すれ違いネコ。
月野のどか
プロローグ
高校生になって少し経った、5月ごろのことだった。
僕は、入学してからだいぶ慣れてきた通学路を通り、ただ家に向かって歩いていた。
そのとき、見つけてしまったんだ。
段ボールに入った小さな小さな子猫を。
……捨て猫、か。かわいそうに。
まだ生後間もないような可愛らしい子猫。茶色い綺麗な毛に、真っ黒い瞳と短い尻尾。こんな猫が、マジックで太く『拾ってください』と書かれた段ボールに入れられている。
朝はこんな猫いなかったし、段ボールも新しく毛も綺麗だときたら、僕が学校に行ってる間に捨てられたんだろうな。絶対。
マジックの文字に従って拾ってあげられたら一番なのだけれど、あいにく僕の家はペット禁止のアパートだからそうにもいかない。
……うーん。
「かわいそうって言ったら、君は怒るかな?」
この路地は人通りが全くと言って無い狭い道だから、誰かに聞かれる心配もなく僕は猫に話しかけた。
なんとなく、とりあえず、話しかけた、と、思う。
子猫は、言葉を理解できるはずもなく、ただ「にゃあ」と言いながらそっぽを向いた。
「……!」
そんな姿を見てしまったものだから、僕はその日から、この猫がいるこの場所へと通うことになる。
どうしてそうなったのかは……まだ秘密ってことにしておく。
すれ違いネコ。 月野のどか @takara_bako
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