第258話 一族の想いⅡ
「全く……儂の口上をバカにしよってからに……もぐもぐ……」
怒ったミミズさんが不貞腐れて一人で菓子を黙々食べ始めたので、私は時間潰しに自分を鑑定し、現在のステータスを確認した。
ステータス
名前:ヤタイズナ
種族:イフリートビートル
レベル:200/500
ランク:S
称号:魔蟲王、昆虫の召喚師、南の森王、東の森王
属性:虫
スキル:上位鑑定、風属性耐性レベル4、角攻撃、酸耐性レベル3、回復速度上昇レベル3、穴堀の玄人
エクストラスキル:炎の心、封印の炎、灼熱の角、灼熱の角・槍、灼熱の角・鎧、灼熱の斬撃、昆虫の重鋼鎧、炎属性耐性EX
ユニークスキル:昆虫召喚、魔蟲の流星
魔蟲王……今まで魔王初心者や魔王中級者とか変な称号だったけど、これで私は正真正銘、六大魔王の一体になれたと言う事だ。
そして、私の新たなユニークスキル、《魔蟲の流星》。
これは今まで私が使ってきたスキル、《超突進》が進化したモノだ。
高温の炎を纏い、音速を超える高速移動を行いそのまま敵に突っ込む、その威力は圧倒的としか言えず、並大抵の敵であれば一瞬で仕留められる。
ただ、あの超突進が進化したスキルなので、やはりデメリットもある……速すぎるのだ。
その凄まじいスピードとパワーを私は完全に制御しきれず、短距離での小回りが利かず音速を超える衝撃により身体の負担も大きい。
この二週間の間に使用限界を確かめようと、連続で使用したら全身に激痛が走り、気絶してしまったからな……
その後間隔を空けて使用した結果、身体への負担も考えて、一日に使用できる回数は10回と言った所だ。
それ以上使えば身体がバラバラになってしまうかもしれない。
まぁそこまで使う事など稀だろうが、魔人族との決戦の際にはそう言ってはいられないだろう……あのギリエルが相手になるだろうしな……
私は北の森での戦いを思い出し、前脚で地面を引っ掻いた。
……あの時は何も出来なかったが、今度は絶対に負けない。
レギオン達の想いを胸に、私は前に進むんだ!
……ブゥゥゥゥン……
「ん?」
私が決意を固めていると、上から羽音が聞こえて来た。
上を見上げると、こっちに向かって飛んでくる人影が……
「ヤタイズナさーーーん!」
「オリーブ!?」
そう、オリーブが上空から翅を羽ばたかせて私の元へと飛んできたのだ。
そして、中庭に降り立ったオリーブは、そのまま私に抱き着いた!
「はぁぁぁぁ……♪ 久しぶりのヤタイズナさんだぁぁぁ……」
オリーブは琥珀色の複眼を輝かせながら私に頬ずりをする。
「オリーブ……身体の方はもう良いんですか?」
「はい! この二週間で身体もすっかり元気になりました……この身体にも慣れちゃいました♪」
そう言うとオリーブは頭の触角が左右に動き、翅を力強く羽ばたかせる。
……砂煙が舞ってちょっと煙たいけど、もう新しい体に慣れている精神力は凄い。
オリーブ姫、身体が癒えたとはいえ貴女はまだ病み上がり、空を飛ぶのは控えた方が良いでしょう』
私達が話していると、テーブルに置かれている魔植王がオリーブに語り掛けた。
「魔植王様……申し訳ありません……」
『別に責めているわけではありませんよ、貴方の肉体は魔蟲の宝珠の呪縛から逃れはしましたが、完全に蟲人の肉体に変化している、もしものことがあってはいけませんからね』
「はい……所で魔植王様、一つご質問があるんですが……」
『何ですか?』
「蟲人って……身体構造は人より虫に近いんですか?」
『そうですね、身体の7割が虫の部分、3割が人間の部分ですね』
「それじゃあ……今の私はヤタイズナさんとほぼ変わらないと言う事ですね」
『そうなりますね』
「と言う事は、ですね……えっと……」
「?」
オリーブが頬を赤らめながら私をチラリと視た。
……なんだ? 私に関係する事なのかな?
そう思いながらもじもじとするオリーブを見ていると、オリーブは意を決し、口を開いた。
「……私とヤタイズナさんは、子供を作る事が出来るんですか!?」
「ぶふっっ!?!?」
オリーブの衝撃発言に私は腹部の気門から空気を一気に吐き出した。
『はい、可能ですよ』
「……っ!! やったー!」
魔植王はあっさりと答えると、オリーブは満面の笑みを浮かべ、ジャンプした。
「お、おおお、オリーブ!? な、何を言って……!?」
動揺する私に、オリーブは嬉しそうに私に抱き着いた。
「これでヤタイズナさんと結婚しても、何も問題ないです♪」
「けけけ結婚!?」
私が驚愕する中、オリーブは私の顔を見つめる。
「はい♪ 種族の差とか色々な障害があったけど……もう何も心配はありません……堂々とヤタイズナさんと結婚できます」
「いや、そんな急に結婚とか言われても……」
「……私と結婚するの、嫌、ですか……?」
「……いいえ、急すぎたのでびっくりしただけです……そうですね、あの時貴女に告白した時から、私はもう覚悟を決めていたというのに……」
私は真っ直ぐにオリーブの複眼を見つめ、宣言した。
「結婚しましょうオリーブ! そして同じ道を一緒に歩みましょう!」
「……はい!」
オリーブが頷いた瞬間、いつの間にか集合していたしもべ達が歓声を上げる。
「殿! ご結婚おめでとうございますで御座る!」
(ごしゅじんおめでとー!)
(お祝いですねー♪)
(主殿とオリーブ姫に祝福を!)
(俺、ご主人幸せそうで嬉しい、言う)
(そうですわね、テザーの言う通りですわ♪)
(よっしゃあ! 宴の準備だぁ!)
(お祝いの肉団子を用意しなくては!)
「……まぁ、祝ってやるっすよ」
(総員、魔王様を祝福せよ!)
『ギチチチィィィィィッ!!』
「お、お前達……嬉しいけど、なんか照れるな……」
「皆さん……ありがとうございます」
「……やっと言ったかと思えば、まだまだ初心いのう……」
「良いじゃねぇか、後は当人たち次第だろ?」
「おおバノン、ようやく戻って来たか」
「彼らが幸せそうで何よりだよ」
「バロムも一緒か」
「私だけではない、彼等も一緒だよ」
バロムの背後から、国王ラグナと王妃ライラック、そしてガーベラとウィズが歩いて来た。
「物凄い声が聞こえたから何事かと思ったが、これは……」
「ふふ、オリーブったら幸せそう……両想いになれたみたいで良かったわ」
「そうですね母上」
「お姉ちゃん、おめでとうー♪」
私とオリーブへのお祝いは、数十分に渡り繰り広げられた――
――そして、ようやくお祝い騒ぎは収束し、私とミミズさんは国王ラグナと会話を始めた。
「待たせてすまなかった、表彰も終わり、国の復興も進む今こそ、貴方達に伝えよう……この国に代々受け継がれて来た、一族の想いを」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます