戦国武将悩み相談室

「はい、こちら戦国武将悩み相談室です」

「ど、どうも……」

「はい。今日はどういったお悩みで?」

「は、はい、えっと、あの、その……」

「大丈夫ですよ。緊張しないで、リラァ~ックスリラァ~ックス」

「あ、どうも……。えっと、兜と甲冑のことですごい悩んでるっていうか……」

「ああ、臭いの件ですね」

「えっ、あっ、そうなんですけど……食い気味な……そうなんですけど……」

「フフフ、大丈夫。当相談室への悩みの9割が兜と甲冑の臭いに関するものですので。私自身、数々の戦国武将さんたちから悩みを伺っては解決してきており、上司からは『キミはまるで歩くファブリーズだねぇ』と褒められたりで」

「は、はぁ……じゃあ質問なんですけど、あれってみんなどれぐらいのペースで洗ってるのかなって……。ボク、汗かきだからかも知れませんけど、ちょっと戦やっただけですぐムワッとしちゃうんですよねぇムワッと……」

「なるほど。わかります、非常によく分かりますよその悩み。ちなみに、アナタはいまどれぐらいのペースで洗ってるんですか?」

「えっ……ちょっと言いづらいんですけど、今まで一度も洗ったことが無いんです……」

「あらまあ、それは大変。なぜ、洗わないんですか?」

「はあ、なんかタイミングが分からなくて……。ちょうど洗濯した時に敵の武将が攻めてきたらどうしようとか……。そもそも、普通に洗濯機に入れていいものか、クリーニング屋に出した方がいいのかってことも分からないもんで……」

「手洗いですよ手洗い。いま、手元に実物あります?」

「あ、はい、兜だけ」

「じゃあ、内側に付いてるタグを見てもらえますか」

「は、はぁ……えっと、これかなぁ」

「なんて書いてあります?」

「はい、えっと、これは何か水を張った桶みたいなマークの上に"手洗イ"みたいな文字が……」

「それですそれ! ほら、ちゃんと書いてくれてるじゃないですか。身につける物を買ったら、まず真っ先にタグを見る習慣をつけなきゃダメです」

「は、はぁ……。正直、あまり確認したこと無かったです。っていうか、肌に当たってチクチクするから買ってすぐに切っちゃうことも……」

「そんなの言語道断です! 切腹ものですよ」

「え、そこまでのことなんですか? すみません、以後気を付けます……」

「ううん、分かって貰えれば良いの。ところで、そういうことを教えてくれる先輩の武将さんとかは居ないの?」

「は、はぁ……。そこそこ仲良くしてた3つ上の先輩武将が居たんですけど、最近ちょっとケンカしちゃって……」

「ほう、それは困りましたね。原因は分かってるの?」

「うーん、たぶんコレかなってのはあるんですけど……」

「そう、もし差し支えなければ、教えてもらえる?」

「は、はぁ……。ボク、今度自分のお城を建てることになったんです。凄く嬉しくて、真っ先にその先輩に報告したんですけど……なんかイライラし始めちゃって、どうしちゃったんだろうって考えてハッとしたんです。その先輩はまだお城を持って無いのに、後輩のボクが出し抜いた形になっちゃったのが気にくわなかったんじゃないかって……」

「でしょうね」

「ああ、やっぱり……。デリカシーなさすぎですよね……」

「気にしちゃダメ。武将はお城を持ってなんぼの商売なんだから。そこに年齢なんて関係無い。強い者が偉いんだから。なんてったって今は戦国時代、でしょ?」

「は、はい。そう言って貰えると、少し気が楽になりました。ところで、そのお城についてもちょっと悩んでることがあって」

「あら、どんな悩み?」

「はい。お城のデザインに関してなんですけど、ボクはなるべく予算を抑えたいから、ベーシックな感じでいいかなって思ってるんです。だけど、家臣たちは『せっかくだから、有名デザイナーに頼みましょうよ。他の武将と被るかも知れないなんてとんでもない。オンリーワンじゃなきゃ』って言ってきて。どうすればいいか、なかなか決められなくて……」

「そんなの簡単。有名デザイナーに頼むべきよ」

「えっ……!? それはどうしてです?」

「お城って言うのはね、武将の威厳そのものなの。それをケチるだなんて、敵だけじゃなくて民衆からも舐められるわよ? アナタそれでもいいの?」

「そ、それはマズいかな……」

「でしょ? そこは惜しみなく、最高のデザイナーに頼みなさい。お金なんて、戦に勝ち続ければいくらでもなんとかなるんだから」

「そ、そうですね。はい、何かスッキリしました!」

「うん、そう言ってくれると嬉しいわ。ちなみに、デザイナーの選定は慎重にね。他の人が手がけたお城のデザインをパクるデザイナーが居るなんて噂もあるから」

「はい、気を付けます。今日は、本当にありがとうございました!」

「いいのいいの。それが私の仕事なんだから。じゃあ、また何か悩みごとがあったらいつでも電話してきなさいね。例えば、側室が鎧プレイを要求してく──」

 ガチャ。

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