第2話 目覚め
「う…。」
一夜は目を覚ました。どうやらここはどこかの建物らしい。彼の視界には見知らぬ天井が映ってる。
「お目覚めですか?」
「あの…あなたは…?」
介護をしてくれた自分より少し年上であろう男性に声をかける。男はその場を立ち上がると敬礼した。
「私は第一派出所所属、
「は、はぁ…って巡査!?警察ですか!?」
「えぇそうですが…?」
一夜は思わず飛び起きた。全身に痛みが残っているが気にしている場合ではなかった。慌てて周りを見る。
「あの…ここは…?」
「え?変なこと聞きますね。派出所に決まってるじゃないですか。」
「だって…ここはまるで…。」
その後の言葉に口をつぐむ。なぜなら今自分がいる場所は派出所とは到底思えないからだ。そう例えるなら要塞と言った方がいいような…
「そう言えば昨日はどうして外出していたんですか?」
唐突に海人が尋ねる。
「えっと…コンビニへ買い物に。」
「それは災難でしたね。まさかレイウルフに襲われるなんて。」
「レイ…ウルフ…?」
思わず尋ねる。
「あぁ、昨日あなたを襲ったクリーチャーですよ。最近はここら一帯を縄張りにしてしまったみたいで。無事でよかったです。」
一夜の中に疑問が浮かんだ。今までも疑問だらけだったが今回の疑問はそれ以上だった。
なぜ、彼はそのことを知っているのか。
彼が嘘をついているようにも見えない。警察官だったらなおのこと嘘はつけないはずだ。それなのに今までの会話が嘘のように感じてしまう。まるで現実じゃないような感覚に捕らわれる。
「あの…変な質問ですけどここはどこですか?」
「え?ここは第一派出所だってさっきも…。」
「そうじゃないんです。ここは…僕の住んでる
もしも、ありえない話だがもしも漫画やゲームの話でよく聞く異世界転生のようなことが実際に起きてるんだとしたら。地球とは違う惑星にいるとしたら。そんな可能性を考えてしまう。
しかし海人の口から放たれた答えは一夜の望んでいたような答えではなかった。
「はい、ここは永華町ですよ。」
「えっ…。」
一夜の思考が止まる。聞き間違いではないのか、本当にここは永華町そのものなのか。ならなぜ自分の理解が追い付けないのか。困惑するばかりだった。
「い…今は西暦何年の何月何日ですか?」
思わず質問を重ねる。
「え?今日は西暦2017年6月26日ですね。」
コンビニへ買い物へ行った翌日だ。
「ここは何という惑星ですか?」
「太陽系第三惑星地球。大丈夫ですか?記憶喪失?名前言えます?」
「名前…千田一夜…。」
自分の名前を言いながら気分を落ち着かせる。少しずつだが頭も回ってきた。
「じゃあ今度は私が質問していいですか?」
「あ、はい。大丈夫です。」
「あなた、外出許可書は持ってます?」
再び一夜の思考が停止する。
「…はい?」
「だから外出許可書ですよ。夜間外出は許可書ないといけないってもちろん知ってますよね?」
そんなものを持っているはずもない。そもそも存在自体聞くのが初めてだ。
(どうする…さっぱりわからないけどこのままだとマズイということだけはわかる。とはいえ嘘をつくと悪化しかねない。ここは素直に言った方がいいか。)
気持ちを整理した一夜は覚悟を決めて言った。
「すいません!持ってません!」
「はい、じゃあ生活法違反で逮捕ですね。」
「…はい?」
一夜の思考が戻るのは手錠をかけられた後だった。
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