第6話-琴子-
お兄ちゃんのお墓参りから、どれくらい経っただろう。相変わらず裕太の周りには人が集まり、何やら賑やかにやっている。
圭の花屋は最近忙しいらしく、朝から何だか大変そうだが、時間のあるときはお茶に誘ってくれたり、フラワーアレンジメントを教えてくれたりして、いつもの日常に戻った。
そんなある日、レポートを部屋で終わらせ、やっと終わった!とゆったりしていると、救急車やパトカーのけたたましいサイレンが聞こえた。
どこだろう??土曜の昼間、こんな閑静な住宅街で、一体何があったんだろう。…なんだか胸騒ぎがして、外に出て、走ってパトカーが向かった先に行く。そこに着くと、黄色いテープが貼られ、何台ものパトカーが止まってていて、そこは…圭の家だった。
圭の…家………
「圭!!!圭ぃっ!!!!あぁ…なんで……どうしてっ!!圭っ…」
圭の母親、
「琴子!!」
呼ばれた方を見ると、裕太がこちらへと向かって来ていた。
「裕太…これは、なんなの?」
私は、何が起こったか、薄々気づいてはいたが、信じたくなくて、すがるような気持ちで、裕太を見上げた。
「…………圭が、死んだ。…由美子さんが、見つけたんだって。圭の、死体。」
裕太は私とは目を合わせず、遠くを見つめて言った。
なんで、圭が。どうして…
でも圭は、人から恨まれるようなことするはずないし、自殺とか、そんなこともするはずない。昨日だって、一緒にお茶したし、そんなのあるはずない。…強盗などに襲われたのだろうか?
頭が混乱して、訳がわからない。お兄ちゃんが、死んだ時と同じだ。
…しばらくして、由美子さんは警察に事情聴取へ連れていかれ、圭の死体も連れていかれてしまった。
私と裕太は、ただ家の前にずっといるわけにもいかず、今は裕太の家で、2人でとにかく落ち着きを取り戻そうと必死だ。
「圭は…自殺…?それとも…」
私の声は震えていた。冷静になればなるほど、圭が死んだという事実が、現実味を帯びてきたのだ。
「わからない。ただ、俺、パトカーの音で、不思議に思って窓からパトカーを追ってたら、そこ、圭の家で、それで、走って家の前に言ったら、刑事さんと一緒に由美子さん出て来て、どうしたのかきいたら、『圭が、お風呂で…圭が…』って…相当なショックで、全く詳しく聞けなかったけど…風呂場で、死んでたってことだよな…って。」
裕太は当時をゆっくり思い出すように、少しずつ、話だし、うつむき、静かに目を閉じた。
「自殺なのか、他殺なのか、分からないけど…ただ、きっと俺たちにも、警察は話を聞きに来るだろ。そのとき、もう少し、詳しくわかるかもしれない…。」
お風呂場で…。なんでそんなところで…?
なんで圭が……
「…圭も、いなくなっちゃったんだね…」
いつの間にか、私は裕太の腕の中にいて、涙を流していた。
もし、昨日私がもっと違う、何か行動を起こせていたら、圭は死なずに済んだかもしれないのに。
昨日圭と、少し、蓮の話をしていた時、圭がなんだか、凄く悲しそうな瞳で、消えてしまいそうだったから、私は、言ったんだ。
『圭も、裕太も…私たち、ずっと一緒だよね。親友だもん!』
そう、笑って言ったんだ。
そしたら圭も、笑って、うん、と言ってくれた。
そして、こんなことも教えてくれた。
それなのに、圭はいなくなってしまった。
私は、親友失格だ。
そう思いたながら、裕太の背中に手を回し、きつく、抱き締めた。
裕太も応えるように、きつく抱き締めてくれた。
その後、思った通り警察がきて、裕太と私はそれぞれ、署へと向かった。
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