第298話 カブトvsヘラクレスオオカブトⅠ
「《灼熱の角・槍》! ハァァァァァァァァッ!!」
「温いと言ってるだろうがァァァッッ!」
私の灼熱の角・槍を用いた突進を、ギリエルは力任せにいなし、私を地面に叩き落とす!
「っ……!」
私は即座に身体を反転させて着地した私に、ギリエルの角突き攻撃が迫る!
「くっ!」
「……っ!?」
その一瞬、ギリエルの動きが止まり、私はその隙に攻撃を避けて後ろに下がる。
何とか回避できたが……だが何故奴は一瞬動きを止めたんだ……?
私が怪訝に思う中、ギリエルが悲しそうに呟く。
「おお……ビャハよ、よもやお前の方が先に逝ってしまうとは……! お前の方が私よりも長く楽しく生きると思っていたのに……」
何だって? 奴の言葉が事実なら……ガタクがビャハに勝ったのか! 良かった……
「ヤタイズナ! 前を見よ!」
私が安堵する中、ミミズさんの言葉で前を向くと眼前にギリエルの蛮勇の角が迫り来る!
「しまっ……!? ぐううううううっ!?」
咄嵯に防御するが、耐えきれずに私は吹き飛ばされ、壁に激突した!
「馬鹿者! 戦いの最中に気を抜く奴が居るか!」
ミミズさんの言う事はもっともだ……私としたことが、とんだ油断だ……!
私が壁から落ちて、すぐに体勢を立て直し、ギリエルを見据える。
「弟よ……黄泉の世界で待っていてくれ……私もすぐそちらに行くからな……残りの時間を余すことなく使い、お前の分までこの最大最高のゲームを楽しみ尽くそうぞォォォォォォォォッ!!」
ギリエルの全身から今までとは比べ物にならないほどの闘気が溢れ出す!
「さぁ、最後の最期まで私を楽しませてくれ、魔蟲王ヤタイズナァァァァァ!」
「っ……!」
『オオオオオオオオオォォォォォォ……!!!』
互いに睨み合う中、再び魔人王の声が通路内に響き渡ると同時にギリエルが翅を広げ私に突っ込んでくる!
正攻法のぶつかり合いではこちらが不利……ならばっ!
私は全部の脚で地面を掴み、迫るギリエルの蛮勇の角の先端部にタイミングよく角をぶつける!
「ぐぅ……うおぉ……ぉぉッッ!! ぬぅああああああああっ!!
そのままギリエルの突進の勢いを利用して、後ろへ投げ飛ばした!
「何ィィッ!? チィィッ!」
投げ飛ばされたギリエルは壁に激突する前に、翅を羽ばたかせて衝撃を殺し、壁に着地する。
「今のは少し驚いたぞ! だがまだ甘いィィィッ!」
ギリエルは壁を蹴り、再び突撃する!
私は横に跳んで突進を回避!
だがその刹那、ギリエルが脚での引っ搔き攻撃を仕掛けて来た!
紙一重でそれをかわすものの、その一瞬の攻防で態勢が崩れてしまう。
続いて右中脚での薙ぎ払い攻撃をもろに受け、身体がメキメキと軋む。
「っぅぅ……!」
その一瞬の硬直を見逃さず、今度は左の爪での攻撃! これは避けられない! なら……!
私はあえてギリギリで攻撃を受け、その力を利用し身体を回転させて懐へ飛び込みギリエルの身体に渾身の頭突きを叩き込む!
「グヌゥ……!」
「《灼熱の斬撃》ッ!」
ギリエルが苦悶の声を上げる中、私は間髪入れずに灼熱の斬撃を繰り出す!
しかし私の攻撃は甲高い音と共に弾かれる。
灼熱の斬撃では駄目か……やはり灼熱の角で直接やるしか……!
「 そんなもので私が楽しめると思っているのかぁ!?」
「うあああっ!?」
ギリエルの左中脚に背中を掴まれ、壁に向けて放り投げられるが、ギリエルが先程やったように翅を広げて勢いを殺し壁に着地し、ギリエルを睨む。
くそっ……! やはり魔蟲の流星を使わなければ致命傷は与えられそうにないか……だが魔蟲の流星は軌道が単調なため、奴に先読みされ回避された後にカウンターを受けかねない。
私が必死に考える中、ギリエルはゆっくりと間合いを詰めて来る。
くそっ、どうすれば……
「ヤタイズナ! 何を焦り迷っておるのじゃ!!」
「ミミズさん……!」
悩み思案する中、後方で私とギリエルの戦いを見ていたミミズさんが声を上げた。
「良いかヤタイズナ! この戦いに勝っても、魔人王の復活が阻止できなければ次の戦いが控えておる……じゃがその事は今は忘れよ!」
「何だって?」
「と言うか今は奴との戦い以外は全部忘れろッ!」
「ハァッ!?」
ミミズさんの言葉に私は思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。
「今のお前は世界を救うためとか、レギオン達の分まで戦うとかそういう重苦しい上に小難しい事を考え過ぎているのじゃ! ただ真っ直ぐに、目の前の敵をぶっ飛ばす! そんな感じに本能とか直感とかでこう……ババーッとやるのじゃ!!」
……最後の方はもはや意味不明だけど、でもミミズさんの言いたい事は分かる。
私達は魔人王復活の阻止のためにここにいる。そのためにはまずギリエルを倒さなければならない……そしてその後の事を考えて戦っていた……だけどそれでやられてしまっては元も子もない。
その通りだ……今私がやるべきことは、奴を……ギリエルを倒す事だけだ!
「ありがとうミミズさん、おかげで気が楽になったよ」
「ふふん、さぁ行って来いヤタイズナ!」
「ああ!」
私は大きく深呼吸をして、ギリエルに向かって飛び出した!
「ほう、先程までの温さが消えた……吹っ切れたか……いいぞ! かかってこい魔蟲王ヤタイズナァァッ!!」
「《灼熱の角・槍》ッッ!!」
私は全力の灼熱の角・槍による一撃を放ち、それをギリエルは蛮勇の角で真っ向から受けた!
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