2016年2月~3月まとめ
2016年2月
世界が壊れかけた後、一人の詩人が語ったお話。
それはただの作り話に過ぎなかったのに。詩人は悔やんだ。そして同時に歓喜した。
最後に世界が壊れるきっかけになれたのだから。
詩人はわらった。
詩人は嗤った。
詩人は……
悪逆の魔王などいないのだ。
連合王国はただひたすらに誰もいない城に攻め入る。
簡単なことだ。魔王との戦いが終わったとき、連合は崩れ去る。
怒りや憎しみの矛先は魔王以外の誰かに向かう。
だからこそ居もしない魔王と戦うのだ。
その果て、真実の魔王が無の闇から生まれ落ちた。
世界は……
一通り一通り
壊してはみたけれど
ガラクタはひとつも増えなかった
代わりにひとつだけ
ポンコツなら見つかった
そのポンコツを壊してしまえば救われる気がした
けれども壊してしまえば二度と救いはないように思えた
だからぼくは代わりを探した
その間にポンコツは誰かに壊されたけども
鬼から隠れようとして捕まった
鬼は逃げ出す奴だけを追いかけた
鬼は怖がる奴だけを攫っていった
角が折れたら鬼は死んだ
鬼が死んだら人も死んだ
だからぼくだけが生き残った
そして鬼は蘇った
鬼は逃げ出した
ぼくを怖がって隠れてた
けどぼくは追いかけないし探さない
鬼の目玉は黒かった
鴉の体は空っぽで
憎しみだけが詰まってた
3月
死神は踊る
この世の全てを糧にして
死神は笑う
この世の善を悪にして
死神は狂う
三つ数えてこの世は消える
死神は死神でしかなかったのだから
またいつの日かさよならができますように
いつからか彼の視界には黄色い鴉が映っていた。黄色くもなければ、鳥の形すら成していないそれを、彼は黄色い鴉だと認識していた。黄色い鴉は寂しがり屋で、周囲に人がいないとなると途端に涙を流して泣き出すのだ。ある時彼は黄色い鴉の正体に気づいてしまった。その日から彼も黄色い鴉の仲間入りだ。
目を失ったはずなのに、世界から光は無くならず、代わりに音が消え失せた。半分だけ満ちた水槽で壊れた音が遊んでた。暗い音がこだました。目には目を、それを誓った男は死んだ。いつかの涙だけを残して。
絶望できない人形には用がない。絶望しかない愚か者はもっといらない。狂い堕ち、暗い夜道でひとりきり。されど心音は二つ。愛する者を手に掛けた男の末路に相応しい。罰することは罪であり、罪を罰せずは罰せられる。いつかの彼方、静かな騒音だけが響いていた。
みかんの薄皮をみじん切りにしたものを塩こしょうで味付けしたものが悪魔の正体です。なので悪魔祓いを行う際にはしっかり換気を行いながら、よく振ってから開栓してください。送料負担の返品不可、手数料はレンジで温めないでください。爆発します。
鎖は腐り、契りは千切れた
けれどどちらに向かうというのでしょうか
私は鎖姫 買われ、飼われることしか能のない腐り姫
どなたか私をかっていただけませんこと?
0と1のバケモノは死ねない
くろがね潰えてくずになる
いつかの月は黒かった
何もかも壊してしまえばよかったのかもしれない
早九字を切る行者と十字を切る神父は相容れない
いつかいつかと喚いてみても、誰も彼もが信じない
誰か誰かとせがんでみても、何もかもが泡沫に消え
何か何かと探してみても、そこにあるのはいつかの夢だけ
私はただ逃げたかっただけなのに
それをどうして否定されなきゃいけないの
どうして逃げちゃいけないのか説明してよ
私からしてみたら逃げることを是としないあなたたちが悪者なの
だから悪者は悪者らしく倒れてよ
私の目の前からいなくなってよ
ねえ、ねえってば!
行きはよいよい、帰りはわいわい
百鬼夜行を引き連れて、君臨せしは我が姫君
件件を蹴散らして、旅よ旅よの根無し草
帰る場所ありゃせんならば、帰りの文字は変えりべき
せっせ、せっせと通りゃんせ
黒いたぬきがケケケと笑う
白いきつねがイヒヒと笑う
見えないいたちのごっこ遊びに惑わされ
枝垂柳で首を吊る
血止草に埋もれて死んだ莫迦が居る
死人に口無し、生きてりゃ朽ち無し
ならば汝は生まれてないのかえ?
狂い狂った狂少女、月の光に溺れてる
惑い惑ったその挙句、暗い闇夜でひとりきり
巡り巡って二十日と八日、今日もまた夢を見るの
命短し死せるは乙女
今宵も再び戯言か
旅さすほどには目に入れたとて痛み無し
天狗は鳴いた
いつぞや願った言葉のせいで、今の自分が苦労する
彼方に掻き消えたはずの言葉は、あなたの口から現れた
世界の矛盾は鈴の音が紐解く
殺してみせてよ、黒い――を
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