第127話 空中戦

紋次郎はその下で、高く伸びている大きな植物を見上げていた。植物の太いツタは、表面が加工されているのか階段のようになっていた。その階段は上へと続いていて、ここから4階層へと行けそうである。


紋次郎は植物でできたその階段を登り始める。階段は柔らかい踏みごたえで、ふわふわの絨毯が敷き詰められているような、なんだか不思議な感じである。


階段を上り始めて5分くらいが経過した。丁度半分くらい来たであろうか、下を見ると、恐怖を感じる十分な高さがあった。


それは唐突な攻撃であった。紋次郎の目の前に無数のトゲのようなものが高速で飛んでくる。それは植物の茎に突き刺さる。トゲが飛んできた方向を見ると、植物のような鳥よのような不思議な生き物が無数に飛んでいた。それが紋次郎に向かって一斉にトゲを飛ばしてくる。


紋次郎はすぐに茎の陰に隠れる。無数のトゲが隠れた茎に突き刺さる。茎に刺さったトゲはしばらくすると大爆発を起こした。防御魔法で身を固めて強行突破しようと考えていたが、この爆発に紋次郎の身が持っても、茎の方が耐えれないんじゃないだろうか、茎が倒れるとちょっと困ったことになると思い、紋次郎はあの植物鳥の大群を倒すことにした。すぐに魔法一覧から便利魔法をチョイスする。それはフライと呼ばれる魔法で、空に浮くことができる魔法であった。ただ、体が宙に浮くだけで、自由に空を飛行することはできないのだが・・


しかし、紋次郎はあるアイデアでフライの効果を最大限に生かす。フライを発動した紋次郎は、茎の足場を強く蹴った。宙に浮いている紋次郎は、すごい勢いで植物鳥の大群に突っ込んだ。その通りすがら、剣を振り抜き植物鳥を斬っていく。ある程度のところで植物鳥の一匹を足場にして蹴り飛ばす、その反動を利用してさらに加速と移動を繰り返して植物鳥を攻撃していく。足場にしようとした植物鳥に避けられた時には、目の前に爆発系の魔法を発動してそれを推進力にする。範囲内の敵を攻撃できる上に移動にも使えて一石二鳥であった。


紋次郎はあらかた植物鳥を片付けると、階段へと着地する。そこから上空を見上げると、さっきから倒しまくっている植物鳥とは比べものにならない大きさの植物鳥がゆっくり近づいてきているのが見えた。おそらくあれはこの群れのボスに違いない、そう思った紋次郎はそのボスを倒してこの戦いを終わらせることにした。だけど、雑魚の植物鳥と同じ攻撃方法では、あの大きな敵を一撃で倒すのにはちょっと自信がなかった。もし倒しきれなくて、空中で予想外の攻撃を受けると少し危険ではないかと思った紋次郎は、魔法で遠距離攻撃を行うことにした。すぐに魔法一覧を取り出す。そこに書かれている魔法の中で、今の状況で一番効果のある魔法を選び出した。


「クリムゾン・レイザーブラスト!!」


二本の炎の帯が敵に向かって伸びていく。それは火炎系魔法の最上級魔法であった。攻撃範囲は直線上に限定されるが、その火力、貫通力は超絶なものであった。植物鳥の弱点が火属性なのもその効果に上乗せする。二本の炎の帯は植物鳥の親玉の体を貫通すると、大きな黒い穴を開けた。その穴は燃える炎によって広げられ、やがてその全てを燃やし尽くして灰へと変える。


親玉が焼き尽くされたのを見ると、植物鳥たちは散り散りにどこかへ逃げていく。紋次郎はそれを見届けると、階段を上るのを再開した。


4階層は3階層と同じで、壁などがないだだっ広いフロアーであった。ただ3階層のようなジャングルではなく、大きな岩が転がる平原であった。平原で視界がいいので、フロアーの全体が見渡せる。巨大な敵の姿もなく、比較的安全そうに見えたので、ここで少し休憩を取ることにした。ダンジョン内では時間の感覚が失われ、気が付けば想像以上の疲労が貯まっていることがある。意識的に休憩をするのは良いことであった。


少し仮眠をとりたいのだけど、さすがに一人でそんなことをするのは自殺行為である。方法がないか考えた紋次郎は、目の前の岩を見て何やら思いついた。


魔法の一覧からゴーレムの生成を見る。それは呪文だけでゴーレムを生成できる、最上級の生成魔法であった。材料があれば触媒も必要ない便利な魔法なのだが、膨大な魔力が必要な為に、これを使用できる術者は限られていた。


「アドベント・ゴーレム!」


目の前の岩の塊がウニョウニョと動き出し、巨人の形へと変化していく。岩でできたゴーレムが、紋次郎に跪く。


「よし! ゴーレム・・いや・・せっかくなので名前をつけようかな、そうだなゴーレムだからゴン太がいいかな。それじゃあ、ゴン太、今から休むからその間俺を守っててくれるかい」


グオォォと唸り声をあげてゴン太は返事をする。その姿を見て安心した紋次郎は毛布にくるまり、すぐに眠りについた。


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