1.主人公の流儀~引き立たせること、引き立つこと~

  まず、『けもフレ』の主人公であるかばんと、『まどマギ』の主人公であるまどかについて分析していきます。

 二人とも、周りを彩るキャラクターに比べて、ちょっとパンチの弱い、悪く言えば無難なキャラ設定です。


 かばんについては、個性豊かなフレンズを際立たせるために、ちょっと地味めな服装をしているのだと考えられます。

 当初は自分が何者であるかもわからず、しまいには「何もできない」とまで冗談交じりに言われてしまうかばん。

 しかし、サーバルとの旅の中で多くのフレンズに巡り合い、「考える」という能力を発揮し、彼らを助けることになります。多くのフレンズみたいに、目に見えるようなすごいことをする訳ではない。しかし、自分は自分にしかない力で、そんなフレンズを助けることができる。そして、「自分はこういうフレンズだ」というアイデンティティを獲得することになります。


 これは幼児期、少年期に遊びなどを通して自己肯定を身につけていくプロセスです。巷では、『けものフレンズ』の過剰摂取によってオタクの精神年齢と語彙力が低下した、などとささやかれていますが、オタクなんて人格形成に失敗した、ただのひねくれもの(経験則)なので、いっそ今すぐ小学校に入りなおしたほうがいいかもしれない、と思います。


 閑話休題。


 そして終盤にさしかかり、かばんは「ヒト」のフレンズであることが判明します。それを喜ぶ暇もなく、『けもフレ』の舞台であるジャパリパークに生息する怪物、セルリアンが強大化し、災いを起こします。

 かつてヒトが管理していたジャパリパーク。その責任感ゆえか、ただ単純に「フレンズ」を守るためか。かばんはフレンズと共に、その災厄に立ち向かいます。


 『まどマギ』の主人公、鹿目まどかは、ちょっと鈍くさいけど温厚で、「魔法少女」という存在にほのかな憧れを抱いている女の子。勝ち気で意外と恋愛に敏感な美樹さやか、ザ・お嬢様の志筑仁美と平和な日々を送っています。

 この世界に巣食う魔女という邪悪な存在。まどかはひょんなことから、そんな魔女に遭遇してしまいました。

 それをきっかけに、彼女は魔女と、それを狩る魔法少女の戦いの世界に身を投じることになります。

 彼女の思い描いたものとは異なる、凄惨を極める魔法少女の戦い。魔法少女たちが願いから生まれ、戦い、散っていく様を、まどかは隣で見届けていきます。そして、彼女もまた――。


 二人の共通点は、『パンチが弱い』『実は世界に関わる重要な役割を担っている』ということでしょう。

 かばんは、ジャパリパークを管理していた「ヒト」のフレンズであり、まどかは、とある人物の行動によってとてつもない力を秘めてしまった女の子です。しかし、それが判明するまでは彼女達は「何の特殊能力もない一般人」として、つまり我々の視点のキャラとして、アクの強いキャラクターたちを引き立たせています。そして、最後には主人公として、他のキャラにはない特異性をもって引き立つのです。

 総括すると、ナンバーワンよりなんとやら、ということです。物語の主人公を設定するときは、このことを考えていきたいと思います。

 

 

 

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