レンタル忍者派遣サービス
「はい、こちらレンタル忍者派遣の株式会社ニンパワーズです」
「あっ、えっと、忍者さんをレンタルしたいんですけど……」
「ありがとうございます! では、ご利用にあたって、いくつか質問させて頂きます。まず、当サービスを以前利用されたことはありますか?」
「いえ、初めてです」
「そうですか。ちなみに、当サービスはどちらでお知りになったのか教えてもらえますでしょうか? 場合によっては特典も発生いたしますので」
「はぁ、えっと確か週刊少年誌の広告だったような……」
「えっと、それですと残念ながら特典の方は……」
「あっ、いや、ネットですネット。バナー広告で見て」
「あっ、それなら<ネットで知ってお得キャンペーン>が適用されます」
「えっ、それは良かった」
「はい。では、入会金無料ということで」
「それは嬉しい。って、入会金なんて必要だったんだ」
「はい、もちろん。通常ですと入会金12万円を頂くことになっております」
「えっ!? たかっ!! メチャメチャお得じゃないですか。ネッ得キャンペーン」
「ありがとうございます。お客様ファーストでやらせてもらってるでござる」
「えっ、なぜ今さら突然忍者感出してきたの……」
「はい、それはさておき、レンタルご利用時間はいかがなさいますでしょうか?」
「うーん、とりあえず2時間とかかな?」
「了解です。2時間ですとレンタル料金は4千円になります」
「あれ、入会金と比べるとなんかリーズナブルなのね」
「ありがとうございます。お客様ファーストでやらせてもらってるでござる」
「う、うん、どうやらそれ言うときだけござるなのね。もう定型文みたいになってるのね」
「あっ、ちなみに先ほどお伝えしたのはオスの忍者をレンタルした場合です。お客様はオスとくノ一どちらをご希望されているのでしょうか?」
「いや、オスってあんた。男性忍者の扱いひどくないかい……。って、あんまり考えてなかったけど、ちなみにくノ一を選んだ場合はいくらぐらいなの?」
「はい。2時間で6万8千円になります」
「ふーん……って高っ! 激増なんだけど。そこまで差があるとめっちゃ気になるな、もしかして変なサービスがあるとか……」
「お客様! 当社では一切そういったサービスは行っていません! くノ一は当社にとって大変貴重な人材なんです。オスはともかく、くノ一にもしものことがあれば……」
「いや、今は別にそんなサービス求めてないし、そもそもそんな大金払えないし、っていうかオスの忍者も大切にしようよ!」
「かしこまりました。その件に関しては、サービス向上のための参考にさせて頂きます」
「いやいや、前向きに検討しようよ」
「はい。では、今回はオスの忍者レンタル2時間でのご利用、ということでよろしかったでしょうか?」
「うん。そういえば、こういうのって忍者の指名とかって出来るのかな?」
「はい。指名料1万2千円が追加されま──」
「あっ、いいや」
「そうですか。では、当サービスをご利用頂くにあたり、いくつか注意事項がありますのでそちらをお伝え致します。まず、現在当社では派遣忍者の手裏剣使用を中止しております。次に──」
「いやいやいや。忍者なのに手裏剣使わないの? アイデンティティーどうした!?」
「はい、実は先日、当社の派遣忍者が手裏剣を投げた際、誤って指先に切り傷を負ってしまいまして。ご承知の通り、忍者は我が社の宝でありまして、キズ物にされるわけには……」
「甘っ! 扱いがガラス細工級なんですけど。ちなみに、僕が利用するのはオスの忍者なんだけど、手裏剣使わないってなんのためにレンタルするのかって……」
「ああ、オスの忍者でしたね。それなら全然大丈夫です。手裏剣だろうがまきびしだろうがいくらでも投げさせますよ。いや、お客様から投げつけちゃってもいいですよ。なお、千円追加頂ければオプションで鎖鎌もお付けし──」
「悲しすぎるからやめたげて! もう説明はいいから、2時間レンタルお願い」
「かしこまりました。では、お客様のお名前、住所、電話番号、生年月日を……あっ、今月誕生日ですか? それはおめでとうございます! 誕生月サービスとして、オスの忍者をもう一人無料で追加させて頂きます……」
──30分後。
二人のオスの忍者がやってきた。
厳しい研修を受けているのか、言葉遣いも丁寧で人当たりも良く、安心して利用できた。 手裏剣さばきや分身の術、水遁の術など一通り見せてもらった。
そして、2人とも僕が今日最後の客ってことで、一緒にお酒を飲むことになった。
くノ一に比べて扱いが悪いことや、くノ一に比べて扱いが悪いことなど愚痴を聞いてあげたらとてもスッキリしたようだった。
あっという間に時間は経ち、レンタル終了。
2人は晴れやかな顔でニンニン言いながら帰っていった。
僕がもうすぐ誕生日ということで、2人の忍者が作ってくれた2枚の手作り手裏剣型コースターは、一生大切に使っていこうと思っている。
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