第299話 カブトvsヘラクレスオオカブトⅡ

私の角と奴の角がぶつかり合った瞬間、凄まじい衝撃波が発生し瓦礫が飛び散る!


「オオォォ……!  まだまだァァァァァァッ!」

「オオォッ! もっとだ……もっともっと私を昂らせてくれェェェェェェ!」


 私はさらに力を込めて押し込もうとするが、奴も力を強めてきて鍔迫り合いの状態となる。


「ぐぬゥゥゥゥゥッ……!!」


 互いに一歩も譲らない状況の中、私の角が徐々に押されていく。

 駄目か……ならばッ!


 私は角の角度を変えて奴の角を滑る様にして受け流し、奴の顔に近づく!


「ヌゥ!?」

「炎よ、私の脚に集まれ、《灼熱の爪》!」


 私はギリエルに接近すると同時に角の炎を操炎で操り、六本の脚の先に集中させる!


「喰らえぇえッ!」


 至近距離で灼熱の爪でギリエルの顔を引っ掻く!


「グオオオオッッ!?」


 顔を引っ掻かれたギリエルが怯みながらも身体を大きく振って、私を振り払う。


「《灼熱の斬撃》《灼熱の斬撃》ッ! 《灼熱の角・槍》!」


 灼熱の斬撃を放ちながら灼熱の角・槍で突進する!


「この程度で隙を作ったつもりか!」


 ギリエルは翅を広げ私目掛けて飛翔する。


「その技では私には勝てぬと忘れたかァ!」

「分かっているさ! だがこれはさっきとは違う!」


 私は突進の速度を増しながら身体を高速回転、そのまま前のある灼熱の斬撃達を取り込み巨大な炎のドリルと化す!


「《灼熱の螺旋槍》ォォォォォォッ!!」


 巨大に渦巻く紅蓮の螺旋がギリエルに襲いかかる!


「面白い! ならばこちらも受けて立とう!」


 ギリエルは私と同じように翅を広げて回転する。


「オオォッ……! 《蛮勇の突撃槍》ッッ!」


 ギリエルの全身が黄金の闘気に包まれ、その勢いのまま私へと向かってくる! 


 両者互いに渾身の力でぶつかり合い、轟音が鳴り響く!

 2つの強大なエネルギーが衝突した事で空間が激しく歪み、天井の一部が崩れ落ちる!


「ウオアアッッ!」

「ヌウゥッッ!」


 互いを押し合う中、私は自らの身体に鞭を打ち、脚を踏ん張らせる! ……負けてたまるか……!


「負けるものかァァァァァァァァッ!」

「ヌゥゥ!?」


 私の雄叫びと共に灼熱の螺旋槍の炎が蒼色へと変化する!


「ウオオオオオオオオオオオオオッッ!!」

「馬鹿なッ! 私が押されて……!? グオオオオオオッッ!?」


 私が全力で身体を前に押し出し、その勢いでギリエルを弾き飛ばした!

 弾き飛ばされたギリエルは地面に激突、地面が陥没し土煙が舞うが、すぐに起き上がり体勢を立て直す。


「一瞬とは言え私の力を凌駕するとは……素晴らしい! それでこそ我が最期の戦いの相手に相応しい!!」


 ギリエルは興奮した様子で声高らかに叫びながら私に突撃し、蛮勇の角を振り下ろす! 私はそれに臆する事なく灼熱の角で受け止めた!


「クゥゥゥゥッッ!!」

「後少しで我が肉体は限界を迎える……この刹那の時間を、出し惜しみ一切無しの最高の闘争を共に謳歌しようではないかァァァァッ!!」


 ギリエルが力を込めて蛮勇の角を押し込み、私の脚が地面に食い込まされる!


「グアアアアアアアッ!?」

「どうした? まさかこれで終わりでは無いだろうなァァッ!?」

「……当然、だぁぁっ……! はあぁあああっっっ!!」


 私はギリエルが蛮勇の角を押し込む力を緩めた一瞬の隙を突き、全身の筋肉をフル稼働させギリエルの角を跳ね上げた!

 その反動によりギリエルの身体が大きく仰け反り、腹部が露わになる。


「《灼熱の角・槍》!」


 すかさず私はギリエルの腹部目掛けて灼熱の角・槍で連続突きを放った!


「オオオオオオオオオオオオッ!!」

「ヌグゥゥゥゥゥゥゥゥッ!?」


 腹部に連続突きを受けたギリエルの口から苦悶の声が上がる。


「まだまだだぁァァァァッッ!!」


 私はただひたすら無我夢中で灼熱の角で攻撃を続ける!


「ヌ……ガァ……! オオオオオオオオオオオオッ!!」


 ギリエルが雄叫びを上げながら翅を羽ばたかせて後方に下がりつつ右前脚で薙ぎ払い攻撃を行う。

 私はそれを後ろに跳んで回避した一瞬の隙を狙って、奴が蛮勇の角で突き刺そうと迫る!


「貰ったァ!」

「させるかァァッ! うぉおおおおっ!! 《灼熱の螺旋槍》!!」


 私は身体を回転させて蛮勇の角を紙一重でギリエルの攻撃を回避、そのまま奴の前胸部へ強烈な一撃をお見舞いする!

 蒼炎の灼熱の螺旋槍がギリエルの前胸部の甲殻を焼き貫いた!


「グオオオオオオオォォッ!! お……のれェェッッ!!」


 ギリエルが叫び、回転し続ける私を左前脚で掴み強引に引き剥がし、私を投げ飛ばした!

 投げられた私は空中で身を翻し着地した。


「オオ、オオォォ……」


 ギリエルの前胸部には私の灼熱の螺旋槍によって大きな穴が空いていたが、焼かれているため体液は漏れ出てはいなかった。


「ハ……ハハッ……ハハハハハハ! 私の身体にこれほど大きな傷を負わせたのはお前が初めてだよ……最高だよヤタイズナ……! この一時、貴様との戦いに心から感謝する……! 私は今、至上の幸福を感じているぞォォォォォッ……!!」


 ギリエルは狂気と恍惚が入り混じった声で高らかに叫ぶ。


「だが残念な事にもうすぐ時間切れのようだ……次が私の最後の攻撃となるだろう……勝利の女神がどちらに微笑むか分からぬが、だからこそ悔いの無いように全力を出し切ろう! 魔蟲王ヤタイズナ!!」


 っ! 来るか、奴の最強の技……!


 私はギリエルの真正面で何時でも魔蟲の流星を放てる態勢を取る。

 奴も地面を強く踏みしめて構えを取った。


 十数秒の静寂の後―――


「受けよ、我が奥義……!」


 その言葉と同時、ギリエルの前胸部の蛮勇の角の姿が霞み、十二本に増える!


「《十二の試練》ッッ!!」


 十二本の蛮勇の角が私目掛けて飛来する!


「《魔蟲の流星》!!」


 私は翅を広げ飛翔し脚を畳んで高速飛行形態を取る。

 そして全身を蒼色の炎が包み込み、私は音速を超えた速度でギリエルに突っ込み、迫る複数の蛮勇の角を回避し突き進む!


 よし! このまま一気に……何っ!?


 迫る複数の蛮勇の槍を通り過ぎ、そのままギリエル目掛けて進もうとした私の眼前に、蛮勇の角が迫っていた!

 ギリエルめ……私が蛮勇の角を避ける事を予見して、同時攻撃では無くあえて時間差で来るように操ったのか!


 駄目だ……この距離では回避は不可能……もはやこれまで……いや! まだ方法はある。

 だがそれはまさしく諸刃の剣……私の身体がもつかどうか……だが、やるしかない!


「《魔蟲の流星》!!」


 私は高速移動中にもう一度魔蟲の流星を使用し、軌道を無理矢理変更して蛮勇の角を回避する!


「ぐぅぅぅぅゥゥッ!?」


 身体が軋み、全身に激痛が走る!

 やはり連続使用は身体への負担が尋常じゃない……!


 進路を変更した私の眼の前に三度蛮勇の角が迫っていた。


 私が軌道を変更するのも予測済みか……! 魔蟲の流星の残り使用回数は4回……いけるか……? いや、行くしかない!


「ッ……! 《魔蟲の流星》!」


 3度目の魔蟲の流星を使用し軌道を変更して蛮勇の角を回避! 


「ウオオオオオオオッ! 《魔蟲の流星》ィィィッ!!」


 さらに私は連続で魔蟲の流星を使い、複数の蛮勇の角をギリギリ掻いくぐりながらギリエルへと急接近する!

 身体全体にヒビが入っていくが構わない! 今この一瞬に全てを賭ける!!  4度目!……これで決める!!


「《魔蟲の……ッッ! 流星》ィィィィィィィィッッ!!」


 私は全ての力を振り絞り、全身全霊を込めた魔蟲の流星でギリエルの胴体に突っ込んだ!


「グガアアアアアアアアアアッッッ!?」

「これで終わりだアアァァァァァァァッ!!」


 私の身体はギリエルの甲殻を焼き切り、その身体を貫通した!

 ギリエルは仰向けで地面に倒れ伏し、私は地面に着地した。


「うおおお、ォォォォォオオオ……!」

「はぁ……はぁ……勝った、ぞ……ぐぅ!? があああああっ!!」


 地面に着地した私は身体に生じるとてつもない痛みに倒れ込んでしまう。


「ヤタイズナ!」


 私の元にミミズさんが駆け寄る。


「ヤタイズナ、大丈夫か!」

「ミミズ、さん……ああ、身体が凄い痛いけど、何とか動けるよ……」

「……お、オォォ……」


 倒れているギリエルが身体を震わせながら呻き声を上げた。


「まさか私が負けるとはな……だが、このゲームは、私の勝ちだ……!」


 その言葉と同時に、地面が揺れ、通路の奥からとてつもない衝撃波が発せられた!


「これは……まさか!?」

「ははははは……! 遂に魔人王様が復活なさられた……戦いには負けたが、ゲーム自体はこの私の勝ちで終わったのだぁ……!」

「間に合わなかったか……ヤタイズナよ、休んでおる暇は無いようじゃぞ」

「分かってるよ、ミミズさん……!」


 私は激痛に耐えながら起き上がる。


「行こうミミズさん、魔人王の元へ!」

「うむ!」


 ミミズさんが私の前胸部の角に巻き付き、私は翅を広げて通路の奥へと飛んでいく。




「はは、はははは……楽しかった……心底楽しかったなぁ……最後の最期でこんなに血肉湧き踊る楽しい戦いが出来るとは、私は何て幸せなんだろう……今お前の元へ行くぞ……弟、よ……はははははは……!」


 ギリエルは心底愉快そうに笑いながら、全身が灰色になり崩れ去った。











「第113回次回予告の道ー!」

「と言うわけで始まったこのコーナー!」

「遂に黒のギリエルを撃破したヤタイズナ! これで六色魔将は白のゼキアのみとなったのう」

「だけど安心するのはまだ早いよミミズさん」

「分かっておる……次回、遂に虫から始める魔王道のラスボスが登場するのじゃ!」

「一体どんなやつなのか……どれほどの力を持っているのか……」

「それは次回自ら確かめるのじゃ! それでは次回『魔人王、誕生』!」

「「それでは、次回をお楽しみに!!」」


 ・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので、次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。

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