第316話 集結、六大魔王ⅩⅥ
――各地の激戦が終結していく中、残る最後の戦場での戦いも苛烈を極めていた!
『ヌウゥアアアアアアッ!!』
ザハクが渾身の力で戦斧をバロム目掛けて振り抜く。
「フンッ!」
バロムは剣で戦斧を受け流し、続く横薙ぎもバックステップで躱す。
『甘いわァッ!』
着地する瞬間を狙いザハクは地面を力任せに踏み砕き、バロムの態勢を崩した!
「ぬぅっ!?」
『貰ったァッ!!』
態勢が崩れたバロム目掛けて戦斧を投擲!
「先生ッ!」
そこにディオスが割り込み、一対の短剣でザハクの戦斧を上空へ弾き飛ばす。
『チィッ!』
ザハクが羽を広げ空を飛び戦斧を回収、そのまま落下しながらディオスたちの頭上から戦斧を振り下ろす!
「ディオス!」
「はいッ!」
バロムの呼びかけでディオスは両手を組み、バロムがその手を踏み台にして上空へ飛び上がる!
『ヌウゥアアアアアアッ!』
ザハクはそのまま戦斧を振り下ろすが、バロムは紙一重で躱し、交差する一瞬でザハクの右腕関節部を斬り裂く!
『グゥゥッ! だがまだだぁァッ!』
ザハクが苦悶の声を上げ戦斧を離してしまうが、すぐさま左手で戦斧を握りそのまま上空のバロム目掛けて振りかぶろうとする!
その最中、真下のディオスの元へ駆ける人影が一つ。
「ディオスさん! 私を上に!」
「分かった、来い!」
ウィズである! ウィズが大剣を地面に突き刺し、全速力でディオスに駆け寄り組まれた両手の上に足を乗せる。
「オオオオオオオオッッ!!」
ディオスは全力の力でウィズを上空へ投げ飛ばす!
『ヌゥウアアッ!』
「うおりゃあああァァァァッ!!」
ザハクが振りかぶる戦斧に力を込めた瞬間、真下から飛来したウィズの右拳がザハクの腹部にめり込む!
『オオォッ!?』
腹部を殴られたザハクは、突然の奇襲に体を硬直させる。
「はぁぁぁぁぁぁ……っ!」
大きく息を吐き出すウィズ、両腕の筋肉が膨張し、限界まで引き絞られた拳が唸りをあげる!
「でりゃりゃりゃりゃッ!! せいやァァァァァァァッ!!」
ザハクの腹部に無数の拳打がめり込んでいく!
『グ、オオォォォッ……!?』
「こいつを……喰らえぇぇぇぇっ!!」
そして右拳を握り締めて振りかぶり、渾身の力でザハクの腹部に叩き込んだ!
『グゴオオオオオオォッ!?』
腹部を殴られたザハクは後方に吹き飛び、地面に激突! ウィズとバロムは地面に着地した。
「お父さん、大丈夫ー?」
「ああ、助かったよウィズ、だが……」
バロムがザハクが落下した場所を見据えると、戦斧で砂煙を切り裂きザハクが現れる。
『ハハハハハ! 少女でありながらその膂力! 敵ながら見事だ! 貴様のような跳ねっ返りが我ら魔人族にも居れば、鍛え上げて俺の部下としていただろな……』
ザハクのその言葉に、ディオスが反応した。
「何を言っているんだザハク……! お前には鍛え育てたあの子が……ファレナが居ただろう!」
「……」
ディオスの言葉にザハクは数秒間無言となる。 そして――
「……誰だそれは?」
ザハクは心底不思議そうに、そうディオスに問い返した。
「……ッ! お前、本気で言っているのか……!」
『そんな者の話を出されても知らんものは知らん! それよりも戦いを再開しようではないか……ハアァァァァァ……ッ!!』
ザハクが両手で戦斧を握りしめると、斧は音を立てて変形、巨大化し、さらに二つに割れて左右非対称の歪曲した刃を持つ禍々しい双戦斧へと変貌を遂げた。
『この双戦斧で貴様等を両断してくれる!』
ザハクは収納していた左右第二腕を展開、左右両手持ちの構えを取る!
『『キシャアアアアア……!』』
さらに小型百足達がバロム達の周囲を取り囲む。
「……」
「ディオスさん……」
「ディオス、君の気持ちは分かる、だが……」
「分かっています、先生……あいつは……アレはザハクに限りなく近い別人だ……だからこそ! これ以上友を汚すような真似は許さない! 俺の手で奴を倒す!」
『さっきから何を訳の分からんことを言っている! 倒されるのは貴様達の方だァァァッ!』
ザハクが翅を広げ突進すると同時に、小型百足たちも一斉にバロム達に襲い掛かる!
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