第4話 入学Ⅳ
入学式の後、クラスが発表された。俺が三組、晴人が四組だった。一学年八クラスあるので、同じクラスになることはないだろうという、このときの俺の予想は的中した。
三組の前で晴人と別れ、教室に入る。顔を知っている奴が何人かいたが、向こうから声を掛けてくるようなやつはいない。むろん俺から声を掛けるようなことはしない。
俺は近くにある空席――廊下側の窓に面した、前から四番目の席に腰を下ろした後、鞄から読みかけの文庫本を取り出して読み始める。その後しばらく本の世界に入っていたものだから、掛けられた声への反応が遅れてしまった。それに俺に話しかけるような奴がいるとも思っていなかったのである。
「――おーい、おい」
声のする方へ顔を向けると、一人の男子が親しげな視線を送ってくる。
「隣の席、座ってもいいかな?」
こいつは知っている。いくら顔の広さが猫の額ほどしかない俺でも知っている。中学では、学年のアイドル的存在だった、風間隼人だ。誰に対しても隔てなく接し、勉強・スポーツ共に優秀――スーパー超人ともいえる生徒だ。おそらくは、俺が教室にあまりなじめていなさそうな様子を感じ取って、声を掛けてきたのだろう。
「古川と一緒のクラスになるの初めてだよな。よろしくな」
春風のように爽やかな笑顔を向けてくる。俺は何も読み取らせないような声色で返事する。
「ああ」
風間は柔らかい微笑を浮かべたかと思うと、じゃあまたな、と言い残し、自らを取り巻く生徒たちの輪に戻っていった。
そして俺は再び小説の世界にもぐりこんだ。
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