第274話 廃城地下の激戦Ⅰ

『――ほ、報告! 城に謎の巨大魔物が出現し暴れ回っています! 城壁の一部が破壊され、更に敵軍の侵攻を受け六色大隊の戦力約4割が消失しました! そ、その上魔蟲王と数匹の魔物が城内へと侵入……ひっ!? ギャアアアアアア……!!!』

「……っ」


 部下からの連絡が途絶え、想像を絶する被害報告を聞いた白のゼキアは、静かに水晶を懐へとしまう。


「先程の揺れは以前大樹海で感じたモノと同じと思っていたが、やはりあの巨大魔物の仕業か……」


 バロムが剣を構えたままゼキアを警戒する中、魔人兵の一人がゼキアに進言する。


「ゼキア様、ここは一度城に撤退しましょう、大隊長であるゼキア様を欠いては連携が取れず敵に蹂躙されるだけです!」

「……分かっている、城に戻るぞ!」


 ゼキアはバロムを睨みながら、懐から数個の小さな玉を取り出し、火を付けた。


「ここは引いてやる……だが次は必ず倒す!」


 ゼキアが投げた玉が爆発すると、辺り一面に煙幕が張られ視界が閉ざされる。

 そして数十秒後、煙が消え視界が晴れると、ゼキア達の姿は何処にも無かった。


「……」

「先生!」


 後方からディオスがバロムの元へ駆け寄って来る。


「ディオスか、彼女と他の者達はどうなった?」

「はい、地下に隠れていた者達は皆集めましたが、衰弱している者が多くて……」

「そうか……では急いで駐屯地に連れて行こう、彼女達の治療も必要だ」

「はい!」


 バロムは一瞬、廃城の方角を見た後、ディオスと共に駐屯地へと向かった。









「――《灼熱の斬撃》ッ!」

「《大鎌鼬》!」

「魔人王様万ざっ!」

「ま、魔人王ざま、ばんざっ」


 私とガタクの攻撃で黒装束の魔人達は真っ二つに切り裂かれる。


「城内がこれほど手薄とは……妙で御座るな、殿」

「ああ……何か嫌な予感がする」


 ガタクの言葉通り、城内の敵は驚く程少なかった。

 殆どの兵を城外の防衛に回しているからなのか? それとも何か作戦が?


「とにかく今はバロムが言っていた地下への入り口を探すぞ!」


 私達は城の回廊を進み、時折向かって来る黒装束魔人を倒し進んで行く。


(ごしゅじん、あれー!)


 スティンガーが尻尾で前を差すと、大きな扉があった。


「あれが例の扉か!」


 私は扉の前に立ち灼熱の斬撃で扉を焼き斬って破壊すると、地下への階段が姿を現した。



「よし、行くぞ……!」

『『おおーっ!』』


 私達は階段を降りて行き、地下室へと辿り着くと、無数に並ぶ巨大な蝶の蛹達が目に映った。


「これが、バロムの言っていた魔人族を生み出すための装置か……」


 蛹を観察すると、総ての蛹が黒ずんでおり、更に取り付けられている管が途中で取り外されている。


「これは……この蛹達はもう死んでいる……」


 魔人王復活のために余分なエネルギーを回す余裕はないと言う事だろう……敵ながら可哀想に……


 私は蛹達に黙祷した後、地下室の奥へと進み、大広間に辿り着いた。


 そこには――


「ビャハハハハハハハハハッ! よく来たなぁ魔蟲王ヤタイズナぁっ! 歓迎するぜぇ?」


 巨大な樹の形をした肉塊の上に座っている六色魔将、赤のビャハと、大量の黒装束の魔人達が待ち構えていた!

 黒装束魔人達は地上で戦った魔人達と同じく、魔蟲の宝珠で身体の一部が蟲へと変異している。



「ビャハ……!」

「これだけの数が待ち伏せていたとは……上が手薄だったのはこのためで御座るか」

「ビャハハハハハ! 最初で最後の祭りだからなぁ、ど派手にやらねぇと盛り下がっちまうだろぉ?」

「悪いがお前のくだらない楽しみに付き合う気はない! この奥へと進ませてもらうぞ!」

「ビャハハハハ、おいおいつれねぇこと言うなよぉ、俺達の仲じゃねえか? たっぷりと楽しもうぜぇ! さぁてめぇ等、行きやがれぇ!」

『『魔人王様万歳魔人王様万歳魔人王様万歳!!』』


 ビャハの指示で黒装束魔人達が一斉に襲い掛かって来る。


「来るぞ! 全員気を引き締めろ!」


 私達は戦闘態勢を取り、黒装束魔人達を迎え撃つ!

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