第125話 出発の前に
宿は、以前エラスラに来た時に泊まった同じ宿に部屋を取った。色々動き回るのもあれなので、食事は宿の一階で済ませて、すぐに風呂に入る。風呂に入っている時に、ランティーク邸であったように、ルアッカさんが裸で入ってくるかと思ったけど、さすがに自重したのか、俺に安らぎの時間をくれた。
風呂から上がり、部屋に戻るとすぐに寝ることにした。明日からは睡眠時間も取れるか微妙な冒険に出発するので、今日はぐっすりと眠りたかった。だけど・・眠りにつこうとした俺の布団の中でモソモソと何かが動く。俺は勢いよく布団をどかした。そこには裸で丸くなっているルアッカさんの姿があった。
「ちょ・・ルアッカさん、何やってるんですか!」
「いえ、ちょっとご奉仕をさせていただこうかと・・」
「必要ないです! 今日は早く寝たいので自分の部屋に戻ってください!」
紋次郎に怒られたルアッカは、すごすごと服を着て部屋を出て行った。大事な仲間が石になっているこの状況では、さすがにそんな変な気分になることもなかった。紋次郎は、ルアッカが出て行った扉に鍵をかけて、布団に入る。そして深い眠りへとついたのである。
次の朝、ルアッカが少し気まずそうに俺を起こしに来た。
「ルアッカさん、おはよう」
「・・おはようございます、紋次郎どの・・・昨日はその・・すみませんでした」
「いえいえ、こちらこそ怒鳴ってしまってすみません」
そのあと、宿屋の一階で二人で朝食を食べた。メニューはフェカと呼ばれる丸いパンのようなものと、目玉焼きとベーコンのような加工された肉を焼いたもの、それと5種の野菜のサラダと芋汁のスープと中々ボリュームがあった。塔の中では中々食事が取れない可能性もあるので、朝はしっかりと食べておきたかったので丁度良い。
食事が終わると、俺は荷物を担いで塔の入り口に向かった。ルアッカさんはその入り口まで付いてきてくれた。
「紋次郎どの、ここは天然ダンジョンですから命を大切にしてください。危なくなったらすぐに引き上げてきてくださいよ」
「ルアッカさん、ありがとうございます。俺は絶対に無事に帰ってきますよ」
俺は塔の外階段を上がり、大きな扉の前にやってきた。扉の両脇には二人の兵士が立っていて、扉を守っているようである。その兵士の一人が俺に話しかけてきた。
「止まれ、お前は冒険者か? エラスラの塔に何の用だ」
俺は正直に用件を伝える。
「この塔の頂上に用があるので入らせてもらいたいのですが・・」
それを聞いた兵士は一瞬動きが止まる。そして言葉の内容を理解したのか、もう一人の兵士と同時に大笑いし始めた。
「ガハハハッ、この塔の頂上に行くだって? なんの冗談だよ、そんなの無理に決まってるだろうが」
「そもそもお前一人で行くのか? 仲間はどうした、頂上に行くんだったら200人くらい仲間を連れて行かないと無理だぞ」
「馬鹿、200人で足りるわけないだろうが、俺は1000人は必要だと思うぜ、ガハハハッ」
何が面白いのか、二人は大げさに笑い転げている。
「で、ここを通っていいですか?」
俺が真顔で問うと、ニコニコと笑いながら兵士が答える。
「まあ、通って構わんが、ここで死んでも誰も助けてくれないぞ、それを覚悟の上であればさっさと通るがいい」
「それじゃあ、通らせてもらいます」
そう言って俺は扉を開けて中に入っていった。後ろからは二人の兵士の笑い声がまだ続いていた。
エラスラの塔に入ると、俺はニャン太のあの言葉を思い出す。
「そういえば神の寵愛を受けていると、どこでも祝福を受けれるって言ってたよな」
天空の騎士も倒したし、神獣エミロも結果俺が倒したし、もしかしたらレベルが上がっているかも・・そう思って祝福を受けてみることにした。
心の中で、女神ラミュシャに祈りを捧げる。体の奥から何かジンワリと暖かいものが広がってくる。その暖かい温もりが、体全体に広がると、生まれ変わったようなすっきりとした感覚を感じる。
俺は魔法の一覧をメモした紙を見て、呪文を唱える。
「
目の前に幾つかの文字列と数字が並ぶ、これは便利な魔法として、魔法博士に教えてもらったもので、自分のレベルやスキルなどを確認できる魔法であった。
「え・・と、レベルが・・嘘・・82にあがってる!! スキルも幾つか覚えてるみたいだけど・・ちょっと文字が難しくて読めないや・・」
レベル82、ステータスではレベル246相当ってことだよな・・これって中々強いんじゃないだろうか・・しかもこのゴット級の剣もあるし、俺は塔の頂上への道筋に希望が見えてきたような気がしてきた。
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