第115話 神獣エミロ
すごい勢いで空中城の中へ吸い込まれた俺とニャン太は、おそらく空中城の内部のどこかと思われる場所へと運ばれていた。
「大丈夫か、紋次郎」
「大丈夫だよ、ニャン太は怪我ない?」
「問題ないよ」
とりあえず俺は周りを見渡してみる。そこは、なんかSF映画に出てくる宇宙船の内部のような機械的な部屋で、ものすごく広い空間であった。目で部屋の細部を見て、出口を探してみる。だけどパッと見てそれらしい扉などは見当たらなかった。
俺が太いパイプのようなものをまたいで、先に進もうとした時に、後ろからニャン太が大きな声をかけてきた。
「紋次郎! 気をつけて何か来る」
目の前に、白い光が飛んできて破裂する。何者かが俺に向けて攻撃を仕掛けてきたようだ。それをニャン太が防いでくれた。
「今の一撃で、その人間が死んでくれるとすごく助かったんだけど、さすがに君が邪魔するよね、フェルキー」
ニャン太がその声を聞いて、俺を守るように前へ出てくる。
「聞き覚えのある声だね、姿を見せたらどうだいエミロ」
ニャン太のその言葉に、深くローブを被った人物が姿を見せた。その者はなぜか両手に籠を持っていた。それを見たニャン太が、俺にもわかるくらいの強い気を、その者へ放った。空気が揺れる衝撃波が部屋全体に響き渡り、その人物のローブを吹き飛ばす。そこに現れたのはノッペラな人形であった。その人形は持っている籠を落として崩れ落ちた。手足がバラバラになったその人形の持っていた籠から、小さな影が飛び出してくる。
「何するんだよフェルキー、私の人形が壊れちゃったじゃないか」
「僕は姿を見せろといったんだよエミロ、そんな操り人形に用はないよ」
「まあいいけどね、私の姿を知っている君に偽りの姿を見せても仕方ないからね」
すごく真剣な顔をしてニャン太は、エミロと呼んでいる小動物・・そうニャン太の姿に似ているその者に問いただす。
「エミロ、君にいくつか質問があるんだけどいいかい」
「どんな質問だね、言ってごらんフェルキー」
「まず、橋を壊して、僕たちを襲った理由はなんだい?」
「私の欲しいものを君たちが持っているからだよ、それが欲しくてね、悪いけど実力行使に出させてもらった」
「その欲しいものってのはなんだい?」
「マグル紙片、それとフブの結晶石かな」
「そんなの何に使うんだい?」
「悪いけどそれは言えないね」
「君たちはそもそも何が目的なんだ?」
「それも言えない、さっきの質問と同じ答えだからね」
ニャン太はエミロの返答から一つの答えを導き出した。
「エミロ・・君が言えないなんて言う答え・・そんなに多くはないよね・・まさか邪神降臨の・・・」
エミロは厳しい顔でニャン太のその話を止める。
「やめろフェルキー! それ以上その話をするな!」
ニャン太が鋭い顔でエミロを睨みつける。
「エミロ・・・どうやら僕は全力で君を止めないといけないようだね・・」
ニャン太の気がどんどん上昇していく。周りの空気が震え、空中城自体が揺れているような振動が響き渡る。それに対して、エミロも同じように気を上昇させていく。二つの大きな力が部屋の中心でぶつかり、バチバチと火花を生む。
エミロは準備が整ったのか、人には理解できない言葉で何やら唱え、禍々しい何かを発動する。攻撃態勢に入っていたニャン太は、エミロのその行動を見て驚愕する。
「エミロ! まさか君は・・・」
一瞬対応の遅れたニャン太に、エミロが鋭い声をかける。
「フェルキー! 早くしないと君の大事な友達も消し飛ぶぞ!」
「くっ・・・」
そう言ってニャン太は、エミロと同じように、何やら禍々しい気を発動した。それはお互いに惹かれあい、その禍々しい気で、エミロとニャン太がつながる。
「ニャン太、どうしたの?」
「紋次郎、すまない、僕はしばらく身動きが取れなくなった。僕とエミロは反響共鳴のシンクロ状態でつながった。エミロは神力の暴走爆発を起こそうとしたんだ。それを抑え込むにはエミロとシンクロ状態になって同じ波長の神力を放出する必要があったんだ。この状態ではほとんど何もできない。多分エミロの狙いは僕の動きを封じることだと思うから、何かくる! 気をつけて紋次郎!」
「え! そんなこと言われても・・」
ニャン太の予想は当たっていた。部屋の奥から何やら大きな影がゆっくり近づいてくる。それは4mほどの大きさの全身鎧の騎士であった。ニャン太にはその騎士に見覚えがあった。
「天空の騎士・・ラピュセルの失われた門兵じゃないか・・まずい、紋次郎逃げるんだ! 君じゃ勝ち目がない!」
「逃げるって・・どこにだよニャン太、それに君は動けないんだろう? 俺が逃げたらあれに殺られちゃうんじゃないのか」
「僕のことは諦めろ、逃げてみんなと合流するんだ。全員で力を合わせればエミロにもきっと勝てる・・・」
「そんなの嫌だよ・・・ニャン太を諦めるなんてできない・・」
紋次郎は閃光丸改を強く握りしめる。そして迫り来る巨大な騎士に、ゆっくり歩み寄っていった。
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