第3話 入学Ⅲ

「引き続いて、新入生総代――冬川凛」

 その声を受け、一人の女子生徒が壇上へ。肩ほどまである髪が揺れるたび、黒いダイヤモンドのように会場中の光を取り込み光り輝く。そして遠くからも美少女であることをうかがわせる雰囲気をまとっているのがわかる。

「春の穏やかな日差しの中、桜の花びらが美しく舞う今日の佳き日に、緑坂高校に入学できたことを心よりうれしく思い――」

「中学にはいなかったよね、外部生かな」

 交友関係の広かった晴人が知らないのであれば、おそらく外部の中学から来たのだろう。

「いかにも新入生総代って感じだよね。」

 確かに周りを見渡せば、彼女の話を好きな音楽のように熱心に聞いているように見える。まるでライブ会場みたいだな。……行ったことはないが。

「――新入生総代、冬川凛」

 彼女の声が体育館の空気に余韻を残していく。

――このとき俺は彼女を単なる一生徒としてしか捉えていなかった。特に彼女みたいに誰からも好かれるようなタイプの人間とは無縁の人生をこれまで送ってきたものだから、なおさらかかわりはないだろうと。その予想が裏切られるのはもう少し先のことである。

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