第149話 無差別召喚
十分の休養が取れて、かなりリフレッシュできた。村長にお礼を言って俺たちは塔の中の村を後にする。
「それにしてもあの人たちは何者なんですかね」
「まあ、そんなんなんでもええんちゃうか、幸せそうに暮らしとるみたいやし」
「そうだね、帰りにまた寄れるといいね」
「そやな、納豆もまた食べれるしな」
「私はあれはもう・・・」
どうもファミュの口には納豆は合わなかったようである。
俺たちはその後、順調に頂上に向かって進んで行く。やはりボス級の敵以外はそれほど強敵がいないようで、ほとんどの敵を瞬殺して先に進む。
そんな感じで気がつくと45階層へとやってきていた。やはりというべきか、この階層にもいつもの遺跡が見える。
「ボス階やな、気い引き締めていくで!」
慣れた感じで遺跡の内部を進んで行く。いつものボス部屋にやってくるとそこにいたのは驚愕の敵の姿であった。
「やばいな・・三つ首の魔獣・・・ケルベロスやなあれ」
「強いの?」
「むちゃくちゃ強いで、噂では神獣並みの戦闘力ちゅう話や」
「神獣・・・ニャン太並みの戦闘力・・そんなのに勝てるの?」
「ちょっと危険やな・・さてどないするか・・」
「もう少し戦力がいればいいんですが・・」
ファミュのその言葉に、俺は召喚魔法を思い出す。またリリスみたいな強力な助っ人を召喚できれば助かるよね。
「ちょっと召喚してみるよ」
俺のその案に、二人は興味津々で話に乗ってくる。
「なんや紋次郎、召喚魔法使えるんか?」
「紋次郎、何を召喚するんですか?」
「いや・・何が召喚できるかわからないけどとにかくやってみる」
「ちょっと待て、何が出てくるかわからんもん召喚するんか?」
「そうだよ」
ファミュもマゴイットもそんな俺の考えを聞いて渋い顔をしている。
「あのな紋次郎、もしお前が制御できない強力なモンスターが出てきたりしたらどうするんや、まあ、それならまだ対処のしようがあるけど、例えば大爆発を起こすような奴とか、猛毒を撒き散らしている奴とか、そんなのが出てきたらどうするんや」
マゴイットに同意するようにファミュも注意してくる。
「そうですよ紋次郎、今からやろうとしている召喚は、無差別召喚と言って、一か八かの危険な賭けです。なるべくなら避けた方がいいです」
「そういう風に言われると怖くなってくるけど・・・大丈夫のような気がするんだ、だからやらせてみて」
「気がするだけかい!」
「じゃあ、ちょっとやってみるよ」
マゴイットはだいぶ呆れ気味にこう返してくる。
「もう好きにせいや」
俺は自分の使える悪魔召喚ではなく、魔法一覧にある召喚魔法を唱える。それは触媒を必要としない召喚魔法なのだけど、召喚対象の条件が曖昧な無差別召喚魔法であった。
「ランダム・サモン!」
床に書いた魔法陣が赤く光る。その光った魔法陣の中からゆっくり何かが浮き上がるように現れた。
紋次郎は大丈夫な気がすると言ったけど、実際はかなりの自信があった。それはやはり寵愛の効果を信じてのことである。そしてそれは紋次郎の思惑に沿った結果を生み出していた。
魔法陣から出てきたのは女性であった・・しかし、この女性・・普通の女性ではないようだ。SFアニメに出てくるような未来風のボディースーツに身を包み。肩や背中、腰の部分に明らかな機械部品を装備していた。
目をつぶっていたその女性は、ゆっくりと目を開く。そして紋次郎を見つめると、ゆっくりとはっきりとした声でこう話してくる。
「マスター登録を開始します。生体認証登録完了、血流認証登録完了、遺伝子情報登録完了・・・お名前をお願いします」
「え、俺の名前? 紋次郎だけど・・」
「声紋認証登録完了、マスター名、紋次郎、登録完了」
「え・・と君は一体・・」
彼女の色のなかった目に光が灯る、そして無表情のままに自分の紹介をし始めた。
「私は識別コードSXBWー2370、名称はアテナの名が付いております」
「アテナって名前なんだね、それでアテナ、君は一体何者なんだい?」
「侵略してきた異星人に対抗する為に、地球連邦が開発した戦闘用アンドロイドです。自動再生能力、自己強化能力、自立エネルギーにて半永久的に稼働する汎用性に、異星人の戦闘マシーンに対抗しうる戦闘力を有しています」
開いた口がふさがらない・・もしかして彼女は俺のいた世界の未来から来たのか・・それを確かめる為の質問をする。
「アテナ・・君の製造年月日はいつだい?」
「西暦2570年12月23日です」
やっぱりそうだよ・・未来から召喚したんだ・・・これはまたとんでもないもんを呼んでしまったんじゃないだろうか・・
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