第273話 マモン森林を突破せよⅩ

 クルーザー……以前ランド大樹海北の森での戦いの時にギリエルによって何処かへと投げ飛ばされて以降行方をくらましていたが、まさかこのマモン森林にまで現れるとはな……何か宿命のようなモノを感じるよ。


 クルーザーは地中から這い出ると、その長い胴体を伸ばして地上にいる魔人族達を薙ぎ払う!


「ぐあああっ!?」

「ギャアァッ!?」

「ヒイィッ!?」


 クルーザーの攻撃により魔人族達が宙に吹き飛ぶ。


「キシャアアッッ!」


 そして胴体に付いた無数の脚で魔人達を掴み取り、一人一人順番に口へと運び噛み砕いていく。


「うぎゃああああああっ!?」

「た、助けてくれえーーーーーー!! ぐげぇっ!?」

「グゲェエエッ!!」

「ウゲッ、ガボォッ……!」


 次々と魔人を喰らって行くクルーザーの背後から、変異サイクロプスが迫る!


「ウオオオオオオオオ!!」

「キシャアッ!」


 だが次の瞬間、クルーザーの長い胴体がサイクロプスの身体に巻き付きそのまま絞め上げていく!


「う、ウオオオ!? ゴガガガガッ……!?」


 クルーザーの締め付けにより変異サイクロプスは全身の骨が砕け、捕まえた魔人達を喰らい終えたクルーザーはサイクロプスの頭部に齧り付き、甲殻ごと砕いて喰らって行く。


「ウオ、オ……オォォ……」


 変異サイクロプスは全身を痙攣させながら絶命し、クルーザーは咀噛を続けている。


「あの変異サイクロプスの甲殻をまるで紙のように……凄まじいな」


 クルーザーの奴、更に強くなったようだな……しかも全身の甲殻も前よりも禍々しいモノに変化している。

 私はクルーザーに鑑定を使い、ステータスを確認する。







 ステータス

 名前:クルーザー

 種族:イビルセンチピード

 レベル:325/300

 属性:地

 ランク:A+

 称号:西の森王、暗殺者、力の渇望者、喰らい尽くす者

 スキル:不明

 エクストラスキル:不明

 ユニークスキル:不明








 レベル325!? 


 どういう事だ? 奴のレベル上限は300だ。普通レベル上限に達すればそこで終わりか、または進化してレベルが1に戻る筈だ。


 だが事実クルーザーのレベルは300を超えている……しかもスキルが全部不明になっている。

 まさか、オ・ケラのようにアバドンに改造されていた?


 だがそれだとアメリア王国での決戦時にクルーザーが居なかったことの説明がつかない……




 私は考え込むが答えは出ず、その間にもクルーザーは周囲の魔人族を喰らっていく。


「ウオオオオオオオッ!」

「ウオオッ!!」

「オオオオオッッ!!」


 変異サイクロプス達がクルーザーの身体に取り付き、胴体の一部を地面に押さえつける事で動きを止める。


「今だ! 奴を殺せぇーッ!」


 魔人族達と変異魔物達が一斉にクルーザーへと襲い掛かる!


「キシャアアアアアアアアアッッ!!」


 だがクルーザーは胴体をしならせ変異サイクロプス達を弾き飛ばし、身体を震わせ始めた。


「キシャアアアアア……」

「何だ……?」


 私が疑問に思っていると、クルーザーの無数の脚が変形し、カマキリの前脚へと変異したのだ!


「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」


 そして叫び声を上げながら長い胴体を螺旋状に回転させ始めた。


「ヤバい! 皆、下がれェェェェ!!」


 私としもべ達が一斉にクルーザーから離れる中、高速回転するクルーザーの胴体の鎌脚が魔人族と魔物達を切り裂いていく!


「に、逃げ……ギャアアアアッッ!?」

「ギイヤァッ!?」

「グギャアッ!?」

「ウゲエエッ!?」

「ウオオオオオオオオオオッ!?」


 次々と魔人族と魔物達がバラバラに切り刻まれ、血飛沫を上げる!

 そして回転を止めた頃には、周囲は肉片と鮮血で埋め尽くされていた。


 何て恐ろしい威力なんだ……まるでエンプーサの死神の暴風刃のようだ……しかも体の一部を変形させられるようにまでなっているとは……


 私が戦慄する中、クルーザーは周囲の肉塊を貪り始めた。


「キシャアアアアアアアアア……!」


 そこで私はある事に気付く。


 クルーザーが肉塊を喰らうたびに、身体が大きくなっているのだ!


「これは……まさか成長しているのか!?」


 私はまさかと思い、慌てて鑑定を行う。







 ステータス

 名前:クルーザー

 種族:イビルセンチピード

 レベル:329/300

 属性:地

 ランク:A+

 称号:西の森王、暗殺者、力の渇望者、喰らい尽くす者

 スキル:不明

 エクストラスキル:不明

 ユニークスキル:不明







 やはり! レベルが上がっている!

 クルーザーは敵を倒すだけではなく、喰らう事でレベルを上がっているんだ。


 そのままステータスを閲覧しながらクルーザーを観察していると、一定のタイミングで更にレベルが上がって行っている。


 恐らく喰らった敵の数が一定数に達すると、レヘルが上がるようだ。

 だが何故クルーザーはレベル上限の理を無視して、レベルアップし続けている? そこで私はふとある事を思い出した。


 そうだ! 以前大樹海でステータスを確認した時、クルーザーは蠱毒とか言うユニークスキルを獲得していた。

 もしかしたらそのスキルの影響で理から外れたのかもしれない。


 私が思案する中、肉塊を食い終えたクルーザーが私の方を向いた。


「キシャアアアアアッ!」


 そして私目掛けて突進して来る!


 くっ……魔人王復活を阻止しなければならないと言うのに……! だがこうなってはやるしかない!


「《灼熱の斬撃》!」


 私はクルーザー目掛けて無数の炎の斬撃を撃ち放つ!


「キシャアアアアアアアアアッ!」


 だがクルーザーは身体を回転させ、カマキリの前脚を振るって炎の斬撃を全て打ち消してしまった。


「チィッ!」

「キシャアアアアアッッ!」


 クルーザーは回転しながら私に迫って来る!


「この回転攻撃は厄介だ……しかし!」


 私は翅を広げクルーザーの上空へと飛ぶ!


 渦の中心は無防備だ!


「キシャアアア!」


 クルーザーは回転を止め、頭上の私目掛けて身体を伸ばして、顎肢で私に噛みつこうとする!


「その動きも読んでいたぞっ! 《灼熱の角》!」


 私は一気に急降下してクルーザーの頭部右側を通り過ぎ、そのままクルーザーの鎌脚を胴体ごと焼き斬っていく!


「ウオラァァァァァァァァァッッ!!」

「キシャアアアアアアアアアッ!?」


 そして地面に着地し、すぐさまクルーザーから離れる。

 クルーザーは右半分の脚の大半を失い、更に私の炎が切断部を燃やしている。


 どうだ、いくら自己修復を持っていても、封印の炎が燃えている限り再生は不可能だ。


「キ、キシャアアアアア……キシャアアアアアアア!!」


 突如クルーザーが叫び、その口に光が集まって行く!


 あれは……まさか、西の森王が使っていた、熱死光線!?


 私は咄嵯にその場から飛び退くと、クルーザーの口から極細の熱線が放たれた!


「キシャアアアアアアアアアアアッッ!!」

「何っ!?」


 だがその熱線は私目掛けてでは無く、クルーザー自身の右胴体を焼いていく!


 まさか、無理矢理封印の炎を消し去ろうとしているのか!?


「キシャ……ア……ア……キシャアアア……」


 自らの胴体を蝕む封印の炎を身体の後と削ぎ落とし終えたクルーザーの右胴体が蠢き、脚が再生して行く。


「キシャアアアアアアアアアアアアッ!!」


 そして再生を終えた瞬間に私の方を向き、再び熱死光線を撃ち放とうとする!


「喰らうで御座る、《大鎌鼬》!」

(《斬撃》《斬撃》《斬撃》《斬撃》《斬撃》ィィ!!)

(《水鉄砲》!)

(《大鎌鼬》っす!)

「キ、キシャアアアアアッッ!?」


 熱死光線を放つ前に、ガタク達が一斉にクルーザーを攻撃した!

 クルーザーは悲鳴を上げながらよろめくが、そのまま極太の熱死光線を発射する!


「キシャアアアアアアアアアッ!」

「くぅぅっ!」


 私は空を飛んでギリギリで熱死光線を回避する!


 発射された熱死光線は廃城の城壁の一部を消滅させ、そのまま北側の森へと進んで行く!









「――せやぁぁぁっ!!」


 勇者ユウヤが変異を切り裂く中、背後から眩いほどの光が迫ってくることをユウヤは察知した。


「不味い! 全員、退避だー!」


 ユウヤの指示に一瞬驚くアヤカ達であったが、瞬時に退避を始める。


「皆、急いで逃げてーっ!」


 ウィズも走りながら冒険者たちに呼びかけ、急いで後方へ走って行く。

 その数秒後、極太の光線が北側の戦場を焼き払って行く!


 そして光線が消滅した後地面は焼け焦げ、多くの敵が消え去っていた。


「皆、無事か……?」

「私達はなんとかね……でも冒険者何人かは……」

「……そうか……だが敵にも甚大な被害があったようだな、このまま一気に叩くぞ!」









 あ、危なかった……っ! アレを喰らっていたら私の身体は欠片も残っていなかっただろう。

 北側のウィズと勇者達は無事だろうか……?


「キシャアアアアアアアアア!」


 私が北側を気にする中、クルーザーが私目掛けて突進して来たその時、無数の衝撃波がクルーザーを襲った!


「キシャアアアアア!?」


 突如攻撃を喰らったクルーザーが後方を向くと、そこにはエンプーサの姿があった。


「クハハハハハハハハハハ! なにやら騒がしいと思ったら、あの時の魔物かァッ! 丁度良いあの時の続きをさせてもらうぞォォ!」

「キシャアアアアアアアアアアアアアッッ!!」


 エンプーサとクルーザーが睨みあう中、ガタク達が私の元に来る。


「殿、城壁の一部が消滅した今が好機、廃城内へ突入するで御座る」

「ああ、だがエンプーサだけに任せては色々と心配だ……部隊を二つに分ける! ガタク、スティンガー、ソイヤー、ティーガー、レギオンとアント達は私と共に来てくれ!」

「承知で御座る!」

(わかったー!)

(お任せください!)

(了解、敵は全て肉団子にします)

(畏まりました)

『『ギチチチチィィィィィ!!』』


「他の者達はエンプーサと共にここで戦ってくれ」


(分かりましたー!)

(お任せくださいですわ!)

(俺、あの野郎ぶつ切りにする、言う)

(僕の歌で皆をサポートします!)

(合点承知でぇ!)

(まぁ、戦ってやるっすよ)

「よし、全員行動開始だ!」


『『了解ッ!!』』


 私はガタク達を引き連れ、城壁を通り抜け廃城内へ突入する!


「キシャ!? キシャアアアアアアアアア!!」

「《大鎌鼬!!》」


 クルーザーが私を追おうとするが、エンプーサが大鎌鼬でそれを阻止する。


「何を余所見している? 貴様の相手はこの我だろうが!」

「キシャアアアアアアアアア……!」







 ――廃城、地下最奥の間。


「――ビャハハハハハ! 奴ら城の中に侵入しやがった!」

「そうか……だがここへの出入り口は一つしかない以上、奴らの動きは筒抜けだ」

「だな……さぁてと、それじゃあそろそろ俺も行くとするかねぇ……」


 ビャハは槍を手に持ち、扉へと歩き始めた。


「ビャハよ」

「ん?」

「楽しんで来い」

「ああ、人生で最高の日にしてやるぜ! ビャハハハハハハハハハハッ!! それじゃあ兄ちゃん、行って来るぜぇ!」









「第109回次回予告の道ー!」

「と言うわけで今回も始まったこのコーナー!」

「幾多の敵を撃破し、アクシデントも乗り越え、私達は遂に廃城内部に侵入する事に成功した!」

「うむ、ここからが本番じゃ、気を抜くでないぞ!」

「所で数話前にこっちに向かってたミミズさんは何処に?」

「もうじきそっちに行くから待ってるのじゃ! それでは次回『廃城地下の激戦』!」

「「それでは、次回をお楽しみに!」」


 ・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので、次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。

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