第302話 集結、六大魔王Ⅱ
「ま、魔獣王たちが来ていないじゃとぉ!? 一体どういう事なのじゃ魔鳥王!」
魔鳥王の衝撃の発言にミミズさんが詰め寄る。
「まさか道に迷った挙句そのまま来たとかぬかすわけないじゃろうな!?」
「落ち着いてくださいミミズさん、そんな貴方みたいな失敗を犯す訳がないでしょう」
「おぉい! それは儂ならそう言う失敗すると言いたいのか!?」
「落ち着いてよミミズさん、今はミミズさんのお笑いに付き合っている時間は無いんだってば……それで魔鳥王、どうして魔獣王達はここに来ていないんですか?」
「彼等にはこの日のために戦いの準備をしてもらっていたのです、すぐにこちらに向かうよりも戦力を整えてから向かった方が得策ですからね」
「じゃが実際には来ていないではないか! まさか魔獣王の奴、また酒を飲み過ぎて爆睡しているんじゃなかろうな?」
あの魔獣王なら有り得なくはないから困る予想だ……
「安心してください、ミミズさん、そして魔蟲王……今から彼等を呼び寄せるのですよ」
「呼び寄せる……?」
「どう言う意味じゃ?」
「言葉通りの意味ですよ、それでは早速準備を……」
魔鳥王が準備を行おうとする中、こちらに近づいて来る人影が見えた。
「ヤタイズナ、ミミズさん! 無事に戻って来ていたか!」
「バロム! それにディオスも!」
人影の正体は私達とは別ルートでマモン森林に突入していたバロムとディオスだった。
「バロム、魔人族の女性と子供達は保護は成功しましたか?」
「ああ、ビャハの手に掛かり多くの犠牲があったが、生き残った者達を保護することは出来た……だが突如現れたあの巨大生物は何なのだ?」
「その説明は後でしますね、それで魔鳥王、一体何をしようと……」
「ヤタイズナさーん! た、大変だよー!」
話を進めようとしたその時、バロム達がきた方角から更にウィズが駆け寄ってきた。
「ウィズ! よかったウィズ達も無事だったのか……で、大変って何があったんだ?」
「はぁ……はぁっ……そ、それがねっ、駐屯地に魔人族が現れたんだよー!」
「「なんだって!?」」
「今は睨みあいの状態だけど、このままだとこの駐屯地が戦場になっちゃうよー!」
「ええい次から次へと問題が起るのう!」
「とにかく急いで向かおう!」
私達が現場に到着すると、そこには睨み合いを続けている勇者達と六色魔将、白のゼキア達の姿があった。
「ちぃっ……まさか撤退した矢先に敵の駐屯地に辿り着いてしまうとはな……こうなれば我が命と引き換えに貴様等の首級を魔人王様に捧げてくれようぞ!!」
「来るか! 綾香、瑞樹、海斗、行くぞ!」
「待て! 両者、武器を収めよ!」
勇者達とゼキア達が一触即発の状態の中、バロムが両陣営の間に割って入る。
「バロム……!」
「ゼキア、お前の部下の大半は満身創痍、これ以上戦いを続けても兵をいたずらに失うだけだ……投降してくれ」
「ふざけた事を抜かすな!! 我らは魔人王様のためなら命を捨てる覚悟がある! 捕虜になるぐらいなら、ここで戦い死んでくれる!」
「ゼキア……!」
「その魔人王がもはや仕えるべき存在ではなくなったとしてもか?」
「何だと!?」
私の言葉にゼキアが反応すると同時に、バロムは振り返り私の方を見た。
「ヤタイズナ、それはどういう意味なんだ!?」
「言葉通りの意味です……あの巨大な生物、アレが新たな魔人王なんですよ」
「何だって!?」
「あの化け物が魔人王様だと!? 貴様私を謀るつもりか!」
「謀ってなどいない、私の眼の前で魔人王はあいつ……クルーザーに喰われ、そして魔人王の力を奪い進化したあいつこそが今の魔人王なんだ!」
「喰われた!? 魔人王様が喰われただと!? 貴様、出鱈目(でたらめ)も大概に……」
「いや、恐らく事実なんだろう……薄らとだが、あの巨大生物から私達の根源とも呼べるモノを感じていた……」
「先生もですか……私も感じていました……」
私の言葉で確信を持ったバロムとディオスの言葉に、ゼキアの部下の魔人達に騒めきが起こる。
「ええい! そうやって我等を動揺させ、隙を突く魂胆だろう! 皆武器を構えろ!」
ゼキアが大剣を突き出し、部下を鼓舞して戦意を高めようとする。
だが、ほとんどの魔人族達は武器を下ろしていた。
「お前達……っ!?」
「もう止めるんだゼキア……ヤタイズナと先生の言葉で皆もう気付いてしまったんだ……もう自分達が戦う理由が無い事に……お前だってそうだろう!?」
「っ……!」
ディオスの言葉にゼキアは大剣を持つ拳を震わせながら俯いた。
「しかし……! 我等は魔人王様に忠義を捧げた……たとえその魔人王様が消えようと、最後までその忠義を貫くのが……!」
「ゼキア……」
「お前が自分の意思を貫くことは止めはしない……だがそれに部下を巻き込むのは違う、一軍の将ならば己がエゴよりも全体の事を考えるんだ」
「……これまで、か……」
ゼキアは大剣を地面に突き刺し、それを合図に他の魔人兵たちも次々と武装解除していく。
「我々はお前達に投降する……」
ふぅ……とりあえずこれで駐屯地で争う事は避けられたな。
しかし大分時間を食ってしまった……急いで魔鳥王に話を聞かなければ……
そう考えた時、突如地面が大きく揺れた!
「な、何だ!?」
「ぬおおおおっ!?」
「どうやら、最適化が終わってしまったようですね……!」
「それって……まさか!?」
『『『ギシャアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!』』』
私が上を見上げると、三つの首から狂ったように叫び声を上げるクルーザーの姿が見えた!
「遂に始まってしまった……『世界喰滅の日』が」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます