第2話 詩

母が家を出て数分の後、ペネトラは首枷を解こうと、青色のヘアピンをねじ曲げ、その先の方で鍵穴を引っ掻いた。

カシャン。・・・ズン。

軽い音が鳴り、次いで重い落下音。

晴れて自由の身となったペネトラだったが、とても重要な問題がある事をすっかり忘れてしまっていた。


「・・・何持っていこう?」


彼女には幾つか道中にしたい事があったものの、その為に持つべき物が何か、まるで解っていなかったのである。


「・・・」


取り敢えず彼女は三冊ほどのなるべく厚い本を鞄に詰め込むと、それを小さな背中に背負って思いきり、木製の玄関を飛び出した。




それは、何と美しい事か。

図鑑でしか見た事の無かった草花や、動物や、街・・・。

すべて、ペネトラにとって宝物だ。

何もかもが綺麗で、恐怖などは無かった。


「・・・よし」


彼女は既に行く先を決めていた。

一度本で見てから、ずっと行きたいと願っていた地である。


「・・・《カーラ》・・・」


思わず、その名を呟く。

今いるこの街から遥か遠く、海を挟んだ向こうの、更に先にある楽園。


先ずは『海』を目指さねばならない。

未知の世界がまた、彼女を手招きしていた。

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