第8話-裕太-

琴子が取り調べを受けている時、俺も同時に取り調べを受けていた。

背丈は圭と同じくらいで平均的、少し太り気味の刑事、塚田が俺に座るように促すと、自分も座って手帳を開き、確認する。

「さっそくですが、まずあなたは木原さんが亡くなった日、その時間に、どこに?」

「俺は自宅にいました。弟とゲームをしてたので。それは弟が証人になってくれるはずです。」

高田刑事はそうですか、と答え少し考えてから言った。

「前の日はどこへ?」

「もちろん、大学です。平日で、きっちり7限まであったので。それもまた、友達がわかっているはずです。」

「夜は?」

「夜?夜は自宅に戻って課題を進めました。その時も家族が家にいたので。」

「そうですか。木原さんと最後に会ったのはいつです?」

圭と最後に会った日……

『話したいことがある、今度会えないか?』そう俺に言ってきたのは圭だった。あの連絡からしばらく時間が経ったんだよな…

「…4日ほど、前だったと思います。圭が会いたいと言うので、話をしに、圭の花屋へ。」

「内容を教えていただいても?」

「……他愛もないことでした、向こうの俺への話っていうのは、琴子が誕生日だったんで、サプライズでなにかやらないかって話で、結局話しているうちに逸れて、蓮の話になったりとか。あ、蓮は琴子の兄貴の名前です。13年前に事故で。」

ほう、と塚田刑事は頭を掻いた。

正直、俺を疑っているんだろうが、俺は何もしてないんだ、疑われる義理もない。

「木原さんに、恨みを抱くような人は?」

「俺心当たりありません。……圭は殺されたんですか?」

「捜査中ですので、なんとも言えません。…蓮さんのことは、なにを?」

「なんでそんなこと?」

「お願いします。」

「……蓮はいいやつだった、俺、憧れてたな。あの時、一緒に帰っていれば無事だったかもしれないのに…というような話です…もういいでしょうか?」

「…わかりました、また後になって思い出したら教えてくださいね。」

そうして俺は警察署を後にした。


……--本当のことなんて言えるわけないだろ?

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