第146話 ヘルロード

紋次郎は剣でヘルロードに斬りかかった。しかし、その剣は虚しく空を切る。

「何してんねん紋次郎、そんなん効かへんって言うたやろ」

「あっそうか」

ヘルロードは人には理解できない呪文を口にする。その呪文の詠唱が終わると、ヘルロードの周りは火の海に変わる。俺たち三人は上に高くジャンプしてそれを回避する。だが、下を見ると、火の海はフロアー全体に広がり、着地する場所さえなかった。俺は空中で、魔法の一覧に目を通して、急いでこれに対応出来る魔法を探す。


「これだ! パーフェクト・ファイヤープロテクト絶対火炎耐性!」


俺だけではなく、ファミュとマゴイットにも炎を防ぐシールドが展開する。

「ナイスや紋次郎!」

「紋次郎、助かります」


炎を防ぐとわかっていても、あの炎の中に飛び込むのは勇気がいる。ちょっとビビりながら炎の海の中へと着地した。だが、ヘルロードは次の魔法を用意していた。俺たちが着地したところを狙ってそれは発動される。空に無数の岩の塊が出現する、それは俺たちに向かって一斉に降り注いだ。


「メテオストームやんけ!」


驚異的な攻撃力を持つ魔法にマゴイットも焦りの顔をする。ヘルロードは、その魔法を使用した術者にも危険の及ぶ、無差別攻撃魔法を得意としていた。それは普通の魔法が効かない自分の能力を最大限に生かした戦法で、反則級に厄介なものであった。


ファミュとマゴイットは降り注ぐ岩を、その拳と剣で粉砕していく。俺は先読みのスキルをフルに活用して避け続けた。


隙を見て、ファミュが攻撃に転じる。ファミュの拳が金色に光り始める。それをヘルロードに叩きつけた。その技は、気を拳に集めて、その気を一瞬で全て放出して爆発的なエネルギーを叩きつける次元干渉系の大技であった。


「次元波動拳!」


ヘルロードの肩に次元波動拳が命中する。ヘルロードの肩は、引き裂かれた布切れのように四散して散り散りになる。だけど、それも一瞬の出来事で、すぐに散り散りになった肩は、逆再生のように元の位置に戻って再生される。その攻撃は効いてはいたが、ヘルロードにはもう一つの特性があった。


「どういうことですか!」

「ファミュ、ヘルロードは超再生能力もあるから、中途半端な攻撃じゃすぐに再生してまうで」


「中途半端って・・次元獣を瞬殺する技なんですけど・・・」

「みとき、これくらいやないとあかんから」


マゴイットは剣に何やら念を込める。彼女の剣が金色に光り始めた。それをヘルロードの真上から斬りつけて一刀両断にする。

「アストラルブレード!」


ヘルロードは真っ二つに割れて二つになる。だが、すぐに磁石で引き合うようにくっついて一つに戻る。切られた後も残らず綺麗に再生される。この攻撃に激怒したのかヘルロードはさらに強力な範囲攻撃を放ってきた。それはメテオボルテックスというメテオストームの上位魔法であった。渦巻きながら巨大な岩が無数に降り注ぐそさまは、まさに地獄絵図であった。


「あかん、ちょっと足らへんかったわ」

「マゴイット! 全然ダメじゃないですか」


降り注ぐ岩を避けたり破壊したりしながら三人は逃げ惑う。

「紋次郎、なんかええのないんか!」

「ええと、何がいいかわからないよ」

「何でもええわ、一番強力な技使ってみ」


そう声をかけられて思いつくのは一つしかなかった。紋次郎は高くジャンプして、唯一にして最強の攻撃技を繰り出す。

「天地崩壊斬!!」


一本の光の柱が、ヘルロードを貫くように立った。天は燃え盛り、地は震えて崩壊する。天と地の崩壊はヘルロードを飲み込み、その体を消し去るように消滅させた。


「やりおったな紋次郎、ええ技持っとるやん」

「さすがです、紋次郎」

「た・・倒せたの?」

「そや、多分その技は神聖属性の剣技なんやな。威力も申し分ないで、それやったらヘルロードどころか次元龍も倒せそうやな」


よくわからないけど天地崩壊斬は神聖属性ということがわかった。


俺たちは遺跡の奥に進み、上層へ行く階段を上り始めた。あと25階層・・まだ道は長いな・・

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