第143話 女勇者
31階層は爽やかな高原フロアーであった。ここは塔の中のはずだけど、このフロアーの天井には空がある。しばらくここにいると、屋外にいると思ってしまうほどリアルな感じであった。
俺たちは、とりあえず食事をとりながら話をすることにした。近くにあった木を剣で伐採して、それをマキに火を起こす。鍋に水を入れて、三種の干しキノコをそこへ入れる。干し肉とパンを火で炙り、その炙った干し肉と、パプラと呼ばれるクセの無い野草を、瓶からスプーンですくった特製のソースを絡めてパンにサンドする。
干し肉と野草のサンドウィッチと三種のキノコのスープが本日のメニューである。お腹が空いていたこともあり、三人ともすごい勢いでそれを食べ始めた。特にマゴイットは涙を流しながら食べている。
「ほんまうまいわ、あんちゃん料理うまいな」
「ありがとう。それよりマゴイット、君に何があったか話が聞きたいんだけど・・」
「そやな、ほな簡単に話するな」
そう言ってマゴイットは話を始めた。マゴイットと仲間は、ある遺跡の調査をしていて、そこで大変な物を見つけてしまったらしい。それはあるものを復活させる鍵となるものであった。あるものってのはマゴイットにもわからないみたいだけど、そのグランジェという人はそれを知っていたみたい・・そしてその後すぐに、なぜかグランジェに呼び出されたマゴイットは氷漬けにされてあそこに置かれていたという話である。まあ、要はマゴイットには何が何だかわけがわからないということらしい。
「で、それはいつの話なの?」
「それやけど、うちには今がいつなのかわからんからなんとも言えんわ」
そこでファミュが重要な情報を与えてくれる。
「勇者マゴイットは、全能の秘神と同じ時代の人ですから・・確か500年前くらいだと思いますよ」
それを聞いたマゴイットがそれを肯定する。
「まあそやな、アルティはうちの仲間やからよう知っとるで」
「ええええ!! マゴイットってアルティの仲間なの?」
「そや、ていうか日本から一緒にこっちに来たんや、あっちにいるときからの友達やで」
俺は心臓が止まるくらいの驚きで、息が止まりそうになった・・
「マゴイット・・・アルティは今、俺の仲間なんだよ」
「なんやそれ、ほんまかいな! ほんでアルティはどこにおるんや」
「それが・・」
俺は空中城での話をマゴイットに話した・・
「あいつ石になっとるんかい! そりゃ大変や、なんとかせんとな。紋次郎って言うたか、うちも塔の頂上へ行くの手伝うで」
「あ・・ありがとうマゴイット・・助かるよ」
「当たり前やろう、アルティはうちの友達やで」
勇者と呼ばれるほどの冒険者が一緒に来てくれる・・しかもアルティの友達らいいから絶対に強いよね。頼もしい仲間が増えて、すごく嬉しくなってくる。
★
山奥にある古い城の中で、四人の人物がテーブルを囲んで顔を合わしていた。全員、深いフードを被っていて性別もよく分からない。その中の一人が話しを始める。
「エミロとは連絡は取れたのか・・」
「まだのようですよ・・」
「本当にあいつは勝手なことばかりしおって・・」
「これ以上、あのノロマな神獣に任せてはおけないですね、次の者が動き出した方が良いのではないですか」
「まあそう焦るなユリシーズ、まだエミロが失敗したとは決まっていないのだから」
「そうは言っても大冥天の時は後2年もありませんよ、早く準備をしなければ」
「・・確かにそうだな・・・グランジェ、自分の担当分の仕事とは別に、エミロの手伝いをする余裕はあるか」
グランジェと呼ばれた者は口に笑みを浮かべてこう答える。
「俺が動けば少し派手なことになるぞ・・それでもいいならやれなくはない」
「まあ、そろそろそんなことを気にしてる場合じゃなくなってきてるからな、多少派手でも構わん、任せたぞ」
それを聞いたグランジェは大きく笑い始めた。狂ったように笑うその姿を、他の人物は何も言わずに静かに見届けていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます