第303話 集結、六大魔王Ⅲ
『『『ギシャアアアアアアアアアアアアアッ!!』』』
クルーザーが叫び続け地面が揺れ続ける中、クルーザーの周囲を円で囲むように地中から全長百メートルはある巨大ムカデが六体も姿を現した。
「こ、これは!?」
「なんじゃあ奴らは!?」
「おそらくクルーザーが生み出した分身でしょう……」
『『『ギシャアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!』』』
『ギシャアアアアアア!』
『シャアアアアアッッ!』
『ギシャシャアアアア!!』
クルーザーの分身たちは本体の叫びに共鳴するように叫び続けている。
「あいつらは一体何をしているんだ? ミミズさん」
「儂が分かるわけないじゃろうが!」
『恐らくですが、分身たちはあの本体から何か指令を受信しているのではないですか?』
「指令ですか?」
『ええ、私が植物達に命令を発信するときと似たようなモノを感じます』
「成程……」
「ぐっ!? うぅ……!?」
クルーザー達の様子を窺っていた時、突如魔鳥王が苦しみだし、足で掴んでいた魔植王の植えられた植木鉢を地面に落とし、頭を抱えて地面に膝をついた。
「魔鳥王!?」
(だ、だいじょうぶー!?)
(急にどうしちまったんすか!?)
スティンガーとドラッヘが心配して駆け寄ろうとすると……。
「っ!? 来ないで! ……離れて、ください……っ!」
魔鳥王の言葉でスティンガーとドラッヘがピタリと動きを止めた。
「魔鳥王! 一体どうしたんですか!?」
「はぁっ、はぁっ……! 未来視が、発動したんです……! そんな……これは、なんという……!」
「魔鳥王! 一体何が見えたのじゃ!? はよう教えんか!」
「何て恐ろしい……このままではこの世界だけでは無く……他の……まで……! うぅっ!?」
魔鳥王は苦しみながら必死に言葉を紡いでいるが、上手く聞き取る事が出来ない。
「しっかりしてください魔鳥王! それほど恐ろしい未来なんですか!?」
「……魔蟲王……っ、二つの……が……滅……」
私に何かを伝えようとしていた魔鳥王は、途中で意識を失い、糸の切れた人形のように崩れ落ちた。
「魔鳥王!?」
倒れた魔鳥王をスティンガーが背中に乗せて介抱する。
「ベル! 魔鳥王に癒しの鈴音を!」
(わ、わかりました!)
『私も彼女の意識回復を行います、私を魔鳥王のそばに置いてください』
「分かりました、頼むバノン」
「お、おう」
私はバノンに指示して、魔植王をスティンガーの背中の上で仰向けで寝ている魔鳥王の顔の横に置いてもらった。
『今まで以上に恐ろしい未来を視た事と膨大な情報量が急激に脳に流れ込んだ事で、一時的に機能不全に陥ったのでしょう……《治癒の蔦》《癒しの光》』
魔植王は植木鉢から自身の根を数本伸ばし魔鳥王の頭に触れると、触れた部分から緑色の光が流し込まれていく。
更に魔植王の枝に小さな蕾が付き、その花弁が開きピンク色の花から優しい光が魔鳥王に降り注がれる。
『これで数分もすれば目を覚ます筈です……ベル、貴方も癒しの鈴音を続けてください、それと、傷ついていたガタクとソイヤーもこちらへ連れてきてください』
(はい!)
魔植王の指示で、しもべ達はボロボロに傷付いたガタクとソイヤーを魔植王元へと運び、魔植王は魔鳥王と並行して治療を開始した。
これで魔鳥王達は大丈夫だろう……
「ヤタイズナ、何か様子が変じゃぞ……」
「何?」
ミミズさんの言葉を聞いて再びクルーザーと分身たちを見ると、先程まで叫び続けていたのが嘘のように、一斉に止まっていた。
「何だ? 何故止まったんだ?」
「何やら嫌な予感がするのう……」
「お、おい! 森を見ろよ……」
バノンが指差した方角を向くと、森の木々達に異変が生じていた。
「これは……森が、枯れていっている……?」
先程まで青々と茂っていた森林が徐々に色を失っていき、茶色に変色していってる。
それはクルーザーの周囲から放射状に広がり続けている。
「これは、一体……!?」
『ああ……この森の木々達の悲鳴が聞こえます……命を一滴残らず吸い尽くされていき、枯らされていく絶望を感じます……!』
「それじゃあやっぱり、クルーザーが森から生命力を吸い取っているのか!」
マモン森林の木々の葉が落ち、干からびていく。
この速度ならマモン森林全体が死に絶えるのも時間の問題だろう……
「む……? ヤタイズナ、分身共が動き始めたぞ!」
クルーザーの分身たちをが、ゆっくりと身体を上に向け始めた。
「あれは、一体何を……?」
全員がクルーザーの動向を警戒している中、ソレは起こった。
『『『『『『ギシャアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッ!!!!!!』』』』』』
「グゥゥッ!?」
「何て声じゃ……!」
「み、耳が割れそうだぜ……!」
六体の分身たちが同時に天に向かって絶叫を上げた!
そしてその中心にいるクルーザー本体がその三つ首を天に掲げ、その口に禍々しい光が収束されていく。
ソレを見た私の背筋に悪寒が走る。
「不味い……皆、ここから離れるんだァァァッ!」
『『『ギシャアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!』』』
私が皆に退避を促そうとした瞬間、クルーザーの口から極太の光線が天に向けて発射され、その後に衝撃波が周囲を襲った!
「皆、何かに掴まれ! うおおおおおおおおおっ!?」
「ぬおおおおおおおおおおおっ!?」
「飛ばされるゥゥゥゥゥ!?」
(やばいよー!?)
(きゃあああああああ!?)
(俺、耐える、言う)
私達は何とかその場に留まり踏ん張り続ける中、クルーザーが発した光線は空に謎の歪みを発生させ、その後空に巨大な亀裂が走った。
「あ、あれはまさか……転移門!?」
そう、アバドンやビャハも使用していた転移魔法を使用した時に現れる亀裂と同じものだった。
だがその大きさは今まで見たモノとは比べ物にならないほど大きい……アメリア王国に現れた転移門の何十……何百倍の大きさはある……!
それどころか、亀裂は空を侵食するようにどんどん広がっているように見える。
「まさかクルーザーの奴、何処かへ移動する気なのか!?」
「じゃが一体どこへ向かう気なのじゃ……む? ヤタイズナ! 亀裂の中を見よ!」
ミミズさんの言葉を聞き、私は開かれた転移門の中を注視する。
薄らとだが何かが見える……真っ暗な景色に小さな星が無数に浮かんでいる場所……宇宙?
そしてその奥に見える一際大きな惑星……わく、せい……!?
「あ、あれは、まさか……!?」
宇宙に浮かぶ青く光る惑星、私はこの惑星を知っている……いや、知っているなんてレベルじゃない……アレは、あの星は……!
「地球……!」
そう、この世界に転生する前、人間だった頃の私が生きていた母なる惑星、地球の姿がそこにはあった……!
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