河童の悩み相談室

「はい、こちら河童の悩み相談室です」

「ど、どうも……」

 

「はい。今日はどういったお悩みで?」

「は、はい、えっと、あの、その……」

 

「大丈夫ですよ。緊張しないで、リラァ~ックスリラァ~ックス」

「あ、どうも……。えっと、洋服のことで悩んでるっていうか……」

 

「ああ、緑肌の件ですね」

「えっ、あっ、そうなんですけど……食い気味な……そうなんですけど……」

 

「フフフ、大丈夫。当相談室への悩みの9割が緑肌に関するものですので。私自身、数々の河童さんたちから悩みを伺っては解決してきており、上司からは『キミはまるで歩くファッションコーディネーターだねぇ』と褒められたりで」

「は、はぁ……それって歩くのが普通だと思うんですけど……じゃ、じゃあ質問なんですけど、この緑肌には一体どんな服が似合うのかなって……。ボク、そもそもファッションに疎いのに、その上この緑肌で合わせるのが難し過ぎて……」

 

「なるほど。わかります、非常によく分かりますよその悩み。ちなみに、アナタはどんな服が好きなのかしら?」

「えっ……ちょっと言いづらいんですけど、意外とピンクとかに手をだしちゃったり……」

 

「ダメー!! ピンクは絶対だめ! 眩しい……ああ眩しい……チカチカする……目がチカチカするわ……」

「えっ……そこまで言わなくても……」


「ううん、あえて言わせて貰うわ。ピンクだけはダメー! 目を潰す気か! 結局は人類の敵か!! ファッションに疎いとか言っておきながら上級者気取りかこの妖怪風情が!」

「ひ、ひぃ……! そこまで言わなくても……」


「あっ、ごめんなさい。私ったらつい。不適切な発言があったことを心からお詫び申し上げるわ。でもね、緑肌にピンクだけは絶対やめときなさい。変なベテランの芸人夫婦を目指して無いならやめときなさい」

「わ、わかりました……。目指して無いんでやめときます……」


「それはよかった。さっきの不適切発言も水に流して……いいえ、川に流してくれる?」

「はい。川に流しときます……」


「助かるわ。だって査定に響いたら大変じゃない……。まあ、とにかく、緑肌に一番似合うのはズバリ、ベージュ、白、茶色。とにかく落ち着いた色を着とけば問題無いわ。どんなにシックな服を着ても見映えが良いんだから、羨ましいぐらいよ」

「そ、そうですか? なんか嬉しいなぁ……ははは……」


「でしょ? ちゃんと川に流してくれる?」

「えっ? あ、はい、心配しないでも大丈夫です、必ず川に流しときますので……」


「うん。心から助かる。で、他にも悩みがあるんでしょ?」

「あ、はい。頭に乗せてるお皿の件なんですけど……」」


「ああ、パン祭りで貰った皿だから恥ずかしいんでしょ?」

「ええっ!? な、なんでそれを!?」


「ふふっ、この仕事を何年やってると思ってるの。ちょっと喋っただけでそれぐらい簡単にお見通しよ」

「さ、さすがです……。もう、パン祭りで貰った皿だと、すぐ他の人と被っちゃうのが恥ずかしくて……まあ、本当の意味でいつも被ってるんですけど……」


「うん。そういうの要らないから。っていうか、パン祭りで貰った皿っていちいち言うのまどろっこしいでしょ? パンサイ皿って言いなさい。さあ、早く」

「え、えっ!? パ、パンサイ皿……」


「よろしい。で、パンサイ皿だとありきたり過ぎてみんなと被るから恥ずかしいのね。じゃあ逆に聞くけど、パンサイ皿が割れたりしたことある?」

「あっ……無いです! 欠けたことすら!!」


「でしょ。みんなに配ってるから何となくちゃちいイメージあるけど、実はもの凄くしっかり作られたものなのよ。河童にとって皿は命の次に大事なものでしょ? 割れたらどうなるの?」

「死ぬって言われてます……」


「でしょ。感謝しなさい。パンサイ皿に。さあ、早く」

「あ、ありがとうございます!!」


「よろしい。で、他に悩みは?」

「えっと……とりあえず大丈夫です! おかげさまでもの凄くスッキリしました!」

 

「いいのいいの。それが私の仕事なんだから。じゃあ、また何か悩みごとがあったらいつでも電話してきなさいね。例えば、河童の彼女が何かと言えばキュウリを使ったプレ──」

 

 ガチャ。ツー……ツー……ツー……。


〈了〉

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