見て警告を発する。


「北東500m先に、敵対意思を持った生命体が存在します。マスター、殲滅いたしますか」


「丁度ええわ、このロボットの性能見るにはええんとちゃうか」

「ちょっと待ってよ、アテナ一人で戦わすの? 神獣並みの戦闘力の敵にそれはかわいそうだよ」

「まあ、最初だけや、やばそうなら手え貸せばええやろ」


少し心配ではあったけど、マゴイットの言うようにアテナの実力を見てみたいとは思ったので、殲滅するように指示を出した。その命令を聞いたアテナは、ターゲットである魔獣ケルベロスを見て何やらブツブツと言い出した。

「対象生命体の戦闘力を分析・・・強度210000、筋力値187000、敏捷・・・」


そして最後に分析完了と呟くと、超速で魔獣ケルベロスに接近する。一瞬で近づいたアテナに、さすがの魔獣も驚いているようである。


魔獣はすぐにアテナに向けて攻撃を開始する。三本の頭から強烈な炎を吐き出しながら、その爪でアテナを引き裂こうとする。しかし、アテナには炎の攻撃が全く聞いてないようである。さらに爪の攻撃にもビクともしていなかった。


アテナは、ボクサーがサンドバックを殴るような綺麗なフォームでケルベロスにパンチを繰り出した。その攻撃がどれくらいの威力があるかはわからないけど、魔獣ケルベロスの肉体を粉々に粉砕するには十分の威力を有していた。しかもケルベロスの後ろの壁まで、そのパンチの風圧だけで巨大な穴を作っている。


神獣並みの戦闘力の敵を、一撃で葬ったその力に、ファミュもマゴイットも呆然としていた。さすがにこれは想定外としか言いようがない。


「おい、紋次郎・・お前はとんでもないもん召喚してもうたんちゃうか・・」

「・・俺もそんな気がしているよ」


紋次郎は、この先どんな敵が現れても負ける気がしないくらいの気分にはなっていた。伝説級冒険者のファミュ、勇者マゴイット、未来のアンドロイドのアテナ、頼もしすぎる仲間が本当に心強い。


その後は、俺たちはまさに快進撃と呼べる勢いで塔を登っていく。苦戦らしい戦いものなく、55階層へと到達していた。


「あれ・・おかしいな・・いつものパターンならここに遺跡があると思ったんだけど」

「そうですね、普通の森林フロアーみたいですね、でも丁度いいですからここで少し休みましょうか」


ファミュの提案にマゴイットも賛成のようで、ラストスパートに向けて、俺たちはここで休憩することにした。


すぐにキャンプの準備をして食事の用意をした。村で新鮮な肉や魚など、食料を分けてもらっていたので、今晩は少し豪勢な食事を用意できそうである。


「肉は鍋にする、それとも焼肉にしようか」

「焼肉がええな、直火でじっくり焼いて食おうや」

「魚も塩焼きにしましょう」

「そやな、日本酒に合いそうやで」

俺はそのマゴイットの言葉に注意するように話す。

「マゴイットお酒飲むの? ここはモンスターが出る可能性があるよ」

「まあ、固いこと言うなや、アテナとゴンベーが見張ってくれるから大丈夫やろ」


確かによほどのことがない限り大丈夫だと思うけど・・・こうして森林でのプチ宴会が始まった。


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