第10話 綺羅姫燐火

「お前の妹、桐谷葵は第三世代、氷の災厄とまで言われた存在、呪われた血の女王ブラット・オブ・クイーンの転生能力者じゃないのか?」


 錬太郎が言ったその言葉に零機は一瞬動けなかった。それほどに驚くことだからである。もちろん零機はそのことを知っていた。そのために国側に居る桐谷家の長女、桐谷葵は東雲監察の研究所に監禁されているのだから。


「……本当に君はすごいね錬太郎。その通りだよ、まあこの事実を知っているのは僕ら桐谷とその従者一家、国の上層部と東雲の上層部くらいなんだけどな。僕の妹、桐谷葵についてはどれくらい調べた?それに、燐火のことも説明しろ」


 零機は少し声のトーンを落とし愛理に聞いた。自然と声が落ちるほど零機にとって葵の存在は大きい。


「私もそのことはちょっと不思議だったからそれなりに調べたわ。でも、私がハッキングを仕掛けても厳重にブロックされちゃって。国指定の重要案件ってAI(人工知能)にも答えられたわよ」


 それもそうだろう。第三世代とは、新人類の中でも何人いるかわからないといわれている。今のところ世界に発表されているのは二百人たらずだ。その中の転生能力者となると、それは希少価値以外の何者でもない。転生能力者とは、過去の時代、まだ魔法が作られておらず他種族との戦争の真っ只中、人間の中にも魔術が使える人間が出始めてらしい。そのなかでも、七人の超能力者が居たという。その人間の扱う魔術は全くの桁違いで、戦争の中でも個人で軍事兵器として扱われていたようだ。


「まあそうだろうな。でも、愛理、国のサイバーネットワークにハッキングって喧嘩売ってるみたいなもんじゃないか。よく大丈夫だったな。それにハッキング技術もそれって君も大概だね」

「褒めてくれてありがとう」

「半分は皮肉だけどね」


 国のサイバーネットワークはAIで管理されてる。今は人員が少ないので、高い技術を使って人工知能がいろいろなことを行っている。そこにハッングするのは人工知能を超える対応が必要だ。


「錬太郎、君はどこまで調べた?」

「いや、燐火皇女のことについては調べたが、今のは愛理に聞いたことから推察しただけだ。だから調べてはいない」

「余計にすごいね。君は軍の参謀の素質があるよ。なら皇女について教えてくれないかな?」

「わかった。ここに資料がある。見てくれ」


 錬太郎はスクリーン型情報デバイスを展開し、零機に投げる。零機はそれを受け取り、読み始める。


「綺羅姫燐火、三千年生誕。五歳ごろから体に異常が現れる。具体的には、彼女の触ったものが高温になる、火花がでるなどだった。七歳になったその日に、その変化は飛躍し、手から炎を出すまでになった。その現象はどれも皇女が血を流した時にのみ発動した。それからは国の最高位重要機密として扱われ、王宮近くの塔に軟禁される。国の間で研究は進められ、綺羅姫燐火は紅の業火、呪われた血のプリンセス・ザ・ブラッドであることが判明。日本の持つ最大の封印術式を刻むことによって力を制御している。

 ここからは追記になっている。昨日くらいに書かれたものみたいだ。えっと、

その綺羅姫燐火の最大封印術式が書き換えられた。その術式を辿っていくと、術式の帰還先は―」


 零機が驚いた顔をしながら最後に一文を読み上げる。


「桐谷零機現上等兵、伝説上の本来存在しない者、第十三始祖に帰結する」

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