第126話 塔での戦い

紋次郎は上へ行く階段を探してフロアーを歩いていた。しばらく歩き回ると、少し広い部屋へと出た。そこから三方向に道が続いていて、その一つを進んでいった。


その通路の途中で、通路を塞ぐ丸い物体に遭遇する。丸い物体は、紋次郎を見つけると、ジュジュと変な音をさせながら動き始める。丸い体から足と手が飛び出してきて、最後に亀のような頭が飛び出してきた。そして、そのモンズターはずんぐりむっくりな体からは想像できないような速さでこちらに襲いかかってくる。


すぐに紋次郎は剣を構えた。そして敵が近づくのに合わせて、剣を振り抜く。包丁で豆腐を切るように、何の抵抗もなくそのモンズターを真っ二つに切り裂いた。一階層の敵だから手応えがないと紋次郎は感じていたが、実はこのモンスターはマルムダインと呼ばれる英雄級冒険者さえ震え上がる強力な魔獣であった。それほど紋次郎の戦闘力は飛躍的に上昇していたのである。


その後、赤い巨大な蛇や二首の巨人などが襲いかかってきたが、紋次郎はそれも簡単に撃退する。これは楽に頂上までいけるんじゃないかと甘い考えが浮かんでくるが、すぐにそんなわけないと身を引き締めた。


紋次郎は2階への階段を見つけ、すぐに上へと歩みを進める。2階の構造は1階とほとんど変化がなく、現れるモンスターも特に強さを感じず楽に撃破していった。そのままフラフラと探索していると、すぐに3階への階段を見つけ、上へと上がっていく。


ここまで特に緊張のない感じで進んできたが、3階は雰囲気が今までと少し違っていた。そこはジャングルのようなフロアーが広がる特殊な構造になっていた。1、2階と違って壁などがないので、かなりだだっ広い空間が広がっている。その特徴から考えても下にはいなかったような超巨大なモンスターが出現してもおかしくないように感じる。


その紋次郎の嫌な予想はすぐに的中する。ドスンドスンと間違いなくかなりの重量を持つ何かが紋次郎に近づいてきていた。しかし、ジャングルの木々によってその敵の姿を確認することができない。だがその音は、確実に紋次郎に近づいていた。


相手の状況がわからないのは危険である。紋次郎は魔法リストから、便利で万能の防御魔法をチョイスしてそれを唱える。オーディンシールド、唱えた術者を万能のバリアで保護する強力な防御魔法である。消費魔力が高く、術者一人にしか効果がないので、一般的にはあまり使われていない防御魔法ではあるが、紋次郎の今の環境ではこれ以上ないくらいに最善の魔法であった。


オーディンシールドの効果は、すぐに見ることができた。このフロアーの天井部分には強烈な光を発する苔がびっしと生えていて、それがフロアー全体を昼のような光で照らしているのだが、何かが紋次郎の周りの光を遮断した。そして次の瞬間大きな音とともに、何か巨大なものが頭上から落ちてきた。不意のことで、それを避けることができなかった紋次郎は、まともにその大きな物体に押しつぶされる。


紋次郎を押しつぶした物の正体は大きな足であった。体長50mはあるであろう恐竜のようなモンスターの前足である。このフロアーの地面は、土が敷き詰められていて、紋次郎はそこにめり込んでいた。だけど、オーディンシールドの効果で紋次郎にはダメージはほとんどない。


巨大な恐竜は、さらにもう一度、縄張りへの侵入者をその足で踏み潰そうと足を上げる。その隙を見て紋次郎はそこから転がり出てきた。そして高くジャンプすると、恐竜の背中に飛び移った。恐竜は長い首をぐるりと回し、背中にいる紋次郎を見ると、口から炎を吐き出した。しかし、オーディンシールドのバリアが、その炎を防ぐ。紋次郎はさらに恐竜の背中からジャンプすると、その炎を吐いている頭に向かって剣を振り下ろした。紋次郎の剣は、恐竜の頭だけではなく、衝撃波によってその巨大な体も真っ二つに切り裂いた。山が崩れ落ちるような大きな音がフロアーを響き渡り、恐竜は崩れ落ちる。


推定レベル230のマグニドザウルスも、今の紋次郎の敵ではなかった。だが、そんな強敵をさらりと倒したことなど、倒した本人は全く理解していなかった。今のところ、楽な相手ばかりで助かるとすら思っていたのだ。


先ほど恐竜の背中に乗った時に、周りを見渡したのだけど、少し先に、天井に向かって長くて太い植物の茎のようなものが伸びているのを見つけた。他に上に行くようなものがなかったので、おそらく、そこから上の階層に行けるんじゃないのかと考えた。紋次郎はすぐにその方向へ向かって歩みを進める。



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