iPhone24

「おっ、そろそろだな」

 

 ボクはベッドの上で仰向けになり、iPad15を両手で構えた。

 すると、iPad15は自動的に起動し、ボクの思考を読み取っていま一番見たいものを表示してくれる。

 画面には、ネット生中継の動画が表示された。

 

『では、この度発売されるiPhone24に関しまして、新しく追加された機能などをご紹介していきます』

 

「おっ、ナイスタイミング! さぁ、どんなの来るかなぁ」

 

『──みなさん、iPhone23で画期的に変わったこと、覚えてますか? そう、ネンドボディです。自在変形金属を用いることにより、ユーザーはまるで粘土のようにiPhoneを好きな形に変えられるようになり、世界で1つだけのiPhoneを全ての人が持つ事が可能になりましたよね』

 

「そうそう! あれはビックリした。まぁ、懐古主義なボクは逆にiPhone6のサイズにしちゃったりしてたけど」

 

『──そして今回、ネンドボディはさらなる進化を遂げました。なんと、1つのiPhoneを分割して、複数の小さなiPhoneを生み出すことが出来るんです。粘土を3つに分ければ3つのiPhone、4つに分ければ4つのiPhone……というようにね。もちろん、その分一つ一つは小さくなりますが、機能はフルサイズの時と全く同じ。だから、欲しくても買えずに指をくわえていたあの友人に、おすそ分けするなんてことが出来ちゃうんです、そう、iPhoneならね』

 

「おお! すげぇ! 凄すぎる! そう来たかぁ、やべぇ、iPhoneやべぇ。でも、それってメーカーからしたら凄い損するような……」

 

『──ご心配なく。iPhone24には分割認知機能を備えているので、増やした分だけ本体価格の8割分、自動的に引き落とす形になるので一切心配は要りません。その辺はぬかりないんです。そう、iPhoneならね』


「お、おう……8割か……ま、仕方無いか。それより次、次! さらなる新機能こい!」

 

『──次に、カメラに関する新機能をご紹介しましょう。その名も脳内風景カメラ』

 

「えっ、なにそれ凄そうなんですけど……も、もしかして……?」

 

『──目の前にある風景だけを撮る時代は終わりました。iPhoneカメラの次なるターゲットは皆さんの頭の中。そう、何かを思い浮かべながらシャッターを切ると、その映像が一枚の写真となって保存されるんです。どんな未来も現実になる。そう、iPhoneならね』

 

「すげぇぇぇぇぇ! どうやってんのそれ!? あー、ヤバい。その機能はヤバい。何か色んな意味でヤバいわぁ……待ち遠しいわぁ……」

 

『──さぁ、お待たせしました。iPhone24の目玉新機能を紹介します』

 

「キタキタキタキタ!!! 分割のやつと脳内写真のやつで十分驚いてるのに、さらに目玉が控えてるってどんだけ……ああヤバい、ドキドキしすぎて心臓ヤバい……」

 

『──みなさん、日々の生活の中で、常に起きうることってなんでしょう……?』

 

「うわぁ、思わせぶりだなおい。なんだそれは……うーん、なんだろうiPhoneを無くした時に自分から飛んで帰ってくるとかそんなんかな……」

 

『──そう、それは空腹です。人が生きていく以上、空腹から逃れることはできません。でも、食べものは何も持っていない。見渡す限りお店も無い……そんな時でも大丈夫。とうとうiPhoneは食べる事ができるようになったんです! 辺境の地でとつぜん空腹に襲われても大丈夫。好きなだけかじってお腹を満たすことができる。そう、iPhoneならね』

 

「……お、おう……」

 

『しかも、チョコレート味、イチゴ味、キャラメル味と豊富なフレーバーバリエーションを用意しており、体型が気になる方にはカロリーハーフバージョンも……』



〈了〉

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る