第308話 集結、六大魔王Ⅷ
「《魔海の水槍》!」
水槍が一斉にブロスト目掛けて放たれる!
『不意打ちならともかく単調な攻撃など当たりませんよぉ!』
ブロストは脚を折り畳み力を溜め、『ガチッ』と言う音と同時に脚を開放しその勢いで空中を何度も蹴り跳び、水槍を全て躱し、そのまま魔海王に接近する!
「《魔海の水柱》!」
地面から無数の水の柱が出現し、ブロストを迎え撃つ!
『そんなもので私を止められるとでも!?』
ブロストは軌道を変え上空へと跳んだ。
「思ってないわよ、けど誘導は出来る」
水柱が届かぬほどの高さに到達したブロストの眼前に、魔海王の大口があった。
『なにっ……!?』
「《魔海の水泡》!」
次の瞬間、魔海王の口内から水球が撃ち出されブロストに直撃、ブロストはバランスを崩して地面に落下し叩きつけられた。
『ぐぅっ……! おのれぇ!』
「無様ね、いい気味だわ」
『ふ、ふふふ……一撃当てた程度でいい気にならないでくださいねぇ……』
ブロストは立ち上がると、右第一腕の指を鳴らした。
それと共に無数の小型百足達が現れる!
『行きなさい』
『『『キシャアアアアアアアアアアア!!!』』』
ブロストの指示と共に小型百足達は一斉に突撃する。
「今更こんな雑魚共けしかけただけで私を止められるとでも――」
小型百足達は魔海王を無視して、後方に居るガーベラとアルトランド騎士団へと殺到した。
「なっ!? こいつら……!」
『ふふふ……ガーベラ王妃とアルトランド王国の連中が貪り食われる様を共に観覧しようではありませんか』
ブロストは神経を逆撫でるような笑い声を上げる。
「おまえ――」
「レヴィヤ! 敵の術中に嵌るんじゃない! これは君の心を乱すための奴の作戦だ」
苛立つ魔海王をガーベラが窘めた。
『おやおや、これから貪り食われると言うのに随分と冷静ですねえ、ガーベラ王妃様?』
「ふん、この程度で私と我が誇り高きアルトランド騎士団が敗北すると思っているのか? 私を含めたアルトランドの戦士達は……貴様が思うより遥かに強かだ! しかも今回は魔海王の加護とも呼べる、この武具がある!」
『キシャアアアアアアアッ!!』
ガーベラは自らに襲い掛かって来た小型百足に対して剣を構える。
その刀身から水が逆巻き、剣を振るうと水が高速で撃ちだされ、小型百足の頭部を切断した!
「レヴィヤの生え変わった牙を削り作った剣とこの鎧がある限り……私達が貴様如きに後れを取る事はない!!」
『う~んカッコいいですねぇ! ですが果たしてそれだけで勝てますかねぇ?』
ブロストの気色の悪い声音をガーベラは無視し、騎士団を鼓舞する様に声を高らかに張り上げる。
「我がアルトランド騎士団よ! 今こそその力を振るう時だ! 眼前の敵を討ち滅ぼせ!」
『うおおおおおおおおおおおお!!』
アルトランド騎士団は気合いに満ちた雄叫びを上げ、勇猛果敢に小型百足の群れに向かって行く。
「さぁかかって来い虫共! アルトランド王国王妃、このガーベラ・アルトランドが貴様らまとめてた叩き斬ってやる!」
「王妃様に続けェェェェェッ!!」
「オオオオオオオオオオオオオッッ!!!」
ガーベラと騎士団は次々と小型百足を蹴散らしていく。
『おやおやなんとも勇敢な事ですねぇ』
「何余裕そうにしてんのよ? あんた自分が劣勢って事忘れてない」
「劣勢? たかが一撃当てただけでもう勝ったつもりですかぁ? ここからは私も本気で行かせてもらいますよぉ……?」
ブロストは地面を蹴り上げ宙に跳んだ。
「《魔海の水砲》、《魔海の水槍》!!」
放たれた無数の水球と水槍をブロストは空中で縦横無尽に蹴り跳び回避した。
「ちょこまかと、うっとおしいわね……!」
『ふふふふふふ!! その巨体では私の速度にはついて行けないですよねぇ!』
ブロストは高速で移動しながら魔海王の身体に蹴り攻撃を喰らわせ続ける。
「痛っ……ちまちまと……! 調子に乗るじゃないわよ!!」
魔海王はブロストの動きを先読みし、動きが止まった一瞬を狙い水槍を放とうとするが……
「ちぃっ……」
「ですよねぇ……出来ませんよねぇ!?」
ブロストは愉快そうに笑いながら、小型百足と戦うガーベラ達を背にしたまま翅を羽ばたかせて留まっている。
「その水槍が私に当たらなければ後ろに居るガーベラ王妃達に被害が出るかもしれませんからねぇ?」
「ちっ!」
『ふっふふ……さぁ思う存分痛めつけてあげますよぉ!』
ブロストはガーベラ達を背にした状態を維持したまま魔海王へ攻撃し続ける!
『小回りが利かないとは不便ですねぇ魔海王? どうですか、見下している相手に手も足も出ない気分は?』
「遠距離攻撃を封じたくらいで、いい気になるんじゃないわよ!」
魔海王は胴体を鞭のようにしならせブロストに薙ぎ払い攻撃を喰らわせようとするが、ブロストはそれら全てを回避し、ドロップキックに似た態勢を取ると両脚を畳み、魔海王の胴体に目掛けて急降下!
そして一気に解き放った脚の一撃が魔海王身体に直撃、巨体を地面に向かって吹っ飛ばした!
「ぐふうぅっ……!」
『ふふふふ……愉快、愉快ですねぇ! 所詮魔王とてただの生物に過ぎないと言う事ですねぇ!』
「……」
『苛立ちの余り言葉も出ないと言った感じですかぁ? ふふふふ……このまま貴女達を始末し、我が大願成就を達成させてもらいますよぉ……そう、我が大願……『魔人王様が世界を喰らい尽くす』事をねぇ! ふふふふ……』
「哀れね」
『なに……?』
魔海王が発した言葉にブロストは攻撃を止める。
そして先ほどまでの余裕めいた声ではなく、憤怒に染まった声で彼女に問いかけた。
『今、何と言いましたかぁ……?』
「哀れだって言ってんのよ、あんたは魔王を見下しておきながら、その魔王のために頑張ってる事に『気付くことすらできない』哀れで虚しい紛い物よ」
『紛い物だと!? この私が紛い物とでも言うつもりか!!』
「だってそうじゃないの」
『ふざけるなよ魔海王! この私は数百年を費やしこの姿を取り戻した! 魔人族共を出し抜き、魔人王から力を奪った絶対的な力を手にした我が大願を、魔人王様の世界喰滅を果たし、世界を我が物とするのだ!』
「ほらね、自分が支離滅裂な事を言っている事自覚できていない時点で終わってんのよあんたは……さぁ、無駄話はここまで、ここからは一切の容赦なくあんたを叩き潰してあげる」
『私のスピードに付いて来れない分際で何を言うか!』
「そうね、『この姿』じゃ無理ね」
『……なに?』
次の瞬間、魔海王の身体がメキメキと音を立てながらその身を縮め、姿を変えて行く。
「簡単な話よね……本来の姿では小回りが利かず小さな相手には不利、かと言って人間の姿になっては力を制限されてしまう……ならその中間にあたる形態になればいいのよ」
姿を変えた魔海王の大きさは僅か3メートル弱程となっていた。
上半身は普段彼女が人化する際の姿、全身が水色の鱗で覆われ、手首と背中には巨大なヒレがついている、下半身は本来の海竜の胴体そのままであった。
「どう? 前に舞台で新しい演出を考えて編み出した姿よ、でもガーベラに『やめておけ、民がパニックになる』って言われてお蔵入りにしてたのよね」
『ふん、そんな醜い姿になっただけで、この私に勝てるとでも?』
「勿論よ」
魔海王が指を鳴らすと、周囲に大量の水が渦巻き出す。
「さぁ始めましょうか、私のショータイムを……ここから先、もうアンタは手も足も出せないわよ」
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