1-2

「ただいま」

「あらおかえり、光重」

 よく帰ってきたわねと、母さんが俺をねぎらった。

「ユウスケから連絡無い?」

「あら、無いわね。光重お昼、食べてないでしょ。今ちょうど作ってたから、食べる?」

 そういえば、空腹だった。イライラはそれも含まれていたのかもしれない。

「食べる」

 俺はそう答えて、荷物を自室へ置きに行った。


 昼食を摂りながら近状を母さんに話し、食べ終えると移動の疲れか眠くなってきた。

「ちょっと昼寝する。ユウスケから連絡あったら起こして」

「わかったわ。寝過ぎちゃだめよ」

「はいはい」

 と生返事を返しながら、自分の部屋がある二階に上がり、ベッドに潜り込む。


 タイムカプセルか…。


 ユウスケが提案するまですっかり忘れていた。


 小学三年生の春休みだ。

 二人で映画を見に行って、その映画のワンシーンにタイムカプセルを埋める、というくだりがあった。俺らは、特にユウスケがその映画に感化されてしまって(小学生にはよくあることだ)、タイムカプセルを埋めに行ったんだっけ。

 どこだったっけか。

 場所を忘れたと言ったら、ユウスケが憶えているから心配ないと言っていたから、任せていたんだが。当のユウスケが遅れるなんて、責任感が足らないなあ。

 まぁ…明日でもいいか。

 そこまで考えて、俺は寝る事に専念した。

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