第318話 集結、六大魔王ⅩⅧ

『ヌウゥウアアアアアアアアッッッ!!!』


 ザハクが右第一、第二腕の筋肉を隆起させ、雄たけびを上げながら戦斧を振りかぶる!


 その豪快かつ素早い斧撃によって生じた横一線の斬撃波がバロム達へ襲い掛かる!


「散れッ!」


 バロムの言葉でディオスとウィズが同時に跳躍し回避する!


『馬鹿が! 自ら逃げ場のない空に身を晒すとは!』


 ザハクが上空のディオス達目掛けて双戦斧を構え、再び斬撃波を放つ!

 二つの斬撃波がディオス達を挟み込むように迫る!


「ウィズ!」

「うん!」


 ウィズがディオスの呼びかけに応え、空中で互いの足の裏を合わせ、同時に蹴り飛び斬撃波を躱した!


『ぬう!?』


 そのまま地面に着地したディオスが二本の短剣をザハクの複眼目掛け投擲!


『小癪なッ!』


 ザハクは双戦斧を顔前で交差させ、短剣を弾き返す!


 その一瞬の隙に、ディオスは懐から何かを取り出した。

 それは無数の小箱が紐で数珠繋ぎにされた奇妙な物だった。


 ディオスは小箱につけられた導火線に火をつけ、投げ縄めいてザハク目掛け放り投げた!

 顔前を戦斧でガードしていたザハクは、対処が遅れ身体に紐付き小箱が巻き付く!


『何だこれはッ!?』


 ザハクは左右の第二腕を戦斧から離し、体に巻き付いた小箱を引き剥がそうとするが、一歩早く導火線が小箱内に到達、爆発! それにより次々と小箱が誘爆し爆炎と衝撃波がザハクの身体を焼く!


『ぐおあァッ!?』

「今だウィズ!」

「分かったー! うおおおおおおおぉッッ!!」


 ウィズは大剣を構え爆炎に怯むザハク目掛け跳躍し、ザハクの脳天目掛け大剣を勢いよく叩き付ける!


『ヌウゥッ……!!』


 ザハクは咄嗟に両第一腕で頭上からの攻撃を防ぐが、大剣の一撃を喰らった衝撃で腕が痺れる。


「ディオスさん!」

「ああッ!」


 そこにすかさず短剣を回収したディオスが飛び蹴りを放ち、ザハクの腹部を直撃し後方に吹き飛ばす!


『ぐおあぁっ!?』


 吹き飛ばされたザハクは受け身を取り、地面に着地するが、その背後に影が忍び寄る!


「……」


 バロムである! バロムは気配を殺し、居合の構えでザハクの背後に接近していたのだ!


『……ッ!?』


 突然の寒気に襲われたザハクは、咄嗟に宙に回転跳躍したその瞬間、バロムが剣を抜き放った!

 そして剣閃一閃、鮮血がほとばしると同時に、宙で弧を描いて大地へ着地するザハク。


 両者向き合うと同時にバロムの足元に何かが落ちてくる。


 それは腕! 斬り落とされたザハクの右第二腕である!


『ヌゥゥゥゥゥゥッッ……!』


 ザハクは憎々し気に視線をバロムに向け、憤怒の咆哮を上げる!


『貴様ァッ……!! よくも俺の腕を……!! だが!』


 ザハクは筋肉を収縮させ、体液の流出を止めた!


『この程度では俺は倒れん! 心は折れぬ! 総ては魔人王様の大願成就のために、貴様等をここで葬るッ!』


 そう言ってザハクは、跳躍し渾身の力でバロム目掛け左腕の戦斧を振り下ろす! 一撃必殺の剛撃が大地を砕き、大量の土砂を巻き上げる!


『!』


 ザハクが周囲を見渡すがバロムの姿が消えていた。 いや正確には……視界の死角に移動していたのだ!!


『小癪な、気配を消していようが! 周囲一帯を吹き飛ばせば良いのだ!』


 ザハクが双戦斧を地面に突き刺し、三つの腕の筋肉を膨張させ、両腕に力を込める!


『ヌウゥアアアァッッッッ!!』


 そして自らの周囲の地面をまるでショベルカーで掘り返すかのように、双戦斧を横一線に振り抜きながら大地を吹き飛ばす!


(これならバロムが気配を消していようと……)


 そう考えた瞬間、ザハクは真上に気配を感じ取り上を見上げる。

 ザハクの目に映ったのは、上空に吹き飛ばされた無数の岩々に飛び移りながら向かってくるディオスとウィズの姿であった!


『ならば再び全部吹き飛ばして……!』


 ザハクが双戦斧を構えた瞬間、ウィズが槍投げの態勢を取った!


「うおりゃあああああああああッッ!!」


 そのままザハク目掛け大剣を投擲!


『グゥゥッ!!』


 ザハクは大剣を双戦斧を交差させ防御!

 その隙にディオスがザハクの真上を取り、導火線に火をつけた小箱を投擲、小箱がザハクの顔前で爆発する!


『チィッ……!』

「セイヤァァァァッ!」


 爆発でザハクの視界を奪ったディオスが飛び蹴りを放つ! しかも足裏には短剣が取り付けられている!

 飛び蹴りがザハクの顔面に直撃し、左複眼に深々と短剣が突き刺さる!


『グガアァァァァァァァァァ!!?』


 悶絶するザハクにトドメを刺さんと右手の短剣をザハクに突き刺そうとするが、ザハクは左第一腕でディオスの右腕を掴み止めた。


「ぐぅッ!」

『おのれぇぇぇ……!』


 そしてそのまま右第二腕の戦斧でディオスを両断せんと大きく振りかぶる!

 その刹那、上空からバロムが降下し、居合でザハクの右第二腕を斬り落とした!


『なッ……!?』


 突然の事にザハクの意識が一瞬逸れる。


「うおおぉッッ!!」


 その隙を狙い、ウィズがザハクの懐に飛び込み渾身の右ストレートをザハクの腹部に叩き込んだ!


『ゴホォッ!?』


 その衝撃でザハクはディオスの腕をつかんでいた拳を緩めてしまい、これ幸いとディオスは右腕の拘束を抜け出した!


「ウィズ! 行くぞ!」

「うん!」


 ディオスとウィズは同時に後退、跳躍!


「「セイヤァァァァァァァァァッッ!!」」


 そしてザハク目掛け飛び後ろ蹴りを同時に喰らわせた!!


『グハアアアアアアアアアアッッ!!?』


 凄まじい衝撃にザハクの身体は後方に吹き飛び、地面を転がり落ちる。

 その数秒後、空中に飛ばされた双戦斧が地面に突き刺さった。


『あがッ、ガがッ……ま、まだだ……まだ、俺は……』


 右腕を失い、左の複眼を失っても、ザハクの戦意は衰えない。

 ザハクはふらつきながらもディオスとウィズ、バロムを睨みつけ立ち上がる!


『……来いッ!!』

「偽物でありながら見事だ、せめて苦しまぬようこの一撃で仕留めてやろう」


 バロムが剣を構えザハクにトドメを刺そうとしたその瞬間、無数の飛来物がバロム達を襲う!


「ッ!?」


 バロム達が散開、回避して飛来物を見る。

 それはザハクが使用していた戦斧と全く同じものであった。


「先生! あれを……」

「なんだと……」


 ディオスが巨大百足の方を指差し、バロムがその方角を見て、驚愕する。


 バロムの眼前に映った光景、それは巨大百足の脚の上に並び立つ無数のザハクの姿だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る