1-3
「―ちょっと光重、起きてちょうだい!」
母さんに背中を揺すられる。せっかく気持ち良く寝ていたのに……。
「もうちょい寝かせて…」
「大変よ!ユウスケ君バイクで事故起こしたんだって。光重が帰ってるってユウスケ君のお母さんが思い出して連絡してくれたのよ。三時間くらい前に市立病院に運ばれたって」
「えっ…」
眠気が一気に吹き飛んだ。がばりと起き上がる。
「市立病院って、駅の先の?」
「そうよ。お母さんも行った方がいいかしら」
「準備、時間掛かるだろ?先に行ってる」
そう言うや否や、俺は家を飛び出した。
俺が病院に到着して、母さんも追いついてから三十分程経って、ユウスケが手術室から運ばれ、集中治療室に移された。ベッドに横たわるユウスケは、包帯やギプスだらけで、痛々しかった。怪我の処置は出来るだけ施したらしいが…意識がまだ戻らないと聞いた。一定の間隔で反応する心電図の電子音と、呼吸器から漏れる息づかいで何とか生存を確認できる有様だ。母さんはユウスケのお母さんに挨拶して、先に帰った。
「光重君、来てくれてありがとうね…。あの子ったら、光重君に今日会うんだって嬉しそうにバイクで出掛けていったのに…急いでいたから曲がりきれなかったのね、カーブでスリップしたらしいの…それで」
ユウスケのお母さんは少し涙ぐんで言った。
「あの…ユウスケ、大丈夫なんでしょうか」
「わからない。でも…大丈夫、って思わないと」
「はい……。そういえば、ユウスケからタイムカプセルを埋めた場所を聞いていますか」
気になったのだ。
それだけユウスケは楽しみにしていたのに事故に遭ってしまった。なんでそんなに急いでたのか。それは…今日がタイムカプセルを掘り起こす日だから。タイムカプセルを掘り起こすのは明日でいいかなんて俺は思っていたけど、ユウスケはそうじゃなかった。今日タイムカプセルを開けなきゃいけないんだ。
本当はユウスケもその場に立ち会いたいだろう。
だからといって先延ばしにして今日開けないとそれはそれで、きっとユウスケはがっかりする。それに、タイムカプセルを俺が持ってくれば、ユウスケの意識が戻りそうな気がしたのだ。
気休めかもしれないけど。
「…いえ、知らないわ」
ごめんなさいね、とユウスケのお母さんは申し訳なさそうに答えた。
「そうですか。また見舞いに来ます」
「本当にありがとう」
「失礼します」
俺は病室を後にした。
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