筒六ルート11話 独占関係

「それで、どこへ行くんですか?」

「そうだなあ……」

ゆっくり喋れる場所っていったら公園ぐらいしかないし、他の場所となると――

「俺の家に来ないか?」

「恋人になった途端、家に連れ込むとは、誠さんもしかして慣れてるんですか?」

「アホ言え。筒六が初めてだ」

「成功率低いですね」

「それだと誘っていることには変わりないだろ。そうじゃなくて、恋人になったのも、恋人を自宅に誘ったのも筒六が初めてなんだよ」

「そうですか。私が初めて……」

「なんだよ。どうせ俺は女子にモテない残念野郎だよ」

「モテなくていいです」

「?」

「誠さんは私1人にモテていれば、それでいいんです」

「筒六……」

「……まだ着かないんですか?」

「え?」

「行くんでしょ? 誠さんの家」

「あ、ああ」

なんだかんだ言っても来てくれるんだな。


「大したところじゃないけど、くつろいでくれ」

俺は筒六を自分の部屋へ通す。

「ここが誠さんの部屋……」

「あんまりジロジロ見るなよ。少し恥ずかしいぞ」

「興味ありますから」

「そりゃ俺のことに興味持ってくれるのは嬉しいけど――」

「いかがわしい本がどこにあるのか」

「そっちかよ。そんなもん探してなにする気だ?」

「ということはあるんですね?」

しまった……。

「……ない」

「正直者なんですね」

「信じてくれるのか?」

「はい、嘘ついてるのバレバレなので」

「うっ……それじゃ、正直者じゃねえだろ」

「いえ、正直者だから嘘つくの下手なんだろうって」

「あ、そゆこと……」

「で、どこですか?」

「さ、さあ……どこにしまったかな? 俺も最近、ご無沙汰ちゃんだし……」

「えーっと、ここかな……?」

筒六は机の裏に手を伸ばす。どうして、ピンポイントにそこなのだ。

「あ、ちょっ――」

「じゃじゃーん。『愛する2人は場所を選ばない。純愛篇』~」

取り出した本を掲げながら、抑揚のない声でタイトルを読み上げる。

「タイトルを読まんでいい!」

「どれどれ……」

「だああ、中身も読まんでいい!」

「…………」

「つ、筒六さん……?」

「…………」

筒六は顔を真っ赤にして、見つけ出したいかがわしい本を閉じる。

「……スケベ」

「だ、男子たるもの、こういうものは1つや2つ――」

「好き……なんですか?」

「好きっていうか――」

「興味……あるんですか?」

「ま、まあ……」

「では、これは処分するしかありません」

「なぜ?!」

「誠さんは私にだけ興味を持っていればいいんです」

「それって――」

「えい」

「わ、ちょっ――!」

筒六は両手で俺を押し、突然のことに俺は受身を取れず、そのまま倒れてしまう。

「いてて……って、筒六!?」

押し倒された衝撃よりも、筒六の行動による衝撃のほうが大きかった。

「あんな本になんて負けません」

「だからって、そんな急に……おおう……」

筒六の手が俺の首から下腹部へ這う。つ、ついに俺も――

「ん?」

いつの間にか筒六の両手は俺の両頬を包んでいた。

「1つ忘れていたことが……」

「忘れていたこと?」

「私たち、恋人なのに……してないです」

「あ、そうだった……」

重要な愛情行為を忘れていた。

「筒六……」

筒六の考えていることと同じ行為をするため、顔を近づける。

「んっ、ちゅっ……合格です」

「大好きだぞ、筒六」

「私も大好きです、誠さん」

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