第145話 次なる強敵

やはりマゴイットもファミュも頼もしい仲間である。モンスターの攻撃が激しくなった上層にて、そのポテンシャルを遺憾なく発揮する。紋次郎もマゴイットの剣技を見て学び、徐々にではあるがその剣の扱いに上達が見られていた。


度重なる戦闘をこなし、紋次郎たちは35階層へと到達していた。そこには15階層、25階層、にあったような遺跡が存在していた。このパターンはボス級の強敵の遭遇を予見させる。


本当は避けて通りたいが、上層へ続く階段は遺跡の中にあるので、どうしても中に入らなければいけなかった。三人は慎重に遺跡を進んで行く。中は前の遺跡と同じような作りで、スムーズにボスの居るであろう広い部屋とたどり着いた。


やはり予想通りというか、そこには手強そうな敵が待ち構えていた。漆黒のローブを身に纏った魔導士系の敵であった。深く被ったフードの隙間から見える顔には肉や皮などがなく、まさに髑髏そのものであった。


「リッチ!」

ファミュが驚きの声を上げる。リッチって確かアルティが勘違いされていたあれだよね。

「普通のリッチとちゃうなアレは・・」

「そうなの?」

「魔力の質が異常や、あんな禍々しい魔力のリッチなんておらへんで」


ファミュが何かを思い出したのか、ある名を口にする。

「ヘルロード・・・」

「・・・だとしたらちょっと厄介やな・・」

「ヘルロードって強いの」

「えらい強いで、あれに比べたらリッチなんてゴミみたいなもんや」

「ヘルロードは確か実体がないんですよね、物理攻撃は通用しないと思った方がいいですかね」

「そやな、正確には実体が無いんじゃのうて、こっち側に無いだけやけどな」

「どういう意味?」

「そやな、レイスとかゴーストとかおるやろ、あれは実体が無くて、幽体って体をしとるんやけど、ヘルロードは体がこっちの世界に無いんや」

「こっちてどっち?」

「何や説明が難しいな・・実体と影の関係っていうか・・まあそんな感じや」


何かごまかされた感じだけど、まあそんな感じだそうだ。


「あれには普通の魔法も効かへんから、気いつけや」

「物理攻撃も魔法も効かないんじゃ、一体何が効くの?」

「精神系魔法、次元干渉系攻撃・・後は神聖とかやな」

「神聖ってことはホーリーとか・・」

「それはちゃうで、ホーリーは聖属性や、神聖は神威とか天罰とか神さんが使う技や」

「神様って神力とは違うの」

「神力は神威とかを使う力の源やけど・・紋次郎、あんた神力とかよう知っとるな」

「よくわからないけど、どうも俺は神力が使えるみたいなんだよね」

「何やて! それはほんまかいな」

「神獣の仲間が言ってたから間違いないよ、日本人にはその資質があるみたいで、アルティもそうだって言ってたからもしかしたらマゴイットにもあるかもよ」

「そりゃあるで、てか、もうつことる」

「ええ! そうなの?」

「神力もそうやけど神道も持っとるで」

「マジで! 俺も神道あるんだよ。一心三英傑て言って、ステータスがレベルの三倍になるやつ」

「なんやそれ、むちゃくちゃやな、なんかレベルの割には強いと思たわ。うちのは超撃超防てゆうてな、常に攻撃力が5倍に、ダメージを5分の1に軽減する優れもんや」

「ええ、そっちの方が凄くない?」

「どうやろな、紋次郎のは敏捷性とか魔力とか体力にも影響するやろ、うちのは攻防だけやからな」

「そう言われてみればそうだね」


こんな話をマゴイットと俺がしていたのだけど、ファミュが全く話についてこれないようで口を開けて呆然としていた。俺は思わず声をかける。

「ファミュ、大丈夫?」


「・・・・あっ、大丈夫です・・・あまりにも次元の違う話をしていたので驚いてました。お二人とも一体何者なんですか、神力とか神道ってそれこそ神族の御力かと思ってましたけど」

そんなファミュの疑問に対してマゴイットは軽く答える。

「日本人は勤勉やからな」


そんな答えが理解できるはずもなく、ファミュはさらに疑問を深くする。


「さて、それよりヘルロードを倒しにいこか、あちらもこっちに気がついたみたいやで」


マゴイットが言うようにヘルロードはこちらをすごい表情で睨んでいるように見える。俺たち三人は横一列に並んでそれを受け止める。そしてほとんど同時に、一歩目を踏み出した。

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