詳しく書くとネタバレになってしまうので、そこは割愛する。この話は正統派である。簡単に言ってしまえば、話を読み進める上での裏切りが存在しない。「この先どうなるんだろう」という期待を裏切らない、洗練された文章構成となっている。スープの魅力に取り憑かれた登場人物達。そしてスープに隠された真実。それを是非「味わって」貰いたい。
彼は、世の料理のすべてを知り尽くし、名実ともに世界最高の料理人となっていた。その彼のもとに、一つのサンプルが送り付けられる。それは一口のスープであり、それを口にした途端、彼の人生は方向づけられた。その至高のスープへと。このスープを取り巻く人々の熱狂と狂気、そしてこのスープ自体の尊さと禍々しさ。それらが混然一体となって、スープに溶け込む。貴方も、このスープを一口味わってみませんか?
食虫植物を連想しました。犠牲者がある意味幸せそうなのがまた恐怖を誘います。
ネタバレを含みます。ご注意下さい。熱中し過ぎておかしくなる話、依存とも言えるかもしれません。僕は麻薬を連想しました。最後の終わりが狂気と言えるような状態に陥っているのが、さらにそれを裏付けます。職人よりは研究者や芸術家に近いのかもしれない、という偏見を抱きました。
たった一口の試食が、最高峰の料理人を自負する主人公を虜にします。 あれをもう一度口にしたい。 材料は何か、どのように作られているのか。 そしてそのスープを超えるものを作ってみせる! 欲望と野望を胸に、招かれた施設で主人公の見たものは? 異色&異食グルメ短編。 美味しそうなスープの描写に、思わず読者の胃も反応することでしょう。 まさに身も心もとろかせるスープなのです。