第260話 暗躍する者達Ⅶ
――マモン森林、廃城、円卓の間。
「ビャハハハハハ! 赤のビャハ、ただいま戻りました」
「……うむ、よくぞ戻った……魔封石は?」
「ビャハハ、勿論総て回収してきましたよ、いやぁ途中で転移魔道具が壊れて帰るのが面倒でしたよぉ……やっぱ試作品は駄目だな」
ビャハは懐から六つの魔封石を取り出し、円卓に置いた。
「これで魔人王様復活の準備は整った……ゼキア」
「はっ」
ギリエルに呼ばれ、ゼキアが立ち上がる。
「恐らく魔蟲王とバロム達が魔人王様復活の阻止を企てているだろう……貴様に魔人軍の全指揮権を与える、この城の防衛は任せたぞ」
「了解しました! このゼキア、身命を賭して必ずや敵を打ち倒します!」
「ビャハハハ、気合入ってんなぁ……そう言えばギリエル様、実はディオスの奴が生きていましてねぇ」
「何?」
「ディオスが生きていた!? それは本当かビャハ!」
「ああ、魔蟲王とバロムの元に居たぜぇ、あの感じだと、大好きな先生側に寝返ったんだろうなぁ?」
「何だと……ディオスが先生――バロムの元に……」
「ビャハハハハ! 何だショックなのかぁ? これじゃあ防衛も任せられそうに無い……」
「これ以上の愚弄は許さんぞビャハ」
ゼキアは鋭い眼光でビャハを睨み、詰め寄った。
「たとえかつての恩師と友が敵であろうと、私は手を緩める様な愚か者では無い! 全力で奴らを屠(ほふ)って見せる!」
ゼキアはそのまま円卓の間を出て行った。
「おぉ怖っ、ゼキアの奴苛立ってるみたいですねぇギリエル様?」
「……ビャハ」
「ビャハハ、何ですかギリエル様?」
「ここに居るのは私とお前だけだ、そのいい加減な敬語は止めて構わんぞ?」
「ビャハハハハハ……ハァ……悪りぃ悪りぃ、ずっと敬語やってると、何かついこっちで喋っちまうんだよ」
そう言ってビャハはギリエルの隣に行き、円卓に座った。
「ふっ……お前に敬語で話されていると、こっちは背中がむず痒くてたまらんのだぞ?」
「全身外骨格の身体でむず痒いとか言われても説得力ねぇっつうの! ビャハハハハハハ!!」
「ふふふ……しかし、ディオスが離反した事で我ら六色魔将も残るは三人……随分寂しい円卓になったものだ」
「ビャハハハハハハハ!! よく言うぜ! ブロストの野郎がザハクを殺したのも、ディオスを始末しようとしたことも全部知ってた上で泳がせてたくせによぉ!」
「ビャハよ、魔人族の命は全て魔人王様の物だ……たとえあのブロスト……アバドンであろうとも、魔人王様復活のために必要な命だったのだ、奴も地獄で誇りに思っているさ」
「ビャハハハハ! そいつは違ぇねぇ!」
「……で、ビャハよ、アバドンの隠れ家から例のモノは?」
「ビャハハハハハ、そりぁもうどっさりと見つかったぜぇ? 兵士全員に余裕で行き渡ると思うぜ?」
「では後でゼキアの元へ持っていかせるとしよう……例の娘は?」
「ああ、ファレナなら、身体の変化に悶え苦しんでたぜぇ?」
――廃城内のとある一室。
「が、あああ、アアアアアアアッッッ!!?」
部屋中に響き渡った悲鳴の後、頭を抱えて苦しみ続けるファレナの姿があった。
「グウゥゥ……ア、アガ……ギィ……」
やがて彼女の身体はメキメキと音を立てながら蠢き続ける。
「ガ、ガガ、ガア、ガ……ガタ、ク……ワタシ、は……」
ファレナは首に着けたネックネスを握りしめ、痛みと苦しみに耐える。
そして、彼女の声は次第に小さくなっていき、遂には完全に聞こえなくなった。
「……ガ…………ギャ……」
それと同時に、ファレナの口から大量の糸が吐き出され、身体に纏わり付き、繭を作り出した。
「――まぁ、二、三日ぐらいで使い物にはなるんじゃねぇの?」
「そうか……奴らの自爆で失った身体の再生も完了した……これですべての準備は整った……ビャハ、生体部品の生命力を全て魔人王様復活に回す準備をしろ」
「了解、まだ羽化前の魔人族達はどうする?」
「処分しておけ、彼等も自らの命を魔人王様に捧げられるなら本望だろう」
「ビャハハハハハ! 遂に始まるんだなぁ!」
「ああ……我等の最期の任務が始まりを告げるのだ……必ず魔人王様を復活させるぞ」
「ビャハハハハハハハハッ!! 祭りだ祭りだぁ! 刃向かう奴らを殺しまくってパーッと華やかに祭りを盛り上げ、華々しく散ろうじゃねぇか!! ビャハハハハハハハハハハハハハハ――」
「――なぁ、兄ちゃん?」
「そうだな……弟よ」
邪悪なる者達の笑い声が、円卓の間に響き渡った――
「第107回次回予告の道ー!」
「魔人族の計画が進む中、ビャハとギリエルの口から発せられた衝撃の言葉!」
「奴らが兄弟とはどういう事じゃ? ううむ……謎は深まるばかりじゃ」
「とりあえず、いつも通り次回予告を始めようか」
「うむ、次回は再び儂らサイドの話となるぞ!」
「私達と言ってもメインとなるのはディオスとウィズ……後、勇者達みたいだね」
「何ィ!? ここは前の話でも言っていた事を掘り下げるのではないのか!?」
「それも一応やるみたいだから安心して! それでは次回『明日に進む者達』!」
「「それでは、次回もお楽しみに!!」」
・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので、次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。
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