第9話-琴子-

取り調べを受けた夜、わたしと裕太は地元の居酒屋で落ち合った。

裕太はよぉ、と手を挙げ笑顔を作っているが、少し疲れているように見える。

居酒屋に入って腰掛け、わたしはウーロン茶を、裕太はビールを頼み、ちょっとしたおつまみもいくつか頼んだ。

「琴子、おつかれさま。その…大丈夫だったか?変なこと聞かれたりとか、体調崩したりしなかった?」

「大丈夫、体調も、平気…だけど………裕太は圭の遺体、みた?」

「…いや、みてないな。琴子はみたのか?」

「うん…本当に、植物園みたいにお風呂場がなってて、不謹慎だけど、圭らしいと思ったし、ただ眠っているだけみたいに綺麗で。」

そっか、と裕太は届いたビールをぐっと呑む。

正直、圭の遺体は酷かった。しかも、圭は溺死……お兄ちゃんと同じ死因。やはり何か関係があるのだろうか。

「お兄ちゃんのことと何か関係あると思う?」

んー、と考える裕太。

でも、裕太がわかるわけないか。圭ほど、仲が良かったわけじゃない。

「やっぱり、わからないよね、ごめん…そういえば、圭の遺体には、クビにアイビーがまかれてたりしたんだけど、花言葉とか関係あるのかな。それとも、圭がただ好みでやっていただけなのかな?」

「花言葉?…あいつなら、考えそうなことだな」

裕太が、調べてやるよ、と携帯でアイビーを調べる。花ではないのに、花言葉があるのかな、とも思うけれど…

「アイビーの花言葉は、「永遠の愛」「友情」「不滅」「結婚」「誠実」……」

「どうしたの?」

「…あとは、「死んでも離れない」」

「死んでも、離れない………もしその意味であっているとするなら、何に対して?」

「…蓮のことじゃないのか?」

死んでも離れない。

確かに、圭が死んで、もし、あの世があるのなら、またお兄ちゃんに会えるかもしれない。だから、離れない。けど…

「お兄ちゃんの??でも………それに、なんで13年も経った今?」

「何か、特別な歳か?21歳って。」

21歳に、特別なこと…?

何か、あったっけ……

そういえば、前に掘り起こしたタイムカプセル、お兄ちゃんのは申し訳なくて、まだ読まずに、お兄ちゃんの部屋にしまったのだ。

読んでみよう。

「心当たりはないけど、わたしも探してみるね。」

「俺も探してみる。…圭ほど仲良くはなかったけど…」

「ありがと、裕太。今日は疲れたし、もう家に帰ろうか。」

「そうだな。帰ろう。」

そして私たちは居酒屋を出て、裕太は家までわたしを送ってくれた。

家の階段を上り、お兄ちゃんの部屋に入って、タイムカプセルの中身を引き出しから取り出す。

21。一体何が?

私の知らなかった兄を、今から見るのだという緊張と、ワクワクが沸き起こって、外の光がうっすらと入る部屋の中、私は手紙を開いた。

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